第21話 宮神家に行こうー1
翌日の夜、スーツ姿のアサヒと今井酒店の刺繍が入ったポロシャツを着たマコトが、宮神家の屋敷の門の前に立っていた。
アサヒのタントとマコトのアルファードは、来客者用のスペースに停めてある。
大きな門は固く閉じられている。
マコトがインターフォンを鳴らして話しかける。
「こんばんはー。酒屋のマコトです」
門の横の通用口が、カチャリと音をたて横にスライドした。
「なにこれ?
こんなにセキリュティ厳しくなったの?
昔は門が閉まってることなんてなかったのに・・・」
「ダイちゃんが行方不明になってから、マスコミとか自称霊能力者とかいっぱいきてさ。大変だったんだよ。現代の神隠しだーって。あ、そのゴルフバッグ持ってきて。こっちのトートバッグは俺持ってく」
トートバッグにはノートパソコンが入っている。
「先に謝っとく。昨日の動画、今日ちょっと忙しくて、編集してない」
通用口を抜けると左手のガレージに真新しいシルバーのクラウンと黒いCX-8、シチリアオレンジのフィアット500が停めてあった。
よく手入れされた庭園の中、母家に向かって照明が埋め込まれており、足元を柔らかな光で照らしている。
「懐かしいなぁ。
子供の頃よりも広く感じるよ」
「サッカーコートぐらいは余裕だろうな。でも、おじさんは『古いし広いし、屋敷の維持費や管理費だけでもバカにならない』って言ってたよ」
進んでいくと武家屋敷然とした平家の奥に、白いなまこ壁が特徴的な土蔵が3
「裏庭で、BBQとかやったね」
「ああ。花火とかな。うちの家族とアッちゃんところの家族とダイちゃんの家族みんなでさ」
玄関の大きいガラス戸を開けると懐かしい顔がアサヒを出迎えた。
久しぶりに顔を合わせた大介の母は、昔と変わらず美人だった。
薄いブルーのデニム生地のロングワンピースの下に、濃いブルーのボトムスを履いている。
どちらもアントゲージだろうか。
ふんわりとした丸いショートボブのヘアスタイルだ。
少し化粧が濃い気がする。疲労を隠しているようだった。
「あの、お久しぶりです。
覚えてますか?西野です。
昔、遊びに来させてもらって・・」
「アサヒちゃん!まぁー大きくなって!何年ぶり?こっちに帰ってきたのなら顔出しなさいよ!冷たいわね!お母様から聞いてるわよ!東京で大変だったんですって?だからうちの会社に入ればよかったのに!みんな遠慮しちゃって寂しいわぁ。お母様?やだもう!ママさんバレーでいっつも会ってるわよ。今井さんの奥様も!もっと早く連絡くれればアヤにも家にいさせたのよ?あの子ったら出張中でね。昔はあっくんあっくん言ってあんたの後ろついて行ってたじゃない。ほんとにもう・・」
喋り続ける大介の母に、マコトが話しかける。
「ごめん。おばさん。とりあえず中にあげてもらってもいいかな?」
大介の母は、マコトを一瞥すると吐き捨てた。
「マコト!あんたまたパパに高い酒を買わせたでしょ!
血圧高いんだからダメって言ってるのに!
それと、おばさんじゃないでしょう!ナオちゃんでしょ!」
大介の母、宮神奈緒子は再度アサヒを見つめた。
「それにしても、アサヒちゃん・・・あんた、大きくなったというかデブったわね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます