第21話 僕とギルドからの依頼とお婆さんの覚醒

「良い所に来たわねミノル君!君に至急のお願いがあるの!」


そう言って慌てたように喋り始めたヤマブキさん。僕達は、ヤマブキさんから放たれる言葉の洪水に流されて溺れるところだったよ。まだハントの紹介もしてないのに・・・。


それで、ヤマブキさんの至急のお願いっていうのを要約すると。


ヤマブキさんの前に農業ギルドの代表をしてた人がやってる八百屋がピンチ!!


農業ギルドから野菜を納品してたけど、種類も量も少なくて経営していけない!


八百屋のお婆さんがそろそろ引退かねぇなんてヤマブキさんに愚痴ったもんだからさぁ大変!恩人で在るお婆さんの八百屋を助けたいから野菜を複数急いで納品して欲しい!!


って事みたい。いや、それって無理じゃない?


「だって僕の畑全然広がってませんよ?」


チュー太とウー太に手伝って貰ってコツコツ広げてきた畑だけど、まだテニスコートの半分くらいしかないもん。一畝いっせって言うんだっけ?


「それなら大丈夫よ!これが在るわ!」


ババーン!!なんて効果音が聞こえてきそうな勢いでヤマブキさんが取り出したのは、袋の表面にEX!!って書いてある肥料の袋だった。


「えっと。これは?」


「薬師ギルドと錬金術ギルドにお願いして作って貰った特製肥料。その名もぐんぐんのび~るEXよ!これがあれば大抵の作物は1日かからずに収穫できるわ!」


「それって土が死にません?」


「そんな強力な肥料、デメリットも無く使えるとは思えない。危険。」


「ぶんも。」


「あら?あなたは?」


「私はハント。ミノルの護衛。」


「傭兵ギルドからの護衛ね。これからミノル君の事よろしくお願いするわ!」


僕たち全員が肥料にツッコミを入れた所でやっとヤマブキさんがハントに気がついたみたい。しっかり紹介しようと思ったけど軽く自己紹介する程度で終わっちゃったけど。


「そんな事より!この肥料を使うなら大丈夫なのよ。土の栄養素もしっかりと補って土地がしぬ事が無いように作ってるの。農業ギルドの職員なんだからそこに思い至らない訳無いじゃない。」


「うーん。でも促成栽培すると味が落ちたりしますよ?」


リアルと違って収穫まで早いけど、通常の成長速度でそれだから味に変化は無いんだよね。でも、無理矢理早く成長させるってなったら形が変わったり味が落ちると思うんだよね。リアルでもそうだし。


「味と形は気にしなくていいのよ!それより種類を揃えるのが先なの!という訳で今回はギルドクエストとして発行するからすぐに作ってきて!!」


ギルドクエストを受注しました。


『八百屋を救え!』


成功条件 10種類の野菜を納品する。


期間 3日


成功報酬 ぐんぐんのび~るEX×10


久しぶりにクエスト画面を見た気がする。ってこれって強制受注なの!?しかも報酬があの促成栽培用の肥料だけだよ。使い道、在るのかなぁ?


「どうなっても知りませんからね?それじゃいってきまーす。」


「出来た作物は収穫ボックスに入れておいてね。私が取りに行くから!!」


という事で帰ってきました僕の農園!そろそろ名前つけた方が良いかな?


