第25話 サバゲーに行こうー1
アサヒの部屋を宮神家の面々が毎週訪れるようになると、マコトは2週に一度顔を出すだけになった。
リュックサックのやりとりは続いていた。
大介から偶に突拍子もない依頼が来ることもあったが、以前より食品のリクエストは減った。
ペプシコーラは欠かせないらしいが。
宮神家の皆は、週一度でも会えることに喜びを感じていた。
全員揃うこともあれば、奈緒子だけ、綾子だけが来ることもあった。
アサヒの体重は順調に落ち、8月には80キロ台に突入した。
そんなある金曜日、アサヒのスマホにマコトからメッセージが入った。
『サバゲーのメンバーが足りないんだ。明日朝8時に今井酒店まで来てくれ。道具とかはこっちで用意してある。昔やった時みたいにおしゃべり禁止ルールな』
******
翌朝、白無地のTシャツにチノパンというラフな格好のアサヒが今井酒店を訪れると、スキンヘッドの小柄な男性が店先を箒で掃いて掃除していた。
今井酒店の刺繍が入ったポロシャツに、ワークマンのブラウンのカーゴパンツ姿だ。
クロックスでの掃き掃除は、足に汚れがつかないのだろうか?
マコトの父親、今井俊彦だ。
「お?西野んところのか!久しぶりだなぁ。元気か?
なかなか良いガタイになったじゃねーか」
パンパンとアサヒの肩を叩く。
「おじさん、お久しぶりです。お元気そうですね。
マコっちゃんに社長譲ったって聞いたから、体調でも崩されたのかと思いました」
「ああ。社長なんてめんどくさい事あいつに任せて、俺は全国酒蔵巡りよ!
ま、俺が会長だからな!文句は言わせねー!」
笑って続ける。
「俺とあいつでそれぞれ酒選んでコーナー作ってんのよ。
女の子には『トシセレクション』の方が『マコトセレクション』より人気なんだぜ。
売り上げも6対4で俺の勝ちだ!」
「相変わらずですね・・・。ところでマコっちゃんは?」
「ちょっと待ってくれ。おいマコト!」
年季を感じさせる『今井酒店』と書かれた看板の上の窓が開いて、マコトが顔を出した。
自身の口に人差し指を立てて、静かにするように、と言っているようだ。
カモフラ柄のカットソーにカーキのパンツ姿のマコトは、店の奥から出てくると何も言わず、再度自身の口に指を立てて静かにするよう指示を出した。
もうゲームスタートらしい。
そのままハンドサインを出していく。
アサヒを指差した後、自身を指差す。
開いた左手をそのまま上に上げて自身を扇ぐように手招きする。
左拳を握るとガッツポーズから手を左右に動かした。
(あなた、わたし、来い、車両?だっけこれ)
親指を下に突き出した後、手のひらを耳に当てる。
(敵、聞いてる!?)
首に手のひらを水平に当てるジェスチャーを見たアサヒは驚いた。
(危険ってどう言うこと!)
昔サバゲーで遊んだ時のハンドサインを思い出したアサヒは左手でOKサインを出すと、マコトの指示に従いアルファードに乗り込んだ。
到着したのは、県を二つ跨いだ町にある有名な神社だった。
車内でも一切言葉を発さなかったマコトのあとをついていくと、老齢の神主らしき男性が社殿の中の小部屋に二人を通してくれた。
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