第20話 ご飯を食べよう

「アッちゃん。腹減ったよ。飯、食いに行こう」


 マコトはシャワーを浴びて着替えたアサヒを自分の車に乗せると、近所のガストに向かった。


 日曜8時過ぎのガストは、家族連れで賑わっていた。


 ダイエット中のアサヒはじゃこ天と蒸し鶏の野菜のごまにんにくだれとドリンクバーを、マコトは目玉焼きハンバーグセットとドリンクバーをオーダーした。


 アイスコーヒーを一口飲んだマコトが話し出した。


「アッちゃんがリングフィット頑張ってる間に、少しダイちゃんと話せた。魔王は倒したけど、色々あって帰ってこれないらしい。とりあえず、明日俺が宮神のおばさんに電話しとくから、夜にでも家に行ってビデオ見せて来週来てもらおう。アッちゃんが気づいたことはなんかある?」


「僕は運動するのに結構必死だったから・・・。

 でもダイちゃん段ボール1個しか持っていけなかったね」


「それなんだよ。気になってるの。転移スキルの範囲がわからない。ダイちゃんが触れているものが対象なら、マンションごと異世界行ってもおかしくない。でも、実際に持って行ったのは料理とリュックサックと段ボールだ。でも、剣やノートは置いていった。取捨選択が出来る?いや、何かがしてるんだ。ちょっとこれを見てくれ」


 マコトはズボンのポケットから小さな白いプラスチックのケースを取り出した。


 中にはカブトムシの幼虫のようなモノが動いていた。


「ちょ、ファミレスで虫はダメだって」


 小声でアサヒが指摘する。


「うん?ああ、そうだな。悪い。すぐに車に置いてくる」


 マコトは席を立った。


 ******


 少しして戻ったマコトは、運ばれてきたハンバーグを口にしながら言った。


「さっきのケースは、リュックの中に仕込んでおいたんだ。けどあのケースだけ、残っていた。豚コマやシャケの切り身は持って行ったから、調理してるかは関係なさそう。ダイちゃんの転移では生き物は運べないようだ」


「それって・・・」


「いや、ダイちゃんのメモ通りなのはわかってる。でも確かめておきたかったんだ。とりあえずハグしてても一緒に異世界に行くことは出来なさそうだね。逆に言えば異世界の細菌も日本に持ち込まれないってことだけど・・・。それと、やっぱり匂いがあまりしなかった。衣服や鎧の色からすると、汚れていそうだったのに。何かが、いや、誰かが殺菌・消毒でもしてるっていうのか?そんな消毒されているのにダイちゃんは・・・」


 アサヒは、じゃこ天に箸をつけることが出来なかった。


「考え過ぎなだけかもしれない。呼吸してたし、体に触ったら脈もあった」


 マコトはライスをかき込むと、一服してくると言い席を立って喫煙所に入って行った。


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