第19話 僕と学校といじめっこ

「「いってきまーす!」」


「気をつけるのよー。」


今日は平日の月曜日。つまり学生である僕たちは学校に行かなきゃいけない日だ。


リモート授業が主流になりつつ在る昨今だけど、僕の住んでる電影市は普通に学校で行う授業を推進してる。


それはなぜかって?人との関わりを大事にしていく為なんだって。人との関わり方は人と関わらないと身につかないって考えみたい。


それとは別に人間とエレクトロンが一緒に学ぶことで、差別意識を無くそうって思惑も在るんだって。


「最近の学校はどうなの実?」


「全然変わらないよ。」


「そう・・・・。なんならお姉ちゃんがガツンと言ってあげるけど?」


「駄目だよ。それこそアク姉に頼らないと何も出来ないってバカにされちゃうし。」


「せっかく一緒の学校に行ってるんだから、なにかあったらすぐに呼びに来なさいよね。」


「うん。ありがとうアク姉。」


僕とお姉ちゃんは小中高一貫制の学校に通ってる。校舎も小中高と分かれてるけど、行き来は出来るからちょくちょくアク姉は様子を見に来てくれたりする。


まぁそれが気に食わないって子も居るみたいだけど・・・・。アク姉美人だからなぁ。


「ほら実。モノレール来たわよ。」


「あっ待ってよアク姉。」


この街には用途に合わせたモノレールが走ってる。通勤用。通学用。常用って感じ。僕たちが乗る通学用のモノレールは、学校の目の前に止まる奴だ。


お父さんたちが使ってる通勤用は、会社とかが多い場所に優先的に止まるようになってる。常用は各駅停車って感じ。


『電影学園前〜。電影学園前〜お降りの際はお忘れ物にご注意ください。今日も良い一日を〜。』


モノレールに搭載されてるAIから気の抜けた応援を送られながら、僕とアク姉は駅に降りる。


降りてすぐの正面にデンッ!とそびえ立つお白みたいに大きな場所が僕たちが通う電影学園でんえいがくえんだ。


「それじゃ気をつけるのよ?」


「はーい。」


駅から降りてすぐの校門をくぐったらアク姉とはここでお別れ。道が3つに分かれていて、正面が小学校。右側に行けば中学校。左側に行けば高校に行けるんだ。


「小学生に間違われないようにねぇ。」


「もう間違われないよ!!」


背の小さい僕は、前に一度小学生に間違われて先生に小学校に連れて行かれそうになったことが在る。だってこの学校制服が全部一緒なんだもん。


見分けるには、胸についている校章の縁の色を見るんだけど、その時僕は小学校の時の校章のまま登校しちゃったんだよね。あれは恥ずかしかった・・・・。


そんなことを思い出しながら僕は自分の教室に向かう。気は重たいけど、僕も人気ゲームを始めたんだし少しは話しが出来るはず!


「お、おはよう!」


教室に入ってまずは元気に挨拶をしてみる。すでに登校していた皆が僕の方を一瞬見てくれるけど、その後自分たちのグループの話に戻っていっちゃった。


うん。まぁいつもの事だよね。挨拶しても返されないのって。


とぼとぼと自分の席に戻ってカバンと端末を取り出す。でも今日の僕は違うんだ!リバティライフオンラインをやってるんだから!


僕はじっと教室での会話に耳を澄ませる。女子達はファッションやアイドルの話しているみたいだ。流石にそんな会話に混ざれないよね。


男子の方も運動部の人達が今度の試合のこととか、練習の事を話してる。


そんな中、待望の会話が僕の耳に届いた。


「なぁなぁ。そろそろ届いたかLLO?」


「おう!やっと届いたぜ!発売から1ヶ月は長かった・・・。」


「予約生産だから仕方ねぇよなぁ。それじゃ、約束通り一緒にやるか?始めたばっかりだからハーメルンだろ?」


「残念!ハーナまで進んでるんだなぁ。」


「おっ?だったら移動せずに合流できるな。今日一緒にやるか?」


「当たり前だ!」


来た!リバティライフオンラインは短縮してLLOとかリラなんて呼ばれてる。今日から僕もこの会話に混ざるんだ!そして仲良くなって友達になるんだ!


