第2話 ウエルカムトゥー女子高校生

「部屋?」


「はい、その何というか。私、お姉さんの事ずっと気になっていて、こんな脅迫みたいなことになってなんですが、いつもお部屋にいないし、お話をしたくて」


「気になってというのはそのいい労働者として」


「そんなボロボロの人にそんなことするはずないじゃないですか!」


「ごめんなさい」

 仕事以外で怒られたのは何年以来だろうか。


「高校に行くときに時々笑いかけてくれるところとか」

 あぁ、睡眠時間一時間の時のやつだ。疲れていて表情死んでいるやつだ。

「落とされたハンカチが使い込まれてて物持ちが良くてそんな杏さんにときめきました」

 ただ新しいハンカチを買う余裕が無いだけ、そうか無いと思っていたら落としたのか。

「朝登校する時に子どもに押されても手を振るところ」

 今の私は子どもでも倒せるクリーチャーだから敵意を向けられないように必死なんだよな。


「私、今高二です。一緒にいられるのは二年も無いです。でも置いてくれるなら当面の家賃はいりません」


「よろしくお願いします」


「お姉さんを絶対に惚れさせるので覚悟して下さいね。まずは掃除です。お部屋行きましょう」


「ちょっ、部屋はダメ。絶対にダメ」

 惚れ? いや待て、開けられて困る物だらけだ。たくさんのペットボトルやカップ麺の残骸、大量の督促状に税金関係。

 母親の仕送りで来たけど調理出来なかった腐った野菜。


「あの、何を?」

 ジャージに手袋、マスク。


「慣れてますから大丈夫です」


「何を」


「このアパートの人、夜逃げ同然の人もいて特殊清掃雇うの高値だから、自分でやるんです。なので、大丈夫です。トイレは?」


「えと、水が止まってからは外で」


「偉いですね。杏さん」

 杏さん?


「あ、ごめんなさい。まだ会ったばかりですよね丸田さんからしたらそうですよね。その嫌だったら、開栓だけするのでそれならそう言ってもらえば」


 正直、自分の部屋ながら掃除出来る気がしない。そのままではキノコが生えてきてもおかしくはない。


「そのお値段は」


「無料です。有料ゴミも私が掃除すると無料です。私が掃除すると三か月家賃無料にしますし、おばあちゃんがもう少し割りのいいバイトを紹介すると言っています」


「よろしくお願いいたします」

 女子高校生に部屋を見られてしまう恥よりも経済的な面が勝ってしまった。三か月家賃無料はありがたい。これで借金を返していったら、借金か。


「どうしたんですか」


「いや何でも」


「開けてください」


「へ?」


「様々なお約束上、緊急時以外は家主といえど部屋には入ることは出来ません。なので、鍵を開けて私を入れてください」


 なんてこった。


 無料お掃除&家賃三か月免除そして信用できないが借金も無いという好条件なのはこの女子高校生に部屋にお迎えするということか。


「あ、心配しないでください。そのこれからも通うので腐っている物があっても何をしていても嫌いにはなりませんから」


「どうぞ」


「お邪魔します。光熱費は肩代わりしたのでつきますよ。どれどれ」

 女子高校生を部屋にいれてしまった。


「思ってたより大丈夫そうですね。ゴミ袋はいりそうだけど、余裕です」

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