第25話 頰を押すなんてエッチ
ゆうは湯あたりで転がっている。
お風呂に入っているうちに、布団が敷かれていた。
「そんなとこ。ダメ」
そんなうわ言は止めろ。私はゆうの顔をまじまじと見た。少し顔を近づけると産毛や柔らかそうなくちびる。何を考えているんだ。私はおばさんだぞ。
「失礼いたします」
ぷにっと頬に指を差していた。
「エッチ」
振り返るとお膳を持った仲居さん。
「後にお待ちしますね」
「違うんです。この子、湯当たりしちゃって」
「お水を持ってきますね。冷シートの方がいいかしら」
お膳はそのままに仲居さんは部屋から出て行った。
「で、いつから起きていたの?」
ゆうの額にデコピンをした。
「ほっぺにちゅー」
「してないって」
「でも、顔は覗き込んだ。いいよ、私のこともっと見てよ。いくらイタズラされてもいいからさ」
「そんなこと言ってないで水持ってきて貰うから座椅子に座って」
「頭クラクラして、座れない」
「じゃ、どうぞ。お姫様」
何とか座らせて冷蔵庫に冷たいお茶が入っていないか見てみたが無い。
「私、さっきまで杏にいっぱいされてた」
風呂に入っただけだ。多少のパイタッチはあったかもしれない。
だが、合法的な観点から見てだいじょばないな。高校生相手にパイタッチはアウトだったわ。
「失礼、いたします」
絶対ワンクッションあった。中で何かをしていても問題ないように、まるでそんなことがないような気遣いを感じた。
「お水の方を。あとお膳はどうされますか?」
「ご飯は食べられる?」
「一人ではちょっとしんどい」
あーん、を狙っていることくらいわかるけど、湯当たりの女の子に「ちゃんと座って食え」とは言えない。
「なら並べて置きましょうね」
四人掛けの机にお膳が並んで配置。
仲居さんが出て行き、ゆうと二人になった。
「お水飲める?」
「飲めない」
「ちょっと舐めてみる?」
「杏、お水飲んで」
「飲んだ」
「なんで飲み込むの!」
「飲めって言うから」
「くちうつし」
「ドン引きだわ」
「冗談だよ。あーん、もう。お腹すいた。ふぅー」
私にもたれて寝てしまった。
「仕方ないか」
私はゆうを抱えて布団に寝かせた。布団をかけた時にゆうに抱きつかれた。
「うーん、好きぃ」
夜ご飯が食べられないのだが、どうする。しばらくこのままでもいいか。
ゆうにお布団をかけてしまわないと、暑くてもクーラーで湯冷めはするし、この子の手は冷たかったから、寒さは敵だ。
私はそっとゆうの腕を離し、掛け布団の上に眠っただけのゆうの布団の上に私の分の布団をかけた。
「うへへ、一緒のお布団ってエッチですね」
本当にこの娘は寝ているのか。ゆうが落ち着いたので食事をしようとお膳に口をつけた。
「もったいない。こんな美味しいご飯、普通じゃ食べることは出来ないよ」
眠っていて良かった。身体の温度がグッと下がって「私の料理が美味しくないということですか?」とか言われたら怖い。
後々のフォローにいつも通り頭を働かせないといけない。そして「私って重いですね。ごめんなさい」ダメだ。こういう想像はダメだ。
いつの間にか寝ていた。いや、お膳を食べていたはずだ。寝る要素はどこにも無い。
目の前ではゆうが眠っている。ゆうは目を覚まして、抱きついて来た。起きるだけで抱きつかれる覚えはない。
「もう大変だったんですからね!」
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