第15話 不審者、襲来ー4

 テンションがおかしい大介だったが、アサヒが落ち着くと、真面目な顔をして口を開いた。


「アッちゃん。巻き込んでごめん。

 でも頼れるのがアッちゃんしかいなかったんだ。

 今日はもう、あまり時間がないみたいだ。

 また明日来させてくれ」


 真面目な顔のまま、弁当が入っていたビニール袋に、キッチンの卓上用のキッコーマン生醤油とテーブル塩・胡椒などを放り込む大介。


 少し落ち着いたアサヒは、タオルで汗を拭うとテーブルの上に置いてあったG-SHOCK DW-5600と無印良品で買ったノートとボールペンを大介に渡した。


「よくわかんないけど、ダイちゃんは変な嘘をつかないと思うから。

 明日も来るなら、時間を合わせないとでしょ?

 この時計なら早々壊れないだろし。

 そっちの時間とかわかんないけど、とりあえず、明日は19時にリングフィットやるから。

 ノートに解ってることまとめてきてくれると助かるよ」


 ふと思いついたアサヒは、スマホを手に取ると大介の写真を撮った。

 そのまま、ビデオ撮影モードに切り替えると大介に話しかけた。


「そうだ!おばさんたちに知らせたいから、スマホに話しかけて!時間無いなら簡単にだけど!」


 大介はコーラを床に置くと、アサヒが手に持つスマホを見つめて話し始めた。




「みんな、元気?


 俺は、宮神大介です。


 ずっと前に、突然、ここじゃ無い世界、異世界ってやつに行きました。


 いろんな事があって、いろんな事があって・・・


 語り尽くせないけど、なんとか生きてます。


 証明になるかわからないけど、このショートソードと向こうの世界のお金を置いていきます。


 向こうの世界にまだ武器はあるから大丈夫。


 心配、かけてるよね。


 多分アッちゃんが協力してくれる限り、日本に帰って来れるから、みんなに会いたいよ」




 腰帯に差していた剣と懐から出した布袋の中から硬貨を取り出して何枚か床に置くと、代わりにパンパンになった白いコンビニ袋とコーラを手にした。





 そして大介は、クシャクシャな顔で少し笑って・・・一瞬で消え去った。







 アサヒは、録画停止ボタンを押すとそのまま床に倒れ込んだ。




「マジか・・・信じられないよ・・・」




 鈍く光る剣と数枚の硬貨、そしてペットボトルの赤いキャップだけがそこに転がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る