第6話 再会ー4

「冗談はやめてよ。

 僕、昔から怪談とか苦手なの知ってるでしょ。

 夏のテレビのホラー特番でやりそうな話だけど。

 そうだ、ずっと前にスペシャル特番で見たよ?

 行方不明になった高校生が10年ぶりに帰ってきたけど、すぐいなくなったーとか」


「冗談でこんなこと言わんて」


 いつの間にか頼んでいたレモンサワーを飲みながらマコトが言う。


「現代の神隠しだ!なんて言ってさ。当時は結構マスコミもきて大変だったんだぜ。ほら、ダイちゃんイケメンだし、『地方の名家の御曹司、謎の失踪!』とか適当なこと書きやがって。ふざけんなよな。でも、ワイドショーとかでも取り上げられたりしたし、本当に覚えてない?」


「うん・・・。ごめん。

 多分その頃結構仕事忙しかった時期で、ほとんどテレビとか見てなかったんだ。

 ネットニュースは見てたんだけど、あまり記憶がないや」


「そか・・・うん。もういい時間か。そろそろ出るか?」


 なんとなく言葉少なになったことをきっかけに、二人は席を立つと会計して店を出た。


 買うものがあるから少し待っていてくれと言うと、マコトは先ほどのコンビニに入って行った。


「これ再会の記念ね!今日は付き合ってくれてありがと!」


 しばらくすると、一本のコカコーラを持って出てきた。


「今井酒店に来れば大体いつでもいるし。用事なくても連絡してくれよ。また飲もうぜ。今度は彼女も紹介したいし。あ、配達出てたらごめんな」


 電車で帰るからと改札をくぐるマコトを見送ったアサヒは、手に持ったコーラを見つめた。


「これ、ダイエットコーラじゃなくて、普通のコーラだ」


 今にも雨が降り出しそうな雲の下、少し急ぎ足で自宅マンションに向かって歩き始める。


「20分はかかるからなぁ・・・雨、降らないでくれたらいいんだけど」


 バスに乗ることも考えたが、今は一人何も考えずに歩きたかった。


 仲の良かった友人の行方がわからないという話は、衝撃的だった。


 結局、あと5分でマンション到着というところで降り出した大粒の雨のため、マンションの最寄りのコンビニで買わなくても良いビニール傘を買うことになった。


 マコトがくれたコカコーラを冷蔵庫に突っ込むと、シャワーを浴びてベッドに寝転んだ。

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