第31話 僕と街の現状と変わり果てた農園
「ぶもーーーーーーーっ!!」
「ミノル君!!」
ハーメルンの広場に帰ってきた僕はウー太とセイカさんにもみくちゃにされた。
ウー太は凄い勢いで突っ込んでくるし、セイカさんは抱きついて来て酸欠でダメージを受けるし大変だったよ・・・・。
で、とりあえず僕が捕まってた洞窟の情報とウェアタイガーについて気が付いた事を冒険者ギルドに報告しようって事になった。
「み、みのりゅぐーーーーん!!」
うん。まぁギルドに行ったらヤマブキさんも居るよね?ヤマブキさんにも泣かれちゃいました。
「唯一のギルド員が居なくなったら農業ギルドはどうなるの!!」
なんて言いながらね。僕だって好きで誘拐されたわけじゃないんだけど、わんわん泣くから謝ることしか出来なかったよ。
「ぐすん。でも無事で良かったわ。」
「ハントが助けに来てくれて助かったんです。」
「元々は私が守りきれなかったのが原因。気にしないで。」
気にしないでって言うけど、僕あの穴から脱出した後の事何も考えてなかったから本当に助かったんだよ?
「元々は私がミノル君に配達を頼んだのが間違いだったのよ。ミノル君が居ない間薬師ギルドからグランドリーフの納品はまだかってせっつかれるし。気付けに使う命の酒を作りたいからグランドリーフの根っこはまだかってバッカスさんに詰められるし。師匠からも保存食をもっと作りたいから野菜全部出せなんて言われたのよ?」
そりゃ大変だ!グランドリーフは多分チュー太が収穫してくれてるだろうけど、野菜は何も出来てないよ!?
「急いで冒険者ギルドに情報を渡して農園に帰らなきゃ!」
「あー。今は冒険者ギルドに近寄らないほうが良いわよ?」
「それはどうしてなの?」
「何でもウェアタイガーを独占しようとした奴が居るから、他のギルドとは協力しないって言ってるみたい。」
「それ私。ミノルを救出する時に冒険者と揉めた。その後ギルド長が出てきて対応した筈。」
「内容は私も聞いてるわ。ミノル君を助けるために単独で追跡したんでしょ?私もそれで正解だと思うんだけど、魔物退治を得意としてる冒険者としては納得してなかったみたい。今もバルトとレトが話し合いをしてるわ。」
レトって人は冒険者ギルドのマスターさんだって。僕まだあった事無かったよね?
「そんな事で揉めてたら、領主様から出ているクエストがクリアできないんじゃないかしら?」
「セイカの言う通りなのよねぇ。でもギルド全体で討伐の協力を申し出ても聞き入れないのよ。まぁ、住人の冒険者の人は比較的話を聞いてくれるのだけど。」
うーん。それって完全に自分たちで独占しようとしてるよね?人に独占するなって言っときながら自分たちがやってるんだ。
「ハントどうする?ウェアタイガーの現在地の情報渡す?」
「んー。ん。ギルド長に渡して判断してもらう。ちょっと行ってくる。」
「はーい。あっ!そうだヤマブキさん。ぐんぐんノビールEXって在庫在ります?野菜が足りないならアレを使って沢山作りたいんですけど。」
「ごめんなさい。アレはこの前渡したので全部なの。だからミノル君は出来るだけ成長の早い作物を作ってくれる?」
「はい分かりました。でも収穫するまで3日くらい掛かりますよ?」
「備蓄を師匠が保存食にしてくれたからそれくらい大丈夫よ。でも倉庫が空っぽだから急いでね?」
「はい!分かりました!」
お留守番してるチュー太の事も心配だし、急いで帰らないと!
「おばあちゃんったら昔の血が騒いでテンション上がっちゃってるのね。保存食ばっかり作ってもしょうがないって言うのに。ごめんねミノルくん。ちょっとお店が心配だから私はこのまま帰るわね」
「あっセイカさんもありがとうございました。」
「私は何もしてないわ。それじゃ。」
ヤマブキさんは八百屋の方に駆けていった。さて、僕達も戻ろうか。
「あっ!荷車!納品先に置いてきたまんまだ!」
「今頃誰かに盗まれてるわねぇ。諦めなさい。」
「ぶもっ!?ぶもぉ・・・・。」
荷車が無くなってウー太もがっかりしてる。僕も同じ気持ちだよ。これから納品どうしよう?
