第12話 不審者、襲来ー1

 マコトとの飲み会から数日後の土曜日、今夜もアサヒは自宅リビングでリングフィットをプレイしていた。



『足を高く上げて〜ゆっくり下げる!出来れば床には踵はつけないようにして!』



『リング』の指示に従い、仰向けに横たわり手のひらを床に押し付けるようにして上体を固定する。

 その状態で、真っ直ぐ伸ばした両足をゆっくりと上げていく。

 70度くらいまで上げたらその体勢で数秒キープ、また、ゆっくり両足を下げる。


 モンスターへのダメージより、運動不足のアサヒへのダメージの方が深刻なようだ。


「シックス、パックを、取り、戻したい!」

 残念ながら、アサヒがシックスパックだった過去は存在しない。




『レッグレイズ』でダメージを与えた『アサ』に、モンスターが体当たりで反撃する。

 立ち上がったアサヒは、水平にしたリングコンを横に向け両手でお腹に押し付ける。

 画面内の『アサ』の前に大きな盾が現れて、モンスターを弾き飛ばす。

『腹筋ガード』がうまくいったようだ。



 更なる追撃をしようとフィットネススキルから『スクワット』を選択し、リングコンを持ち直すと真っ直ぐ前に突き出した。

 肩幅くらいに両足を広げた姿勢のまま、腰をゆっくりと下ろしていく。



 ふと、ローテーブルに置いておいた唐揚げ弁当が目に入った。


 スーパーの弁当コーナーで50%引きのシールを貼られていたものをアサヒが救出してきたものだ。

 どうやら夕食にと買ってきた物らしい。

 その横のシャケおにぎりと梅干しおにぎりと昆布おにぎりは翌日分だろう。

 きっとそうだ。そうに違いない。



「唐揚げといえば、ダイちゃん本当にどこいったんだろう・・・。

 ていうか密室からの行方不明とかすげー怖い。

 ホント、オカルトとか勘弁してよぅ」


 なんだか情けないことを呟いていると、隣の寝室から突然大きな音がした。



 ドッズン!!!




「え?なに?地震?タンス倒れた?」




 アサヒがリングコンを持ったまま、呆然としていると、リビングと寝室を隔てるスライドドアが一気に開いた。






 そこには刃渡り50〜60センチはあろうかという、大きな刃物を持った男が立っていた。

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