第37話 頑張ればいいもんじゃないよ
「でかい」
東京駅午後十三時。
「私は面倒ですが、入学式に出ないといけないので、先に家に入ってください。東京ってバカみたいに家賃高いので、郊外ですが働けるようになったら」
と、つらつらと言葉を並べた末。
「今日はシましょうね。いい入浴剤買いましょ。シャンプーもコンディショナーも一緒ですね。そのつもりで帰りますね」
止めろ。そういうつもりじゃ、待てよ。ゆうについてきた時点でこれは既定路線。しまったやめておけばよかった。
もう大学生だし、好き放題されてしまう。ま、まぁそんな乱暴な。ふとよみがえるあのゆうのフレーズ。
「性欲を抑制していて…」
そうか抑制しておるのはあの子かもしれぬ。今日辺り爆発する。
話をそらせた方が良さそうだ。料理を作ってやるか。
この傷を見せるのか。そうか、そうなのか。そういう機会が前より増えるんだ。
旅行の時と違って日常になるんだ。
嫌だな、ゆうは気にしないって言うし、ここは名誉の負傷だと言ってくれると思う。
この傷を個室露天風呂やゆうの部屋で見せたけど、お風呂と違って、そういう行為って時間をかける時間が長いらしいし、見せ続けるのは嫌だな。
「ただいま! これからいっぱい言えるのは楽しみですね」
「早いね」
「どこかの偉い人が話し始めた辺りで飽きたので帰ってきました。同じことを思っている人もいました」
大学選びに成功したらしい。
「それで今日はするというのがセッ」
「そうなんですけど来ちゃったのでやめにしましょう」
ありがとう神様。私は本当に幸運です。
「来てなくてもしませんよ。そういうことは」
「でも、するって」
「言われてみれば確かにそういうつもりではあったわけですが、他にも出来ることあるかなって」
「出来ることって?」
「明日、家電量販店に行きます」
「履修登録!」
「全部ネットなので」
「それでなんで電器屋さん?」
「見てください。この白い壁」
大きい壁だと思ってはいた。
「ここにプロジェクター置いて、映画館が出来ます。あそこで出来なかった遊びをたくさんしましょう」
次の日、プロジェクターを買いに行った。物入りだったろうにお金を払うといって聞かない。
そのお金は服を買う為に使えと言った。なるほど装いで杏のことを落とす作戦が最短なのかといっていたが、そんなつもりはない。
その他にも家プラネタリウムやキャンプセットも買った。
「そんなに買ってどうするのさ」
「今までは制約があったけど、家で出来るいっぱい楽しいをどんどん見つけていきましょう」
テントとプラネタリウムを発送してもらって、二人でプロジェクターの入った袋を持ち合った。
今日の晩ご飯買ってないね。どうしよっか。
私、下ごしらえくらいはやっていて。
「え、杏の手料理食べられるのですか?」
「そのあんまり上手く出来ないよ。ずっと外食とゆうのご飯だったから」
「気にしません。その気持ちが嬉しいのですよ。ちなみに何を?」
「鶏のモモ肉にとりあえず味噌をたらふくつけた」
しばらくの無音。
「味噌麹漬けですね!」
「…そうそう。あとは味噌を落として焼くだけ」
「確認なのですが、味噌を漬け込んだ容器って」
「そのまんまの四角の入れ物だよ。結局ね、アレが一番いいのよ。同棲していた時は味噌塗りたくってバッドにいれていたけどさ」
「味噌。買い直さなきゃ」
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