第54話 友人と彼女とアサヒとー3

 メインのもつ鍋と、追加で頼んだ刺身盛り合わせが来た。


 塩ベースのスープにキャベツやもやし、たっぷりの白いモツや豆腐などの上に青々としたニラが乗っている。ニラに乗せられた鷹の爪の赤がキレイだ。

 強火にした卓上コンロで鍋を加熱していくと、煮立つにつれてスープの嵩が増してきた。

 キャベツがしんなりしてきたところでコンロの火を中火に変えると、味見をしていたマコトがそれぞれに取り分けてくれた。


 マコトが取り分けてくれたモツを口に入れると、脂の甘みが口に広がる。

 さっぱりとしているのに奥深さを感じさせるスープだ。

 キャベツや豆腐にも味が染みていて、とても美味しい。


 うまーっとアサヒがモツを味わっていると、ハルカがコップを置いた。


「あの映画ですが、せっかくいい作品なのに、もったいないです」


「はい?」


「あ、やば」


 ハルカ、少し目が据わっていないか?


「俳優さんはとても素敵です。

 メイクさんの効果も小道具もしっかり作られています。

 演技もお上手でしたし、戦闘シーンのワイヤーアクションも素晴らしい。

 ロケーションもどこで見つけてきたのかと思うほど、現実離れしています。

 勿論、CGなのは理解していますが、まさに異世界という感じでした」


 そりゃあねぇ。マコト、こっち向け。


「ア、ハイ」


「カメラマンも徐々に上手くなっていますね。

 最初の頃は、NGシーン集でも見ているのかと思いました。

 マコトさんには良いカメラとプロのカメラマンを探した方が良いと言ったくらいです」


「そ、そうですね。みんな素人で慣れない中で作業をしていまして。

 でも、頑張って、いるようです」


「カメラは良くなりすぎると合成との粗が目立つのでしょうね。

 それはわたしにも理解できました」


 少しの間ニラとモツをもぐもぐしていたが、焼酎で流し込んだ。


「シナリオがいけません。特に日本の商品を簡単に持ち込んで。

 各企業の承諾は得ているのですか?」


「いえ、全く。まだパイロット盤ですし、商用に載せる予定もありませんので・・・」


「内容はともかくスポンサード契約を結べる可能性があるのですから、積極的に働きかけるべきでしょうね。

 予算が少なくて困っているという話も伺っています」


 マコトはドリンクメニューを見ている。何を話した。

 どうしたアサヒ、掘り炬燵なのにいつの間に正座した。


「西野さんは、レヴィ=ストロースという人物をご存じでしょうか?」


「り・・・リーバイス?ですか?」


「フランスの社会人類学者、民俗学者です」

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