第7話 リングフィット、毎日できるかな?
『腰を下げてぇ・・・・・・大きく伸ばして!!ヴィィィィィィクトリィィィィィィィィィィ!!!』
12畳ほどのリビングで、大柄?いやぽっちゃり?まぁ、なんにせよデカい男がテレビ画面を見つめている。
アサヒだった。
マコトと再会した日から遡ること1ヶ月前の5月。
西野アサヒ(28歳独身彼女なし)は、頭の上に掲げたリングをゆっくりと下ろしながら大きく息を吐いた。
「10分やっただけで、結構キッツイ・・・」
ユニクロのドライクルーネックTシャツがぐっしょりと濡れている。
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➡️『今日はここまでにする』
アサヒは、額に浮き出した汗をタオルで拭いながらコントローラーを操作してゲームを終了した。
リングにセットしていたジョイコンと、左足の太ももに巻き付けたレッグバンドのジョイコンを取り外すと、ゲーム機本体に取り付ける。
アサヒがプレイしていたのは、ニンテンドースイッチのリングフィットアドベンチャー。
<冒険しながらフィットネス>をテーマにしたゲームで、ソフトに付属するリングコンとレッグバンドにジョイコンを取り付けて体に装着。全身を動かして遊ぶフィットネスアドベンチャーゲームだ。
2019年10月の発売以降、販売本数1400万本を超えており、ニンテンドースイッチの累計販売本数ランキングでもトップ10に入る大ヒットゲームである。
日本だけでなく海外でもヒットして、テレビゲームは暴力を助長し健康に悪影響を与えると言った風潮に真っ向から対抗したゲームとして称賛を浴びた。
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ニンテンドースイッチ本体の電源ボタンを押すと、筐体をセットしたドック(本体を立てるやつ)のランプが、テレビ出力中を示すグリーンランプからオレンジランプに切り替わり、やがて消えた。
ちゃんと電源が切れたようだ。
テレビリモコンの『地上』と書かれたボタンを押すと、バラエティ番組に切り替わった。
最近また地上波に出るようになってきた筋肉芸人が出ている。
白のタンクトップにショート丈のデニム姿の芸人は、毒舌で知られるMCに何事かツッコまれていたが、意を決したように表情を変えると、右腕をグッと曲げて声を上げた。
「パ、、、パ、、、、パワ[ピッ] 」
テレビの電源を切ったアサヒはつぶやいた。
「風呂はいろ」
風呂場に向かったアサヒは、汗だくのシャツを洗濯機に放り込むと鏡に映った自分の体を見つめた。
「やっぱり、太ったなぁ・・・」
鏡に映っているのは、185センチの身長にして100キロ近い肉体だった。
でっぷりとしたお腹の肉がショートパンツの上に乗っていた。
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