第53話 友人と彼女とアサヒとー2

 ハルカが戻ってきた。


「予約がヤリイカ、馬刺、五島サバ付きのコースだったので3人前に変更してもらいました」


「あ、ごめんね。ありがとう。でもハルカが今日空くと思わなかったんだよ。ずっと忙しかったし、今日だってやっと仕事納めだったんだから、ゆっくりして欲しかったんだ」


「いつもマコっちゃんを連れ出してしまって、すいませんでした。

 色々アドバイス貰えるからいつも助かっているんです。

 僕も普段サラリーマンやっていて、日曜くらいしかなくて」


 アサヒが頭を下げるが、ハルカはそれを遮る。


「明日から、お正月休みなので大丈夫ですよ。

 西野さん。

 とんでもないことです。

 動画はいつも拝見させていただいていますし、とても能力の高いクリエイターさんが集結されたんですね。

 とてもインディーズ作品とは思えません」


 スタッフが梅酒のソーダ割りとレモンサワー、4合瓶の島美人と焼酎セットに、お通しの小鉢を運んできた。

 すぐに、ヤリイカの活造り、馬刺、ゴマサバも届いたので乾杯する。


 ハルカは焼酎を水割りにして飲んでいる。


「でも、こんなに素敵で知的な方が、マコっちゃんとってびっくりしました。

 どこで知り合ったんですか?」


「アッちゃんどう言う意味?そりゃあ運命的な出会いだよ。悪い奴に襲われているところを助けてステキって」


「で、本当は?」


「お店にお酒を買いに行ったところ、ナンパされました」


 アサヒ、残念ながら事実に近しい話だ。


「お客さんに手を出すなんて!僕は君をそんなふうに育てた覚えはありません!」


「ゴマサバウマーー!」


「九州のお醤油って甘いですよね」


「聞いてよ!」


 わちゃわちゃしているとふぐ唐揚げと焼きガキも来た。


 珍しくアサヒのお酒がすすんでいる。

 追加で刺身の盛り合わせも注文する。


 アサヒは3杯目、マコトは5杯目、ハルカは焼酎ボトルを自分で水割りにしていた。


「でも、雪村さんはどうしてマコっちゃんと?」


「当時マコトさんは髪型がロングで好きじゃなかったんです。

 それで嫌だって言ったら『君の好みになるよ』とか、適当なこと言うので、『じゃあやってみせてください』って言ったらすぐに髪を切って押し掛けてきて。

 しょうがなくというか・・・」


「えー?このメガネだって度入ってないんだよ。ブルーライトカットだけで。他にも〜♪あなた〜♪好みの〜♪男に〜♪」


「マコっちゃんがいつもごめんなさい。

 これ、僕の連絡先。何かあったら相談してください」


「俺の彼女ナンパすんなよ!アヤちゃんに言いつけんぞ!」


「ありがとうございます。その際は、是非」

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