第39話 スマッシュ!!ー3

「うわぁ・・・」


「キレイだね・・・」


 マコトは、抜き放たれた刀身を日差しに掲げた。


 鞘を持って引っ張った際後ろに尻餅をついた大介は、そのままの姿勢で刀を見上げた。


 銀色に光る刀身は、光の角度で虹のようにキラキラと輝いた。


 全長1メートルほどの刀は、不思議と軽い。


 マコトと大介は代わりばんこで刀を持ってみる。


「ホントにきれるのかな」

「わかんない」


「このヒモきっていい?」

「いいよ」


 鞘に結ばれていた縄に刀身を当てると、音もなく切れて、落ちた。


「これ持ってかえったらおじさんおこるかな?」

「ぜったいダメだよ!」

「いいじゃん。ちょうだい!」

「ダメだよ!これはボクんだ!」


 マコトと大介が取っ組み合いを始める。


 鎧武者に触っていたアサヒは、喧嘩を始めた二人に気づいて駆け寄った。


 そこで変なものを見た。


 床に転がる真っ黒な刀の横に、黒い人影が座っていた。

 真っ黒で表情が見えないのに、マコトが大介を殴るとソイツが喜んでいることが、アサヒにはわかった。


 アサヒは急いで階段を駆け降りると、近くにあった鉄製の釜を抱えて再度階段を登った。


 ものすごく重かった。

 階段から落ちそうになった。


 なんとか2階にたどり着くと、今度は大介がマコトを殴っていた。


 釜を引き摺っていく。

 アサヒは、釜を持ち上げると真っ黒な刀の上に叩きつけた。


 黒い人影はアサヒを笑っていたが、2回目になると首を傾げ、3回目には慌て出した。



「ドンキー・・・パンチ!!!」



 4回目に釜を叩きつけた時、


 パキュン!という音がして、


 刀身が、折れた。






 黒い人影は消えていた。


 マコトと大介は自分達が喧嘩したから、アサヒが怒って日本刀を折ったとびっくりした。

 アサヒはちょっと泣いていた。


 3人は、釜を1階に運んだ。


 ******


「ちょっとまってて」


 マコトが自宅からダクトテープを持ってきた。


「ハゲオヤジがアメリカ人はこれでなんでもくっつけるって言ってた!これ使おう!」


 手を切らないように気をつけて、折れた部分にテープを巻きつけた。

 くっついた。

 テープも銀色、刀身も銀色、大丈夫だ。

 そぅっと鞘にしまった。

 刀掛け台に乗せた。


「これは3人だけのヒミツだからな!」

「うん!」

「・・・うん」


 顔を腫らしたマコトと大介は、奈緒子に喧嘩がバレて怒られた。


 アサヒは起きてきた綾子と二人でおやつを食べた。


 とても美味しかった。


 ******









 夜、奈緒子が綾子を寝かしつけていた。


 綾子は奈緒子にお昼寝している時に夢で見たお話をしていた。


「ママ、きょうね、またおばけがきたの。

 いつもの、こわーいおばけ。

 でもね、あっくんが、えいってやっつけてくれたんだ。

 あっくん、だーいすき!」

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