第46話 食事についての考え方は?ー1

「あっくん、本当に痩せる気ある?」




 洗面所に置いた体重計でアサヒが体重を量っていると、正月の一件以降あまり機嫌がよろしくない綾子が言った。

 キッチンにいる綾子から何キロになったか尋ねられたので、素直に答えたらお気に召さなかったようだ。


「お正月太り・・・3キロもしてる」


「ちょっとお餅食べ過ぎちゃったかも・・・」


 アサヒ、お前、年末も結構食べてたぞ。


 綾子は、大介が来る日曜日以外もマンションに来るようになっていた。


「まぁ、いいけど。にいさんとは関係ないし」


「あ、アハハ(アレを刺激するかもって言ってるのに)」


 マコトが乾いた笑いをこぼした。


「ね。あっくんはお昼ごはんどうしてるの?」


「大体コンビニかな。

 セブンとファミマが徒歩5分圏内でさ。

 たまに会社の人とお蕎麦とかラーメン行くこともあるけど」


「・・・手作りのお弁当とか嬉しい?」


「いや。それは・・うん。あんまりかな。申し訳ない感強くて。

 ていうか、ダイちゃん帰ってくるまでそう言うのは・・・」


「あっそ。じゃあ、にいさんみたいに、コンビニの焼肉弁当と唐揚げ弁当のローテーションで生きていけばいいんだ」


「語弊あるよ。その言い方。ちょっと待ってて」


 寝室へのスライドドアを開け、財布を持ってくる。

 ソファに座るとキッチンで何かしている綾子を呼ぶ。

 そして、財布からレシートを取り出した。


「先週のレシート見れば大体わかるし、一緒に見てみようよ」


 キッチンからリビングにきた綾子は、エプロンの紐を解くとテーブルに置いた。


 以前アサヒから借りたフリースは、そのまま綾子が使用することになったようだ。

 フリースも脱ぐとエプロンの横に置く。


 ふんわりとしたエムアンダーバーの白のトップスに、マウジーのブルーデニムを履いている。

 深めの股上が腰回りを包んでいて、綾子の足の長さがよくわかる。


 ハンガーラックには、アサヒのハイブリッドダウンパーカーに並んで、モンクレールのダウンジャケットが掛けられている。


 アサヒの隣に綾子がピッタリ座る。

 近い。


「ボディビルやってる人だと、茹でたブロッコリーとサラダチキンのイメージあるよね。

 あと、プロテインたくさん飲んでそう」


「そうだね。でも僕の場合、結構順調に体重落ちてくれたし、そこまでガチガチに栄養管理してないよ。

 あと、プロテインて言うと身構えるかもしれないけど、ただのタンパク質だから。

 僕もたまに飲んでるよ」」


 少しズレて距離を開けるアサヒ。

 GUのざっくりとした質感のタートルネックブラックニットと、リーバイスのデニムでは少し防御力が低そうだ。

 いや、ちょっとチクチクしてるから、跳ね返せるかもしれないぞ!


「基本的にお腹いっぱい動けない!ってことにはならないようにしてる。

 せいぜい腹八分目かな。もう少し食べたいって思うくらいだね。

 同僚の人とトンカツ食べに行く事もあるし、そう言う時は夕食で調整してる」


「揚げ物って美味しいよね。

 見て。にいさんも、次はカキフライ希望だって」


 大介のノートを取り出し、アサヒに詰める綾子。


「う、うん。PFCバランス*を注意した方が良いと思うけど、僕の場合気にしすぎてストレスになっちゃいそうだし、あまり気にしすぎないようにしてる」


「ストレスかぁ・・・」


 ちょっとアサヒから離れると、険しい顔をした。





=+=+=+=+=+=


*Protein(タンパク質)・Fat(脂質)・Carbohydrate(炭水化物)

以上の三大栄養素の頭文字。

それぞれ栄養素が総エネルギーに対してどれくらいの割合を占めるかを示した比率。

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