第39話 僕と緊急事態と作戦決行

ロッグイーン!僕が目覚めたのはいつものベッドの上。お金が手に入ってから買った寝具は今日も気持ち良いですなぁ。


うーんと背伸びをしながらベッドから飛び起きたら、何やら外が騒がしい?


窓の外からは人の騒ぎ超えと、戦闘音?が聞こえて来てる。


農園の近くで誰か戦ってるのかな?まぁ結界が在るから中は安全!戦闘とか怖いから、ヤマブキさんに連絡入れながら畑の様子を見てこよう。


「ちゅちゅっ!ぢゅーーーー!!」


「遅い!って怒られても困るよチュー太。そんなに慌ててどうしたの?」


今ログインしましたよーってヤマブキさんに連絡を入れながら畑に出た所で慌てたチュー太が僕に文句を言いに来た。


「ちゅちゅちゅっ!ぢゅーぢゅー!!」


「えっ!?ウェアタイガーがここにもう来ちゃってるの!?」


早すぎるよ!考えてた作戦だと、これからヤマブキさん経由でバルトさんとレトさんに連絡して、焼き芋で誘き寄せる予定だったのに!


「ぢゅぢゅぢゅっ。」


「ハントがもう戦ってくれてるんだ。」


「ちゅちゅっ。ぢゅーぢゅぢゅ!」


「戦ってるハントを見て他の冒険者が戦闘に参戦しちゃったの!?」


それでさっきから大勢の人の声が聞こえてるのかぁ。レトさんから手出し無用の指示が出てる筈だけど・・・・。


「ちゅちゅちゅっ。」


「あー。人命救助を建前に戦ってるんだ?」


ハントが襲われてるから助太刀するって大義名分を得ちゃってるだ。冒険者は人が魔物に襲われてたら助ける義務が在るって話だもんね。


「む〜。それじゃ作戦はどうなるんだろう?」


「作戦はこのまま決行する。」


「うわっ!いつの間に!」


「やっほー。来たわよミノル君。」


「近くで待機してて良かったな。」


僕の後ろにレトさん、ヤマブキさん、バルトさんがいつの間にか立ってた。ビックリしたなぁもう。


「驚いている暇は無いぞ。急ぎ現場に向かう。」


「今ってそんなに急ぐ状態なんですか?」


「あぁ。旅人の冒険者が死に戻りを利用して何度も攻撃を仕掛けている。その所為で奴は興奮状態だ。このままでは街の方で暴れかねん。」


「どうしてそんな事に?」


「ハントの奴が農園の近くに潜伏していたウェアタイガーに見つかっちまったんだ。テイムする為の準備をしにこっちに来てたのが仇になっちまった。ハントを発見した敵さんが結界を破壊して侵入しようとしたから仕方なく交戦状態に入ったんだよ。」


そういえばハントは早めにログインして色々準備しておくって言ってたっけ?


「このままではテイムも難しくなる。だから急ぐぞ。」


「待って。先に甘芋を焼かないと駄目よ?興奮状態でのテイムなんて危険すぎるわ!」


「だがこのままでは街に行ってしまうぞ。」


うーん。大丈夫じゃないかなぁ?倉庫に寝かせてある甘芋は熟成が進んでるでしょ?その分味も匂いも良くなってる筈なんだよね。


そんな甘芋で焼き芋を始めたら、いい匂いにつられて暴れるのを忘れるんじゃないかなぁ。だってあの子凄く甘党っぽかったし。


「どう思うチュー太ってあれ?チュー太?」


さっきまでそこに居たのにいつの間にか居なくなってるんだけど?


「えぇい解った!先に甘芋を焼くのを許可しよう!」


「最初からそういう作戦でしょ。という訳だからミノル君。落ち葉を集めるわよ!」


「あっはい。」


「しゃーねぇ。俺も手伝うかぁ。」


「戦ってる者がいつまでもつか解らんから急ぐぞ!」


まぁ落ち葉を集めるのはとても楽なんですけどね。だって農園の周りには木がいっぱい在るし、その下には山程落ち葉が溜まってるもん。


畑以外の場所にはまだ手が付けられてないんですよ。


「これくらいあれば大丈夫かな?」


記念品で貰った鞄が大活躍してくれた。僕が直接インベントリに収納している間に、3人が鞄にどんどん落ち葉を入れてくれるから沢山集まったよ。


「ならば急いで所定の場所に行くぞ!」


「ミノル君は絶対に結界から出ないようにね?解った?」


「解ってます。また拐われたく無いです。」


「匂いに釣られなかったらハントの奴に誘導してもらうか。」


「芋は持ったな?移動開始!」


ウェアタイガーはハーメルンと農園の間にある草原地帯で戦ってるらしい。元々その草原に誘き寄せるって話だったから、手間が省けたのかな?


