第30話 僕と残ってたファンタジー肥料と脱出

僕がウェアタイガーに捕まって4日経ちました。一回ログアウト挟んじゃったよ。


うん。それでね?何でかずっと囚われたままなの。もう体から甘芋や果物の匂いがしない筈なのにずっと抱えられてペロペロ舐められるの!


もう本当に何でか解らないよ。ずっとだよ?もうずーーーっとペロペロされるの。いくら嫌がってもあのおっきな腕で抱え込まれてぺろぺろぺろぺろ。僕はマタタビか!ってくらいに。抱え込まれたら頭がお胸が当たるから別の意味でも困っちゃうよ。


自由に動けるのはウェアタイガーが果物とか木の実を探しに行ってる時だけ。その頃には全身ベタベタになってるから、うへぇってなるよ。


僕もこの4日間何もしてなかった訳じゃないんだよ?体中涎でベタベタになりながら脱出する方法を試してたんだ。


壁を登ってみたり、拾える石や果物を積み重ねて台にしようとしたりね。


どっちも失敗したけど!もともと落とし穴みたいな場所だから出入り口の穴はネズミ返しみたいになってて登れません!石と果物を積み上げても僕の身長が低すぎてどっちにしろ届きません!


絶望だよねぇ。何やっても脱出出来ないんだもん。唯一の救いはウェアタイガーが僕をペロペロするだけで食べようとしないことかな?死んじゃってもリスポーンここだからどっちにしろ逃げられなんだけども。


ここまで脱出の為に色々やってきた僕だけれども。もう1つ脱出の為に準備しているものが在るのです。


それはと言うとぉ〜。じゃんっ!日の指す場所に畑を作って果物の種を植えてみました!


うん。ヤケクソです。だってどうやったってウェアタイガーには勝てないし。助けを待つだけっていうのも暇だし。1人でじっとしてると不安に押しつぶされそうだったし?


だから暇つぶしにちっちゃい畑を作ってそこに種を植えてみました。種はどうしたんだって?ウェアタイガーが食べた果物から貰いました。


プッ!って吐き出して捨ててたんだもん。そこら辺に転がってるし拾いたい放題だったよ?


それでね。壁から流れる水を撒いて雑草を処理してたらやっと今日。小さな若葉が出てきてくれたんだよ。


もう可愛くて可愛くて。一生懸命成長しようと伸びるその姿と、お日様を浴びて水滴を浮かべる姿がキラキラ光ってて綺麗で感動までしちゃってね?


僕もこのままじゃ駄目だ!と思って何か無いか手持ちを再確認してみたんだよ。そうしたら在りました。


ぐんぐんノビールEX


そう。作物を急激に成長させる栄養剤。全部使ったと思ってたんだけど。半分だけ残ってたみたい。表示もぐんぐんノビールEXじゃなくてぐんぐんノビールEX(ハーフ)ってなってたんだ。別アイテム扱いだったのかな?だからインベントリの中に入りっぱなしになってたって訳。


そりゃ使っちゃうよね?ウェアタイガーが居ない時を狙って撒いちゃうよね?


だからやっちゃいました。若葉の周りに散布しましたよ。でも不思議な事に野菜と違って全然伸びなかったんだ。野菜の時はすぐに成長してくれたのに。


でも僕に出来るのは後は水を撒くだけだからさ。壁から流れ出る水を手で掬って来ようとしたんだ。


それで振り返った時に、急に背中の中にゾワゾワとした何かが入り込んできて、思わず「ひゃあああー!」って叫び声を上げちゃったよ。


僕ウェアタイガーが戻ってきて背中を舐めてると思ったんだ。でも違った。背中に入った何かは動かなかったんだもん。ウェアタイガーだったらずっとペロペロしてくるから別の何かだと確信したんだ。


僕は恐る恐るそれを掴んで見たんだよね。浮かんで見たらなんかワサワサしてて、とっても手慣れた感触だった。


それで後ろを振り返ったら。僕の背中に若木の天辺が入り込んでたんだ。


何で?って思ったよね。さっきまで木は無かったよね?って。それで木の根元を見てみたら、さっきぐんぐんノビールEXを撒いた若葉の在ったところから伸びてるのに気が付いた。


あぁ、効果が遅れて出てきたんだ。でもどうして僕の背中に?


