第17話 地獄のようなコンテスト

「それでは一チーム目。ゆうチーム、今回はゆうさんだけですが、意気込みは?」

「勝ちます」

 ほう、あそこに固まっているのが敵地の女の子たちか。恥をかかせようとしてカラオケに連れて行っても、ボウリングに連れて行っても恥をかかされるもんな。そりゃ面白くないよ。少しは気持ちわかるもん。


「二チーム目。大将チーム、お一人だけですが」


「新鮮な魚を用意しました。親父からはしっかりやってこい。決めた女は絶対に手に入れろと」

 ちょっとは嬉しい。

 こんなおばさんにもまだ価値があったのか、あんな目に遭ったのは今日の為の布石。

 ゆうの厳しい視線がこちらを刺した。


「それでは三チーム目。これは二組の皆さん」

 敵だらけだな、どうせ料理は奥の気が弱そうな女の子にさせてケチだけつけて帰るだろう。


「うちら負けないから」


「皆さん、闘牙に燃えております。このコンテストは最後に味見コーナーがあります。味見コーナーでは一位のチームを決めます。それではスタートしてください」

 ゆうは洋食にするらしい。ハンバーグをこねている。我が家では二ヶ月に一回ハンバーグdayを意識したのかもしれない。

 私好みにするのは難しかろう。それほどちゃんと勝負をしようとしているのだろう。


 大将はクーラーボックスから鯛を取り出した。そしてきれいに卸して、骨を取った。それを丸ごと大鍋にいれた。ということは手元にある麺で鯛ラーメンでも作る気なのか。


 一方、二組の皆さんはみんなやる気はなかった。気が弱そうな子の指示の元、卵を割ったり、喋ったり、混ぜたりしている。どこかで仕掛けて来るはずだ。オーディエンスはきっと大将に負ける以前を狙って来るだろう。


「あれー、林さん。ハンバーグこねるのに卵がいるんじゃないの?」

 割った卵から入りを手元のボールに入れられた。


「はは、長嶋さん。冗談きついなー」

 そうやって外では愛想笑いをして、何かあっても交わして、気を抜いたらうっかり恥をかかせてしまう。この女の子は少し優秀でアホなだけなのに、なんでこんなひどい目に遭っている。


 思わずゆうの元へ駆け寄ろうとしたが、審査員に止められた。


「まぁまぁ、落ち着いて。審査委員長は座っててください」

 自分の勉強を少し置いて、辛い時間を中和させようとした。

 制服を最初に見せたくて、他の生徒に虚勢を張ろうとした。

 可愛くて哀れで優しい子。


「おいお前らずるいぞ」

 二組の皆さんの前に立った。出汁を取る間、時間があるようだ。大将という青年が二組の皆さんの前に立った。


「えー、ずるなんてしてないよー」


「大将君、本当に卵が無さそうだから、あげただけだよ」


「審査員。今回の料理の金額制限なしだよな」


「あ。あぁ、そうだ。それが」


「林はこの日の為に四パック五百円の卵を用意した。肉も合い挽きではなく、国産牛肉オンリーだ。ハーブも使っていて、小麦粉もこだわっている。そんな女の子になんだお前らは」


「指示したのはこの子よ。私たちは言うことを聞いただけで」

 途端に大将君の気が緩んだ。


「そうだな。園田が指示したかだもんな、縄手、北条、坂手こっちに来い。いいもんやる」

 え、何々? なんか持っているけど。


 何かをするらしいということは分かった。冷ました出汁を三人の上にかけた。


「出汁は無駄にした。親父に怒られるな」

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