「おー。ここがミノル農園。ほとんど雑木林。」


「まだまだ開墾できてないんだよねぇ。人手だ欲しい・・・。ん?ミノル農園?それってここの事?」


「ん?ミノルの農園だからミノル農園。皆そう言ってる。」


なんと僕の農園の名前が勝手につけられてたみたい。まぁ良いか。解りやすいもんねミノル農園。今度入口の所に看板建てとこ。


「さぁまずは残ってる野菜の収穫をしよう!今植えてたのはダヅとカプだったね。」


「ちゅっ!」


「むっ鼠。畑の敵。」


「ぢゅっ!?」


「わー!待って待って!この子は違うから!チュー太は僕の友達だから!」


チュー太を見た瞬間に背中の槍を構えて戦闘体制になるからビックリしたよ。


「こっちはチュー太で僕の友達。収穫とか種植の手伝いをしてくれてるんだ。チュー太。この人はハント。僕の新しい護衛だよ。」


「ん。よろしく。」


「ちゅっ!」


「それでねチュー太。ヤマブキさんからの依頼で野菜を沢山作らなきゃいけなくなったんだ。だから色々手伝って。」


「ちゅちゅっ!」


「あっ!残ってたダヅとカプを収穫してくれたんだ。ありがとうチュー太!」


「ちゅ〜。」


畑に残してたダヅとカプが籠に入れられて畑の横に置かれてた。畑を整備したら次の作物が育てられるね。


「もう2種類在る。他の野菜はどうする?」


「まずはきゅうりに似たキュイリとトマトそっくりなマトマかな。あと大根とまったく同じコンダイも一緒に植えよう。」


「その後は?」


「白菜そっくりなハクナに、ほうれん草に似たホウレンでしょ。葉野菜で揃えたいから四角いキャベツのキャボツ。あとはカツオ菜に似たウオナと野沢菜に近いノワナかな。これで今何種類?」


「ぶもっ」


「これでちょうど10種類なんだね。」


「どうしてその作物を選んだか気になる。」


「収穫が早い順かな?」


肥料で促成栽培できるにしても、やっぱり影響期間は少ないほうが良いと思うんだ。だからなるべく早く成長するやつを選んだつもり。


「という訳で早速畑の整備からやっていこう!」


「おー。」


「ちゅー!」


「ぶもー!」


残ったダヅの苗を引き抜いて。土を掘り返して落ちた葉っぱとかを混ぜ込んで、そのこに肥料を追加して混ぜ混ぜ。畝を作って、次は種を植える穴を開けないと。


「任せて。<千枚通し>」ズボボボボボボ


「槍で穴を開けるところなんて初めて見たよ・・・。それじゃチュー太。種植よっか。ウー太は水運んできてー。」


種を植えたら土を被せて水を掛けてっと。


「さて、肥料の効果はどれくらい・・・。はっ?」


「さすがEX。速度が違う。」


「ちゅっ!?」


「ぶもっ!?」


これは速度が違うってレベルの話じゃないよ!今種を植えたばかりなのにもう実をつけてるんだから!まるでタイムプラス動画で成長速度を早回しに見た気分だよ!!


「あー、でもやっぱり形が悪いね。」


「もぐもぐ。味は普通。」


「ぶがっ!」


「ぢゅっ!」


促成栽培したから、キュイリは曲がっちゃってるしマトマは大きさが不揃いだね。コンダイは葉っぱの方が大きくなっちゃってるよ。


「次に期待。」


「そうだね。ヤマブキさんも味と見た目は気にしないって言ってたし。収穫して次だ!」


ハントが手伝ってくれたから収穫も早く終わって次に作物を植える。これもあっという間に成長しちゃったよ。


「うーん。ハクナとキャボツは葉が開いちゃってるよ。全然まとまってくれなかったね。」


「ホウレン、ウオナ、ノワナは茂りすぎ。ちょっと硬い?」


「ぶへっ。」


「ぢゅへっ。」


さっきからチュー太とウー太は少しづつ野菜を味見して吐き出してる。そんなにまずい?


「ぶもぶもっ!ぶもっ!」


「ちゅちゅっ!ちゅっ!」


「?なんて言ってる?」


「普段食べてる奴に比べたらゴミだって。」


「それは気になる。」


「さっきのカプ食べてみる?」


「食べる。」


「じゃあ先に出来た奴を収穫ボックスに入れちゃおっか。」


一応野菜の種類は揃ったからね。これでクエストクリアになるかな?


ギルドクエストクリア!


『八百屋を救え!』をクリアしました。報酬はギルドで受け取れます。


うん、しっかりクリアになったね。でもこれ、もっと畑が大きかったらちゃんと育てて納品出来たんだよね。せっかく食べてもらうんだったら美味しいものを食べてもらいたいなぁ。


「ミノル。カプは?」


「あっごめん。すぐに準備するね。」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る