第40話 あっくんとあやちゃんー1

「今日はどうしようかな・・・」


 12月に入ったある日、綾子は鏡の前で服装に頭を悩ませていた。


「もう少し攻めてもいい気がするんだけど・・・、あっくん、引かないかなぁ」


 結局、ホワイト系のユニクロのニットにカプリシュレマージュのベージュのマーメイドスカートを合わせた。

 靴はマルジェラのバレエシューズだ。

 アダムエロペのブラウンカラーのダブルチェスターコートを羽織り、ショルダーバッグを手にして家を出た。


 大介が乗っていたCX-8を走らせると、30分もかからずアサヒの住むマンションについた。

 来客用駐車場に車を停める。


 3階に上がり、インターフォンを鳴らす。


「あやちゃん、いらっしゃい。

 寒かったでしょう。

 あれ?ナオちゃんは一緒じゃなかったの?」


 玄関をあけ、アサヒが出迎えてくれた。

 暖房を強めにかけていたのか、とても暖かい。

 ナイキのスポーツウェアのセットアップを着ている。


 そろそろ70キロ台突入も目前の体重80キロになったアサヒは、随分と顔まわりがすっきりとしていた。


「ママは今日は来れなくなっちゃって。

 先に、にいさんの夕食の買い物、一緒にお願いしてもいいですか?」


「うん。ちょっと待ってて」


 アサヒは、寝室からアークテリクスの黒いマウンテンパーカーを持ってきて、上に羽織った。歳末セールで結構手頃な金額だったらしい。

 財布とキーケースとタントの鍵を持つ。


「お待たせ。行こっか?

 いつものスーパーでいい?」


「はい。お願いします」


 ナイキレボリューション6を履き、部屋を出てドアの鍵をかけた。



 ******


 スーパーは夕食の買い出しで賑わっていた。


「今日は何にするの?」


「キムチ鍋のリクエストです。

 なので、豚肉に、白菜、にんじん、長ネギ、ニラ、椎茸と豆腐とかかな。

 こっちで食べる分と持って帰る分。

 持って帰る分は結構多めで、だって」


 綾子がバッグから取り出したノートを読む。


「・・・ダイちゃん、鍋ごと持ってく気なのかな?」


「それはやめさせるから」


 カートに乗せた買い物カゴに肉や野菜を入れていく。


「あれ?鍋の素、2種類も使うの?」


「ううん。こっちで使う分と持っていく分」


 ミツカンのパウチタイプの鍋つゆと、味の素の鍋キューブ旨辛キムチだ。

 確かに鍋キューブなら嵩張らなくて良いだろうと何種類か追加する。


 店内を物色していると試食販売のオバ様に声をかけられた。


「あら〜美人さん。旦那さんとお買い物?すっごく素敵ね。

 今日はキムチ鍋?このウィンナー入れると美味しいわよ。

 焼いても美味しいから試食してみて!」


「ありがとうございます〜いただきますね!」


 笑顔の綾子が楊枝に刺したウインナーを持ってきて、カートを押すアサヒに一つ突き出した。


「はい。あっくん。アーン」


「ちょ、うん。ハイ、オイシイデス」


 綾子が何袋かウインナーをカゴに入れる。


 なかなかの金額になった会計は、綾子が宮神家の家族カードで済ませてマンションに戻った。


 タントはたくさんの荷物を積み下ろしするのにちょうどよかった。

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