第45話 お正月は、つい・・・ね?

 新年最初の日曜日となる1月1日。


 大介がアサヒに遠慮したのか『用事で戻れない』と言ったため、アサヒのマンションは無人だった。

 アサヒも実家に帰ったらしい。


 正月が明け、宮神家の前にアサヒ・マコト・ジンが揃っていた。

 客用スペースにタント・アルファード・KATANAが停められている。


「あけましておめでとうございます。マコっちゃん。ジンさん。

 ジンさん、新年早々来てくれて、ありがとうございます。

 マコっちゃんは、彼女さんは大丈夫だったの?」


「あけおめー。ハルカなら9日まで休みだってさ。実家に帰ってるよ」


「おめでとうございます。

 私は独り身で自由が効きますから、お気になさらず」


 アサヒは、ユニクロのタートルネックニットにジャーナルスタンダードのシェフパンツ。その上にユニクロのハイブリッドダウンパーカーを着ている。靴はニューバランスの996か。

 マコトの服装は、左胸にSのロゴが入ったシュプリームのグレーのパーカー、ネイバーフッドの黒いパンツ。ノースフェイスの黒・紫ヌプシを着て、靴は以前と同じパンダダンク。

 ジンは、以前の中華屋での食事会と同様に、ルイスレザーのライダースジャケットにデグナーのシフトガード付レザージップブーツを履いていたが、今日はクシタニのレザーパンツ姿だ。


 宮神家に入ると、惣三郎と奈緒子、綾子が出迎えてくれた。


「「「「「「あけましておめでとうございます」」」」」」


 玄関で挨拶を交わし、居間に入る。


 惣三郎は、エンジニアードガーメンツのワークシャツとチノパンとアメカジ色が強いリラックスした格好。

 奈緒子は、サカイのブラックのクルーネックスウェットシャツにアントゲージのオレンジ系のデニムパンツとカジュアルだ。

 綾子はというと、カプリシュレマージュのベージュのレイヤードニットワンピースで、同じ素材の巻きスカートを着用している。


「おじさんもおばさんも、松の内の間は和服かと思いました」


 アサヒが上着を脱ぎながら言うと、惣三郎と奈緒子が答えてくれた。


「正月の親戚の集まりだと、みんな着物だけどね」


「着付けは出来るのよ。でも普段はあまり着ないわねえ。

 だから、みんなにもカジュアルな格好で来てってお願いしたでしょ」


「アサヒさんは、綾子さんの着物姿が見たかったのでしょう」


 ジンがツッコむと、綾子が笑った。


「そうなの?あっくん。

 今度着ましょうか?」


 しばらくアサヒが宮神家やジンにに揶揄われていたが、マコトの声掛けでソファに集まった。


 改めて、奈緒子と綾子にアサヒの住むマンションが霊的に不安定な場所なので、アサヒが不在の場合は基本的に立ち入らないように注意した。

 また、あちらの存在に見られていること、不用意に刺激するとどのような反応があるかわからないことも説明した。

 その後も、惣三郎と奈緒子が色々とジンとマコトに質問する中、アサヒは綾子に声をかけた。


「あやちゃん、ちょっと話があって、外に出れる?」


「え、うん。大丈夫だよ」


 アサヒと綾子が席を外すのを、マコトがお茶を飲みながら見ていた。




 ******




 アサヒは庭園に綾子を連れ出すと、真剣な表情で綾子に向き合った。


「あやちゃん。

 このタイミングで、どうしようか迷ったんだけど。

 気持ちを伝えたくて」


「どうしたの?」


「僕は、あなたのことが好きです」


 綾子も真剣な表情でアサヒを見た。


「うん。

 ありがとうございます」


「でも、今はお付き合いしてほしいと言えないんです」


「え?」


「ダイちゃんに力を貸してくれている神様が、今は僕を気に入っているようなんだけど、何がきっかけで嫌われてしまうか、わからないんだ。

 ジンさんにも相談したんだけど、今は交際するのはお薦めできないという話になって」


「う、うん。それで?」


「この間、ダイちゃんにいつ頃帰ってくるのか聞いたら、もうそれほどかからないって。

 だから、もし、あやちゃんが良ければ、考えていてもらえると嬉しいです。

 もちろん、他に好きな人がいるとかだったら、全然気にしないで!」


「うん・・・」


 綾子は、それきり黙り込んでしまった。




 ******



 神妙な顔をしたアサヒと綾子が戻ってくると、カナダグースのダウンジャケットを手にした惣三郎が言った。


「じゃあ、ジンくんご紹介の縁結びの神社に伺おうか」




 全員で、今年こそ大介が帰ってくるようにお願いした。

 アサヒと綾子も。

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