「あ、あの!「邪魔だ。」うえっ!?」


僕が話に混ざろうとした瞬間、教室に入ってきた人に蹴り飛ばされた。


「ぷふー!うえっ!?だってよ。」


「さすがうんち!汚物には地面がお似合いだわ!」


突然の事で何も出来ずに転がる僕を見て、蹴り飛ばした本人ともう一人が笑ってる。


そして僕に邪魔だと言い放った本人は・・・・・。


「ひ、英雄君・・・。」


「邪魔だっていうのが聞こえなかったか?退け。」


倒れた僕に向かって冷たい視線を向けてきた。


「すぐに動けるわけ無いじゃんヒデ〜。なんたってこいつは生粋の運動音痴。うんちなんだからよー。」


「ちょっと押したぐらいでこんなに無様に転けるんだぜ?そんな奴がすぐに起き上がって動き出せるわけ無いだろう?」


「「ぎゃははははははははは!!」」


「ふんっ。」


只野英雄ただのひでお君。このクラスのリーダーみたいな人で、僕に対してずっと冷たい態度を取る人。


僕を蹴り飛ばしたのが野保塑のぼうでく君で、体も大きくて声もでかい。


一緒に笑ってるのが菰野こものデス君。こっちはほっそりしてて病人みたいに頬が細いエレクトロンだ。


この3人は同じサッカー部で、特に英雄くんは部のエースなんだって。他の2人はあんまりいい話を聞かない。でも英雄君の前では大人しいって聞いた。


「普段から動いてないからそんな事で体が動かねぇんだ。情ねぇ。」


「ご、ごめん・・・。」


僕が転校してきて最初に声を掛けてくれたのは英雄君だった。最初はなにか解らないことがあったらすぐに聞いてくれなんて言ってくれてたんだ。


だけど、転校してきてすぐに行われた球技大会。そこで僕の運動音痴が発覚した。


他の皆は、誰でも苦手なことは在る。なんて励ましてくれたけど、英雄くんだけは、僕に凄く驚いた表情をしてたんだ。


その後くらいからかな?僕に冷たく当たるようになった。常に体を動かせ、運動しろってずっと言ってくるし、僕が嫌がると無理矢理筋トレをやらそうとしてきた。


いくら断っても運動を強要してくるから、僕は先生に相談したんだ。そうしたら無理を言ってくる事は無くなったけど。代わりに僕がクラスで無視されるようになった。


多分、クラスのリーダーである英雄君の言うことを拒否したから。先生に僕の事で注意される英雄君をクラスの誰かが見ちゃったから。その情報が拡散されて、僕はクラスの敵認定を受けちゃったんだと思う。


そんな僕だから。塑くんとデスくんにいじめられても誰も何も言わない。誰も、助けてくれない。


僕が体を起こした時には、すでに英雄君達は自分の席について話し始めてた。話し掛けようとしていた人達は、僕に関わりたくないのか離れた場所に移動しちゃってた。


しょんぼりと肩を落とした僕は、自分の席に戻って端末でLLOの情報を見て時間を潰すことにした。


結局、話し掛ける事も出来なかったなぁ。ぐすん・・・。


「実〜!気をつけて帰りなさいよー!」


「アクアさん気を抜いてもらっては困りますよ!追加10週!」


「はい部長!」


放課後。下校途中の僕を運動場から見つけたのか、アク姉が走りながら声を掛けてくれた。アク姉は部活はしてないんだけど、いろんな所に助っ人を頼まれたりしてる。今度の助っ人は陸上部かな?さっきの感じだと大会に出る感じかも。


僕はアク姉に手を振りながらモノレールに乗る。電影学園は別に部活に参加しなくても良いから、僕はずっと帰宅部だよ。学校にはとても居辛いから。


結局、あの後は誰にも話しかけられなかった。休み時間にもチャレンジしてみたんだけど、声を掛けようとしたら皆離れていっちゃうんだ。


もうこうなったら学校で直接会話に混ざるのは諦めよう。でも友達をつくるのは諦めない!


LLOをやってる人と仲良くなれば良いんだ!ゲーム友達。同じゲームを楽しんでいる人達となら、同じ話題で盛り上がれるし仲良くなりやすいはず!


よし!早く帰ってログインしようっと!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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