第28話 最後の夏服
夏服、可愛い。
朝、ゆうは六時起床。学校には行くつもりなので、スーツを持ってきた。
私も六時に起きるとゆっくりしてくださいと言われた。
「どうせ八時半登校なのに七時半には家を出るでしょ」
「もう、そんな楽しみにして」
掘らなくていい墓穴を掘った。
「朝ごはん手伝うよ」
「ゆっくりしてください。少し時間がかかるので、遅かったらその辺のお皿を投げてください。そういうプレイも試してみたいので」
マゾヒズムヤンデレ。すごくよくない。
「ちょっと顔を洗ってくるね」
「洗顔料は?」
「知ってる。どれくらいここで過ごしたか分かっている?」
うへへ、と声が聞こえた。何か余計なことを言ったかもしれない。
顔を洗った。トーストだと口の端についたら厄介だ。早くご飯を食べて化粧しないといけない。
「すっぴんでも可愛いよ」
「大人になるとそういうわけでは無いのよ」
「えー、私の全部を知って欲しいな」
「だからといって無装備で行くことは出来ません」
チェーと言って顔をそむけた。ちょっと可愛い。違う。可愛いのは子供として可愛い。
「今、私は深ーく傷つきました。すっぴんでも可愛いいって言ったのに拒否されて、あー私可哀想だな。あたっ」
脳天にチョップした。
「さっさとご飯食べるよ。
「いいの?」
「いいも悪いもこの前も同じく、この部屋に来てから覚悟は決めているわよ」
薄くていいだろう。マスクをしたらごまかせるが、全くの無装備では心もとない。
それこそゆうに化粧は必要は無いだろう。私はおばさんだが、少しでもおばさん度は下げたい。
「準備出来たよ」
「可愛い。好き」
直視して言われると少し照れる。制服は可愛い、通気性がいいように使われているのだろう。思ったより涼しそうだった。
「可愛いね」
「好き?」
「まぁ、ちょっとは」
「ちょっとじゃ、や」
また頬をふくらませた。可愛いから止めてくれ、意図してそれをしているのか。
「いけない。もう七時半だ。行こうよ、時間無いよ」
本来は八時半登校で七時半に出るのは少し早い。
「もう荷物多いと思ったら、ヒールとか持ってきてさ。そんなにしっかりしなくいてもいいのに」
「でもこれで胸を張れるでしょ? ちゃんとした
「
なんだか解釈が違うような言い方だな。
通学の人がいないところではただ隣に歩いているだけの時は横に歩いていただけなのに、人が増えだすと前と同じく腕を抱いて隣を歩いている。
「ちょっと暑いかも」
「暑いと化粧崩れちゃうね」
そういって手を恋人つなぎで繋いだ。
学校の門もくぐって二回目になる。
「おい、林。その人はなんだ」
「そのお世話になっていた大家さんのおま」
「彼女です。今回は授業参観の保護者です」
「あ、あー」
顔を見られて察した先生は「ご案内します」と、言って前を先導した。
「一緒に行こうね」
「林はさっさと教室に行け」
「杏は私の全てです。控室の邪な思いを持った男がいる空間に行かせることは出来ません」
「男女別だ。早く行け」
「杏、またあとでしようね」
もう何でこうややこしい言い方をするかな。
「先日はすみません」
男性の教師は謝ってきた。おそらくお料理コンテストの事だろう。
「いえ」
「ここでお待ちください。そんなに待たせません」
教室に入って、座った。数人の保護者が一斉にこちらへ向いた。
「初めまして丸田さんって本当に林さんの彼女?」
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