って考えてる間に、若木はボフンッ!って音をだして突然大きくなったんだよね。


で、その大きくなった反動が僕を引っ掛けてる枝にまで伝わって、そのまま僕は穴の外まで放り出されちゃった。


突然逆バンジーされたらそりゃ叫んじゃうよねぇ。


「ひああああああ。怖いぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


バイィィィィィィン。


って音が聞こえそうなくらいしなった枝から放り出された僕は、一瞬にして森の木々よりも高い場所に飛ばされたんだ。


完全に落ちたら死んじゃう高さ。でも僕にはもう何も出来なくて、叫ぶしか無かったよね。


「誰か助けてぇ〜!」って。


そうしたらさ。木の間から人の影が飛び出してきて僕を捕まえてくれたんだ。


「ミノル。無事?」


「は、は、は、はんとぉ〜。怖かったよぉ〜。」


ゲームとは言っても現実と変わらないから、高いところから落ちる恐怖で僕は暫くハントに抱きついて泣いちゃった。


「ぐすっ。ぐすん。」


「落ち着いた?」


「うん。ありがとう。」


人に抱きついて泣いちゃうなんて恥ずかしい。多分今僕顔真っ赤になってるよ。でもしょうがないよね?紐なし逆バンジーをして助かったら誰だってこうなるよ。うん。


「そういえばハントはどうしてこんな所に?」


「助けに来た。無事で良かった。」


ハントはそう言いながら僕の体を隅々まで調べてる。ちょっとくすぐったい。怪我とかはしてないから大丈夫だよ。


「助けに来てくれてありがとう。でも1人で?」


「こっそり助けるなら1人のほうが良い。大勢で来ても足手まとい。」


うーん。それはハントが強いからかな?


「大勢で来て、警戒されてミノルが又連れ去られる方が厄介。」


「そっか。」


「それよりもここを早く離れる。ウェアタイガーは?」


「そうだった!?今は食べ物を探しに行ってるけど、日暮れ前には戻ってきちゃうよ!?」


「ミノル。捕虜状態はどうなってる?」


「あっ!そうだった!」


えっと、⚠マークが消えてる!もう捕虜状態じゃないみたい!


「ん。なら帰れる。」


「どうやって?」


「これを使う。」


そう行ってハントが取り出したのはシャボン玉を膨らませる輪っかだった。バブルスティックって言うんだっけ?それでどうするの?


「これは帰還の泡。使い捨ての拠点移動アイテム。」


「そんなの在るの!?」


「1個で50万マネ。」


「高い!!」


でも背に腹は代えられないよね?どうせ後で請求される訳だし・・・。はぁ、野菜作り頑張ろう。


「それじゃ、帰還する。」フゥー。


ハントが僕に向けてバブルスティックを吹くと、輪っかの所から虹色のシャボン玉が出てきて僕の体を包みこんだ。


シャボン玉はその状態のままちょっと地面から浮かんでふわふわしてる。


ハントの方もいつの間にかシャボン玉に包まれてた。ここからどうしたら良いのかな?


「グルガァァァァァァァァァァ!」


ふわふわと地面から浮いたままの僕らの耳に、ウェアタイガーの雄叫びが聞こえてきた。


「えっ!?どうして!?まだ戻って来るには早いのに!」


「ミノルの匂いに気が付いたみたい。」


「どうしようどうしよう!このままじゃ又捕まっちゃうよ!」


「ガアアアアアアアアアア!」


うわっ!もうそこまで来てる!


「大丈夫。もう時間切れ。」


パチンッ!


僕の耳にシャボン玉が割れる音が聞こえた。ふわふわ浮いてた足が地面を掴んだと思ったら、そこはもう見慣れたハーメルンの広場だった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


間に合ったかな?コロナは治りましたが後遺症に苦しんでおります。誤字脱字多いかもぉ。

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