第24話 宮神家、襲来ー2
「アサヒくん、マコトくん、本当にありがとう」
惣三郎は頭を下げるとハンドバッグから2つの封筒を取り出し、差し出した。
「二人にはお金も使わせてしまった。少しだが足しにしてほしい」
帯付きの札束が2束づつ入っていた。
アサヒとマコトは領収証を取り出し、この分しか掛かっていないと説明したが、気持ちだからという惣三郎に押し切られた。
礼を述べながら、宮神一家は帰って行った。
また来週来ることを約束して。
最後に残っていたマコトが帰ると、アサヒは風呂に入って汗を流し、裸のままベッドに倒れ込んだ。
宮神一家が喜んでくれたことが、ただただ嬉しかった。
******
翌日、仕事中のアサヒの携帯にマコトからメッセージが届いた。
『昨日あれだけ騒いだけど、隣近所からクレームは来ていないのか?』
まずいと思ったアサヒは、退社後、洋菓子屋で焼き菓子を買い込んで、両隣の部屋に詫びを入れに行った。
タイミングが良いことに、両隣とも在宅中だった。
昨晩大騒ぎしてしまったことを詫び、菓子折りを手渡したが、特に大きな音には気づかなかったとかえって恐縮された。
******
「多分、ダイちゃんが帰ってきている時、アッちゃんのあの部屋はこの世界から隔離されている」
国道沿いの丸源ラーメンで、マコトは大盛りにした醤油とんこつチャーシューメンを口に運んだ。
「この間、部屋の前の廊下にこのレコーダーをセットしておいたんだ」
ボイスレコーダーの音声を再生すると、19時4分過ぎまで、部屋から奈緒子の声がしていたが、そのあと20時過ぎまで部屋の音声が拾われることはなかった。
20時5分ごろ、興奮気味に惣三郎に語りかける奈緒子の声が戻るまで。
「おば・・ナオちゃんの声は響くよね」
アサヒも糖質50%オフ麺に変更した磯海苔塩ラーメンを食べ進める。
「別に今はいないんだから気にするなよ。なので、ダイちゃんが部屋にいる間の出入りは禁止だね。何が起こるかわからない。メリットは・・・アッちゃんがどんだけフィットネスやっても誰にも迷惑かからないってことかな」
「マコっちゃんが冷静でいつも助かるよ。
ありがとう」
「あ、それと今週末は俺は行けない。これ以上放っておいたら彼女に殺される。悪いけど、このリュックだけ、ダイちゃんに渡しておいて」
マコトがリュックサックを取り出す。
「この前のノート見てくれよ。焼肉のタレは『黄金の味』じゃなくて『我が家は焼肉屋さん』が良かっただと。嫌になるぜ」
思わず吹き出したアサヒが受け取ったリュックサックは、ずっしりと重かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます