第31話 26歳の誕生日
無事にエッチなことはせずに誕生日は終わり、十月に入った。
見事、二十六歳。無職女の完成だ。
前夜は本当にひどかった。
「杏、こっち向いて。可愛いよ、寝顔より素敵」
「プレゼントのパジャマ着て見せてよ。あ、二階で見せてもらえる?」
「ケーキ食べる杏、すごく尊い。私にもあーんして」
「二人っきりの旅行でもしてくれなかったから、私たまっているんですよー。分かってますかー」
あまりにもいたたまれない状況に弟がゆうのジュースにアルコールを混ぜた。
「えへへー。杏、大好き。今から一緒にたくさんしようね」
生んだのは理性が外れたゆうの恥ずかしい寝言。
「杏。この子、高校生よ」
「お母さん、本当に何もしてないの。あの男の話、したでしょ」
「女の子なら安心って」
「本当に無いから、手は繋いだけどキスとかそういうのはしていないの。本当、本当なの」
「にしてもこれはもうしているとしか思えないでしょう」
お母さんの言葉に気まずそうに目をそらすお父さん。
「本当に違うの。何もないから、絶対に無いから」
「ヤンデレ子はそういうエッチな事をしないから大丈夫だ」
弟を初めて尊敬した。やはりゲームでの経験者は違うよな。
「寝ている女に色々しているパターンは多いけどな」
様々なゆうのそばで寝ている過去がよみがえった。
「寝ている間はっていうのは」
「えへへ、今度は惚れ薬入れちゃうぞー」
「本当に寝ているの? その子」
ぱしりと叩いた。
「えっち」
「半覚醒だな。もうここまで酔わせたら悪さはしないだろう。姉貴、運ぶぞ」
「お父さんお願い」
「自分の女だろう。自分で持って上がれ」
「女じゃないわよ!」
「俺が手伝おうか?」
「私の死が近づくなら持ってくれても?」
「遠慮します」
重くはないのだが、階段が急なので神経は使う。ゆう専用お布団を出している間に寒かろうと思って私のベッドに乗せた。
「ふへへ、いいにおーい」
布団を敷き終わると腰を痛めた。まぁ、せっかく姫が買ってきたパジャマだ。着てみるか。腰痛い。
可愛いのだが、26歳女性が着るには少々可愛い過ぎる。これは外では着ることが出来ない。パジャマだから、旅行に行くときは着てくださいっていうだろうな。
持っていかなかったらいいところ「私のこと嫌いになった?」か、悪いところ「他に好きな女の子が出来たの? いっそこの場で」
「えへへ、杏のにおいぃ」
アホがよだれを垂らしながら寝ている。本当に寝ているのか怪しい。首をくすぐってみるか。ちょっと触るだけだ。コショコショー。
「んっ」
違う。首を少し触っただけだ。エッチなことはしていない。
まだ許されるまだ許容範囲だ。ここで目を覚ましたらまずい。「杏、私にそういうことしたいんだ。今からしようよ」と、お酒を飲ませた未成年から言われてしまう。弟は罪をかぶってくれないだろうな。
酒を飲ませたのも部屋に連れ込んだのも首筋を触って色っぽい声を出させたのも私。
「もっと触ってくれないの?」
半分目が開いていた。まだだ、まだ挽回のチャンスはある。考えろ、頭を動かせ。
「今はこれくらいよ」
そう言って頭を撫ぜた。えへへ、と言ってゆうは眠りに落ちた。教訓、寝ているからといって触らない。
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