第34話 僕と囮役と冒険者ギルドマスター

囮なんてやりたくない!!


僕は猛烈に抗議したよ!だって守ってくれるって話なのに逆にウェアタイガーを呼び込む餌にしようとしてるんだもん。そしたらさ。


「んなもん、傭兵ギルドのメンバー総出で守ってやるに決まってだろうが。つまり絶対安全!これで決まりだな。ガハハハ!」


バルトさんが高笑いしながらこんな事を言って全く聞く耳を持ってくれません。どうしてこうなった。ぐすん。


「ミノルを囮にするとしても問題が在る。冒険者ギルドにどう説明する?」


「ん?そりゃ普通に説明すれば良いんじゃねぇか?」


「傭兵ギルドが重要人物を護衛している情報は流れてる。そして護衛が必要な人物がグランドリーフの栽培に成功した人物で在るという事も調べたらすぐに解る。ついでに言えば私は、護衛している人物がウェアタイガーに攫われたと冒険者に話してしまっている。」


「うーん。そりゃ大丈夫じゃねぇか?拐われた奴は別に居て、そいつから聞いた情報を元に、ウェアタイガーが興味を持つ物を用意したとかにすればよ。」


「ミノルを危険に晒す危険性も考慮しないと行けない。」


「んー。じゃあどうするよ?」


「この農園に誘き寄せる。農園の結界はミノルが掌握しているから、ウェアタイガーが強くても農園には入れない。それにウェアタイガーの目的が甘芋だと冒険者に教えれば、ミノルが狙いだとはバレない。」


確かにウェアタイガーは最初甘芋を狙って来てたもんね。なぜか途中で僕を連れ去ったけど。


「ふむ?それでその肝心の甘芋は在るのか?」


「沢山収穫して出荷出来ない物は倉庫に入れてる。相手の目標物に偽装するには丁度いい筈。」


確かに出来た分全部は納品してないんだよね。ちょっと小さいのとか、虫食いになってるやつとかは流石に納品できないから倉庫に入れてる。蔓の肥料化が終わったら肥料にするつもりだったんだ。


「でもよ?ここに冒険者を呼び込んじまったら結局グランドリーフの栽培者がミノルだって事がバレないか?ここには現物が生えてる訳だしよ。」


「入れなければ良い。幸い畑は木々に遮られて外からは見えない。結界の範囲もミノルが買った範囲に設定されているから、林の外まで伸びてる。」


そうなんだよねぇ。僕の農園って周りをぐるっと木に囲まれてるんだよね。ほら、元々森に飲まれかかった場所だったでしょ?


その中の僅かなスペースに家と畑が在るからちょっと奥に入らないと見えないんだよね。入口にある木のアーチとミノル農園っていう看板がなかったら魔の森の一部だって思われると思うよ。


「冒険者は農園に入れずに外を守らせるわけか。」


「これなら行ける筈。」


「農園の結界でミノルは守れる。ウェアタイガーの狙いはミノルじゃなく甘芋だと偽装できる。農園の中に在るグランドリーフは見せず、命の酒の原料を作ってる奴も隠蔽できるか。うっし、それじゃレトの奴に話を持ってくか。作戦実行はどうする?」


「私とミノルは明日向こうに一旦帰る。戻ってくるのは20日後になると思う。」


「なげぇな。まぁ2人は旅人だから仕方ねぇか。それまでに準備は万端にしといてやるよ。」


「準備は良いけどその間にウェアタイガーがここに来ちゃう可能性は無いの?」


「そんときゃ冒険者の連中が勝手に討伐するだろうよ。」


冒険者の人達はやる気に満ち溢れてるみたいだし、街の近くに来たら流石に解るかな?


「ミノル君居るぅ?」


「あれ?ヤマブキさん?」


玄関からヤマブキさんが呼ぶ声が聞こえた。一体どうしたんだろう?甘芋の納品は終わってるのに。


「ちょっと出てきますね。」


「おっと、長い事邪魔しちまったな。俺ももう帰るわ。」


「見送る。」


「じゃあ3人で行きましょうか。」


僕達が連れ立って玄関に行くと、ヤマブキさんと一緒に見慣れない人が居た。


腰にナイフを2本ぶら下げて、背中には凄く大きな弓を背負ってる女の人。真っ赤な髪に青い瞳をして動きやすそうな服を来た人だった。


えっ?肝心の部分のサイズはどうなんだって?小山?


