第46話 友達に相談
降る雨、その中でも私はバイト先に通う。出入り禁止にされたゆうは家の中でかなり抵抗をした。
「なんで、杏のところに入る事が出来ないのですか。おかしいでしょう」
私の家では無い。
「流石に居座られると困る。しかもやりすぎ」
「そんな恋人と共にいることが出来ないだなんて」
友達以上恋人未満だけど、そこはもういいだろう。共には二十四時間ではない。
「家で一緒にいれるならいいでしょ? 家での私を知っているのはゆうだけだよ」
えへへとデレるゆう。
「そうですよね。この二年間半は杏にとっての特別だもんね」
拾われた猫の境地である。
「今晩は頬を叩いてください」
「嫌だよ。人の顔なんて叩きたくないよ」
「一回でいいから」
最近、えらく欲しがる。
「だからそういう期待されても困るよ」
大学に行けと追い払い私もバイトに向かった。今日は試験監督だ。
「それで私に相談?」
「聞くことが出来るの。伊藤さんだけなので」
「頼ってくれたのか。嬉しいな。これ持ってきたから冷凍庫入れておいて」
高級アイスクリームを保冷バッグから取り出した。
「そんなにいいのに」
「これくらいの時期になると、ねぇねぇアイスクリーム食べっこしようよ。他の子のアイスじゃなくて私ので食べよ。はあとが多くなるから」
「それはそれで大変そうというか。相当の報いというか」
「で、何? 林は今、ほったらかしにした課題を講師監督の元、頑張っているよ。絶対に逃げ出せ無いよ。なんでかわかる?」
「それでですね」
「おっと、興味ないのね」
「実は」
前の家で男に軟禁されたこと、借金地獄だったこと、刺されたこと。これまでの様々を話した。それを伊藤さんは時に冷凍庫にアイスを入れて、時に三つ目を食べながら聴いた。
「要は期待に添えられないということだね」
肯定のうなずきをした。
「それでどこまでいったの?」
「その手を繋いだ」
「中学生かよ」
ため息混じりの呆れ。
「と、二人で温泉旅行に裸ハグ」
「それはさすがに林が可哀想だよ」
「その先は怖い」
本当にどうにかされてしまいそうで怖い。
「エッチな事はすぐに出来るし、すぐに好き好きになるよ。それに仮に大人として一線引いているつもりなら、もう随分と遅いよ」
「遅い?」
「だって裸を見たということはすぐだよ。ちなみに私は裸を見たらその五分後にはエッチするよ。我慢している方だよ。冷静に考えてね。もし、好きな男の子に裸を見せて素っ気なくされて同棲してつれなくされたらどうよ」
「中々辛い。でもそういうことをするとダメというか」
「大人って大変だね。そうだね。エッチはしないが少し暴力的なプレイで血が出ないやつか。アレしか無いだろう」
伊藤さんが食事を作っている間にゆうは帰ってきた。
「むっかぁ、なんで伊藤がご飯作っているのですか?」
「おっ、帰ってきたヤンデレ娘」
「ヤンデレじゃないです。全ての優先事項が杏なだけです。顔を洗うくらいなら杏の頬を食べたい。化粧水をつけるくらいなら化粧水をくんかくんかしたいと思っているだけです」
「ほら、もうヤバいよ。言ってあげなよ。帰るから」
「私の愛に負けたんですね。ざまぁみろ」
「オムライス食べてね。杏はゴミにしないと思うから、また感想聞かせてね」
伊藤さんは帰って行った。
「もう私が作るのに、え? えっえっえ」
私はゆうを壁に押し付けた。
「私ね。我慢させるの興奮するの」
もちろんそんな性癖は無い。
「いい子だから、私の前ではしたない姿をしても私はしないから」
真っ赤でしゃがみ込むゆうを見て、本当にこれで良かったのかと思った。
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