「この騒ぎが終わったら新しく作って貰えるわ。それまで我慢ね。そうだ!荷車程じゃないけど荷物が入れられる籠なら在るわよ。馬に括り付けれる奴だからウー太君にも着けられるわよ。」
「それ下さい!」
「ぶもっ!」
「じゃあ付け方を教えるわね。」
ウー太の体からぶら下がる2つの大きな籠。荷車程じゃないけど、結構中に物が入りそうだしこれなら納品の安心だね。
「おまたせ。報告してきた。」
「お帰りハント。バルトさんはなんて?」
「一部の信用できる冒険者で先行偵察する。討伐は人数を揃えてから。」
「そうなんだ。じゃあ僕達の出番はもう無いね。」
「ん。大丈夫。」
「それじゃヤマブキさん。僕達農園に帰ります。」
「気を付けて帰りなさい。又攫われるかもよ?」
「今度は油断しない。大丈夫。」
「ぶもっ!」
ハーメルンの目前で僕が攫われたのがよっぽど悔しかったのか、ハントとウー太が凄いやる気だ。これなら、ウェアタイガーがもう一度襲って来ても大丈夫そう。
「2人が居るから大丈夫ですよ。それじゃ!」
「野菜の納品早目にねぇ!」
ヤマブキさんに見送られて農園に向かう僕達。道中それはもう警戒しまくった。
背の高い草むらには近づかないようにしながら、ハントが槍を振り回して草むら自体を消し去ったり。
少しでも何かが動いたらハントが僕の側にくっついてウー太が動いた何かに向けて全力で突進をしたり。(動いた正体はウサギだった。)
いつもの倍位の時間を使って、やっと農園に帰ってくることが出来たんだ。
そこで僕はすごい光景を見る事になった。
「ど、どうしてこんな事になってるのぉー!?」
「ちゅっ?ちゅーーっ!!」
僕の叫び声に反応してチュー太が茂った草の間から飛び出して来た。
うん。僕の眼の前には、畑一面を覆う緑の海が広がってたんだ。
「ちゅちゅっ!ちゅーちゅーちゅっ!ちゅちゅっ!!」
「えー。それだけでこうなるぅ?」
チュー太の説明によると。僕達が甘芋の納品の為に出掛けた後、抜いた後の蔓を一纏めにして捨てようとしたんだって。
収穫の終わった蔓はぐんぐんノビールEXの成長促進効果で枯れてたから、僕達もチュー太に後始末を任せて出掛けたんだよね。
でも、一部の蔓が生き残ってたみたい。しかも、肥料にしようとした枯れた蔓と生き残りの蔓にぐんぐんノビールEXの効果が少しだけ残ってた。
残ってた薬品を取り込んだ生き残りの蔓はどんどん畑に広がって、チュー太が気が付いた頃にはまるで森のように畑に広がったんだそう。
僕達が早く返ってくるのを祈りながら、とりあえずこれ以上広がらないようにずっと間引きと収穫をしてくれてたんだってさ。
「ごめんねチュー太。そんな大変な事を任せきりにしちゃって。」
「ぢゅっ!」
「そう怒らないでよ。僕の方も大変だったんだから。」
「ミノルは誘拐されてた。帰りたくても帰れなかった。」
「ぶもっ。」
「ちゅっ!?ちゅちゅちゅっ!?」
「あはは、くすぐったいよチュー太。僕は大丈夫だから。それよりこの森を早く何とかしちゃおう。ヤマブキさんからも作物が早く欲しいって言われてたし丁度良かったよ。」
これで甘芋だけは大量に納品出来るからね。チュー太が収穫してくれた分も在るし、かなりの量が出来てるんじゃないかな?
「とういわけで帰ってきてそうそうだけど収穫だぁ!」
「ちゅーっ!」
「ぶもーっ!」
「おーっ!」
今度は勝手に蔓が伸びないようにしないとね。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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