第33話 友人と彼女とー2
マコトは眠るハルカの髪を優しく撫でた。
起こさないようベッドを出ると軽くキスをして、リビングへのドアを静かに開けた。
(ハルカの言う通りだ・・・。
なぜダイちゃんはすんなり向こうの世界に馴染めた。
いや、最初にダイちゃんに渡したノートに俺も似たようなことを書いた。
直接カレンダーも手渡して、向こうとこっちの違いを教えてくれって頼んだはずだ。
アッちゃんが渡した時計は頑丈だけど、時差があるからタイマー代わりだって話をした。
いつの間にか疑問に思わなくなってきていた。干渉されてる?
ジンさんにメンタル保護頼んでみるか・・・)
スマホでジンにメッセージを送る。
ソファに座りノートパソコンを開けると、指紋認証の後にパスワードを入力して画面を立ち上げる。
一つのファイルを開く。
食事中のようで、ドワーフの戦士がラフロイグをグラスに手酌で注ぎ、ストレートのまま飲んでいる。
ライオン頭の獣人の戦士が、焼いた肉に黄金の味をかけて食べている。
動物に玉ねぎや塩分が濃いものは厳禁だが、獣人は平気なのだろうか。
大介がパックの納豆をかき混ぜて、糸がひく様子をエルフの魔道士に見せて嫌がられていた。
(ウィスキーの風味が飛んでいないってことだよな。
それにタレの香りも消えていないようだ。
納豆の糸があるって、納豆菌が生きてるってことだ。
納豆菌はオッケー、病原菌はだめ?
ダイちゃんはほとんど匂いが消えてるから、何かしてるのは間違いない)
以前、お世話になっている造り酒屋に挨拶に伺った際、中を見学させてくれたのだが、最近納豆を食べていないか、乳酸菌飲料を飲んでいないかしつこいくらいに聞かれた。
納豆菌は高温や乾燥にも強く、煮沸しても殺菌できず取り除くことが難しい。
生き物は転移出来ないという条件はどうした。
先日ハルカと一緒に見た外来種を駆除するバラエティ番組を思い出す。
(幼虫は弾かれた。サイズの問題か?
多分、発芽可能な植物の種子の類は弾かれるか処理されるな。
一度試すか?いや、アレの不興を買うかもしれない。これ以上はまずい。
とりあえず、危険なウィルスがこの世界に入っていないと信じよう)
こめかみを軽く揉み解し、立ち上がりキッチンへと向かうと冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
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