僕は農園の結界ギリギリの所で焼き芋をして匂いを拡散させるのが役目。


近寄って来たら甘芋を上げて、農園で働かないか打診する予定だったんだよね。


だけど戦闘が始まっちゃってるからここからどうなるかは未知数。出たとこ勝負になっちゃった。


「ハントの奴は良いとして、戦ってる冒険者は止められるのかよ。勝手に攻撃されたら元も子もないぞ?」


「言うことを聞かないやつは黙らせる。」


「どうやって黙らせるのかしら?」


「こいつで。」


ぐっと拳を握り込むレトさん。物理的に黙らせちゃうのね。沢山人が居ると思うんだけど出来るのかな。


「まっ。お前なら出来るか。」


「そうね。レトなら可能ね。」


出来ちゃうんだ。僕その方法が気になっちゃうよ。


「ここで良いだろう。早速焼き始めてくれ。」


「はーい。」


インベントリから直接落ち葉を出して、そこにレトさんが着火してくれた。バルトさんが風を送ってくれてあっという間に燃え尽きた落ち葉に甘芋を入れて灰を被せてっと。


「うーん。早速いい匂いがしてきたぁ。」


「本当にいい匂いね。でも短期間しか寝かせていないのにまるでしっかり追熟したような香りだわ。」


もしかしてぐんぐんノビールの効果がまだ残ってたとか?もしそうだとしたら先に芽が出ちゃうか。別の理由かな?


「おう。おう。解った。お前はそのまま合流しろ。作戦が始まった事はちゃんと周りに伝えたんだろ?おう。なら良い。後はレトに任せろ。待ってるぞ。」


「奴が動いたか?」


「まっすぐこっちに向かってるとよ。ハントもこっちに合流するとさ。」


「ではこっちはこっちで動くとしよう。『付近にいる冒険者よ。ユニークに対する攻撃を中止しろ!これはギルド長命令で在る!違反者にはそれ相応の罰を与える!言うことを聞かぬ奴は私が直接処す!攻撃を中止しろ!!』」


うわっ、レトさんが突然大声で叫ぶから耳がキーンってなったよ。


「ヤマブキさん。なんでレトさんは大声で?」


「ん?今のはギルド長の権限で使える緊急連絡手段を使ったのよ。同じギルドのギルド員に対して命令を発令できるの。今回は付近にいる冒険者に対して使ったのね。」


「それで突然大声出したんですね。」


「勝手に攻撃されちゃたまらないもの。命令はしっかりと聞こえるように言わないとね。」


「おっ。めちゃくちゃ甘い匂いがしてきたな。そろそろ良いんじゃないか?」


そうこうしているうちに甘芋が焼けてきたみたい。とっても甘い匂いが周囲に漂ってきてる。


「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」


「やっこさんも登場したみたいだぜ。」


ウェアタイガーが凄い勢いでこちらに走ってきてるのが見えた。でもその目は真っ赤に充血してるし、口からはよだれがぼたぼた落ちてる。


「めちゃくちゃ怖い!!これ一体どうやって甘芋を渡せば良いんですか!」


「このまま突撃してくるなら結界が受け止めてくれるわ。1度の突進くらいは受け止めるわよ。多分。」


「多分じゃ駄目ですよね!?」


「ほら来るぞ。」


ドシーーーン!!


突き進んでいたウェアタイガーが結界に阻まれて尻もちを付いて倒れた。突然の事でちょっと呆けた顔をしてる。


「今よ。」


「ほーら。美味しい甘芋だよー。」


意を決して甘芋をウェアタイガーの前に投げる。これで落ち着いて欲しい。さっきの顔は本当に怖かったから頼むよ!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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