そんな見慣れない人が僕と一緒に降りてきたバルトさんに厳しい視線を向けてる。


バルトさんはバルトさんで何でここに居るんだって顔をしてるね。


「何でお前がここに居るんだレト。」


「それはこっちのセリフだバルト。なぜ貴様がここに居る。」


あっ、この人が冒険者ギルドマスターのレトさんなんだ。確かに強そうだもんね。


「あれ?連れてきたら不味かった?レトにミノル君が拐われた話をしたら、詳しく聞きたいからって言われて連れて来たんだけど?」


「かぁー。これは俺のミスだな。ヤマブキに根回しする前にこっちに来ちまった。」


「ギルド長はたまに抜けてる。」


えっと。つまり今までの話は全部無駄になっちゃったって事で良いのかな?


「まぁいい。貴様の事は後回しだ。お前がミノルだな?」


「あっはい。僕がミノルです。えっと、レトさんで良いんですよね?」


「あぁ。私が冒険者ギルドマスターのレトだ。今日はウェアタイガーに連れ去られた時の話を聞きに来た。こいつらからの情報だけでは信用できないのでな。」


そう行ってバルトさんを睨むレトさん。うーん、完全に敵対視されちゃってますね。


「えっと。僕が連れ去られた時の状況は多分傭兵ギルドの報告と変わらないと思いますよ?」


「ウェアタイガーは甘芋を狙っていた。その匂いが強く着いていた君が、ウェタイガーに連れ去られただったか?」


「ですです。」


「連れ去られた後は穴の中に囚われ、ずっと舐められていた。時折果物を盗み食いして食いつなぎ、手持ちの肥料を使い果物の種を植えて脱出をした?」


「あれは大変でしたねぇ。きちんと育つか賭けでしたし。」


「ふむ。確かに情報に間違いは無いようだな。」


納得してくれたかな?だってこれ以上に言う事何て無いんだもん。


「少し失礼。」


「うわっ!えっ?ちょっ!?どうして!?」


レトさんが失礼といいながら突然僕に近づいて体の匂いを嗅ぎ出した。急な事だったからビックリして固まっちゃったよ。


「ふむ。土と緑の匂い。その奥に香るこの匂いは・・・・。グランドリーフの蜜の匂いか。」


あー。グランドリーフの地下茎と葉っぱを分ける時に体に着いちゃったかな?甘い匂いなんだけど、花の蜜みたいな匂いがするんだよね。結構な数を収穫してるから、染み付いちゃってるのかも?


はっ!もしかしてウェアタイガーがペロペロ舐めてたのはその匂いの所為!?


「君が命の酒の原料を作っている人物だったんだな。」


えっ?あっ!そうか!グランドリーフは最近採取出来てないって話だから、蜜の匂いがしてたら栽培してる人って事になるんだ!バレちゃったよどうしよう?


「おっとそこまでだ。もう状況は解ったんだろ?さっさと帰るこったな。」


「何を偉そうに。貴様らが守りきれなかったから誘拐される等という無様を晒すのだ。どうだミノル。無能な傭兵との契約は切って、私達冒険者に護衛を任せないか?」


バレた途端に護衛の勧誘が来たぁ!この人駆け引きとかせずに直球で来るなぁ。冒険者だからまどろっこしいのは嫌いなのかな?なら僕の気持ちも真っ直ぐに伝えよう。


「えっと、僕は2人にお世話になってるので、護衛を変えるとかは今は考えて無いです。」


「そうか。気が変わったらギルドに来ると良い。すぐに腕のいい冒険者を派遣しよう。傭兵や騎士より役に立つことは保証しよう。」


「けっ!そんな事行って肝心のウェアタイガーには逃げられちまってんじゃねぇかよ。冒険者の名が泣くぜ?」


「あれは旅人連中が先走った所為だ。まったく、大物狩りは作戦と罠、仲間の協力が必要だと言っておいたんだがな。奴ら全く言うことを聞かん。冒険者は自由が売りだろう等と言ってな。」


この人もギルド長だけあって苦労してるんだなぁ。すっごく疲れた顔をしてるよ。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


ここまで長くやる話や無かったんや!けどいつの間にかダラダラ続いちゃってる。そしてもう少しだけ続くんじゃよ・・・。


プロットなんてどっかいってしもうた。あはは_| ̄|○

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