第44話 中華が食べたい

「うん。わかりません」


 マコトとアサヒが予約した中華屋に、ジンはスズキのKATANAに乗ってやってきた。


 ルイスレザーのライダースジャケットにブラックデニム、デグナーのシフトガード付レザージップブーツを履いている。


 今日は酒を飲む気が無いようだ。


「というか私も暇じゃないんですよ・・・。

 恋愛相談は勘弁してください。

 ただ、まぁあの部屋ではヤらない方がいいかもしれません」


「ジンさんまで・・・」


「アレがアサヒさんを気に入っているのは間違い無いでしょう。

 ですが、綾子さんはどうかわからないんです」


 店員を呼ぶといくつかの料理とプーアル茶、ジャスミン茶を頼んだ。


「アレが神だとして、アサヒさんが気に入られた理由をいくつか考えてみました。

 先日大介さんとお話しした際に伺ったんですが、大介さんがアレと初めて会った時

『珍妙な踊りを踊る面白いものがいた。気に入ったから踊っている間は扉を開いてやろう』

 と言ったそうです」


 前菜として頼んだピータン豆腐と、くらげときゅうりの中華ソース和えが運ばれてきた。

 適当に取り分けてつまむ。


『扉を開く』『踊り』


「お二方は古事記をご存知ですか?」


「ああ、酒飲ませて八岐大蛇やっつけるやつっすね」


「日本の神話ですよね。よくゲームの題材にもなってます」


「そうです。

 最高神の天照大神が天岩戸に隠れられた際、岩戸の前で踊りを踊って天照大神の興味を引いて、岩戸を開けるきっかけを作った神様がいます。

 アメノウズメノミコトです」


 ヨダレ鶏、レバニラ炒め、麻婆豆腐、玉子とキクラゲと豚肉炒め、青椒肉絲、イカの塩炒めとサンラータンスープが運ばれてくる。

 食べすすめていく。


「アメノウズメノミコトは芸能の神様としても有名です。

 アメノウズメノミコトを祭神とする神社は日本各地にあります。

 ご利益は技芸上達、縁結びなどになりますね。

 何かお力をお貸しいただけるかもしれないと思って、いくつかの神社でお守り札を分けていただいてきました。

 大介さんとのご縁を結んでいただけるかもしれません」


 レザーのボディバッグから10個以上のお守りを取り出し、アサヒに受け渡した。


 デザートの杏仁豆腐が届いた。

 ジンは食べ終わるとジャスミン茶で口を流した。


「アサヒさんは踊り子です。

 言うでしょう。

『踊り子さんには手を触れないでください』って」

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