第16話 週末はお料理コンテスト

 ゆうが告白されたらしい。

「お付き合いしてくださいって言われて」

 いいじゃん付き合っちゃえよって思った。



 本当に、そう、思った。



「選べないって言われたから交際をお断りしておきました」


「競わせるつもりだったんかね。最近の男子高校生はすごいな」


「私と杏で杏を選ばないなんてどうかしてます。でも杏を選ばれたら私はあの男子を刺すかも」


「え、どういう? そのつまり私を好きなの?」


「そうらしいです。この前の春服デートを見たらしくて」


 話を聞くと。

「林さんお付き合いしてください」


「私、好きな人がいるので」


「分かりました。だったらあのお姉様の連絡先を教えてください」

 そうか、二番目を先にしたのか。

 分かるよ、わーかーるよ。

 だって二番目に一番目の連絡先教えてって言っても教えてくれないから、男子高校生脳で期待値がある方にかけたわけだもんね。

 私が男子高校生でも同じことをするよ。

 その場合、軽蔑されることを念頭に置かなくちゃいけないけどさ。


「せめて今度対決をさせてくれと言われました。なんか学校で一番人気の男子らしくて、明日から面倒なことが始まると思うと悲しいです」


「その対決は分からないけど、面倒は聞いてあげるよ」


「それでね、なんか週末。学校の調理室でね」

 聞くだけと言ったはずだ。


「あの聞くって」


「言う事を聞くですよね」

 あぁ、そっちで取ったか。普通はね、そっちで取らないんだよね。


「それで何をしたらいい? そこの池に飛び込んで泳げばいい?」


「そんなことしません。何を言っているのですか」

 すごい剣幕で怒られた。そっちはそう取るのね。


「週末、高校でお料理コンテストがあります。そこで大賞を取ったチームが杏をいただくという」


「ちょっと、ちょっと待って」


「何か?」


「そんなこと言われても困るよ。こっちにはこっちの都合があるんだから」


「どんなですか?」


「おじいちゃん孝行娘だから」


「一日くらいでボケません」


「お母さんの家事を手伝わないと」


「一日でゴミに埋まるほどのお家ですか?」


「弟と倉庫の掃除を」


「アレはどうでもいいと思います。ということで今日は泊まってください。今夜は作り置きです。ここは公平に行きましょう」

 作り置きの時点で公平さにかけると思われるのだがどう思うのだろうか。


「そのさ、友達とかいるの?」


「失礼ですね。いますよ」


「どんな子?」

 なんでも出来る子は敬遠されるのはよくあることだ。

 それはけしてゆうに限ったことでは無い。

 私の中学にもいた。

 その子は器用だけど、少し失敗したら陰口をめちゃくちゃ言われる。

 少し可哀想だった。

 何でも出来る子は苦労する。



「たまにカラオケに誘われます」


「いいじゃん」


「百点ってアレ、バグですよね」


 うわぁ。


「他には?」


「たまにボウリングに誘われます」


「いいじゃん」


「何でみんなは一回で全部倒せないか不思議です。ということで週末は楽しみにしてくださいね。腕を振るいます」

 家に一度帰る選択肢をも与えられないのか。

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