リングフィットをプレイしていると異世界転移した勇者が訪ねてくるんだが
Lemonade I scream
第1話 幕開き
おや?新しいお客さまですね。
ようこそ。いらっしゃいませ。
ご遠慮なさらず。
本日は新人の初舞台で、木戸銭は頂いておりません。
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少し手隙になったあなたが街を散策していると、胡散臭い客引きに声を掛けられた。
新人がデビューするのだが、客が入らずどうにも寂しい。
チケット代は無料だから良ければ見ていってくれ。
もちろん出入りは自由だから、好きにしてくれて構わない。
ウチは飲食OKだから、中の売店でドリンクの一つも買ってくれれば御の字だ。
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頑張る客引きに押し込まれたのは、大きな公演会場の一室だ。
チケットの受付でも入場料は求められなかった。
後ほどアンケートにご協力を、とだけ言われただけだ。
「どんとこい、どんとこい」と聞こえる太鼓の音が鳴っている。
一番太鼓で呼び込みをしているようだ。
会場は結構広くてキレイだ。
舞台に黒・橙・緑のストライプの幕が下りている。
あれは歌舞伎の幕ではなかっただろうか?
場内の人影は多くない。
なるほど客入りがまばらでは、演者も寂しいだろう。
詰まらなければ帰ればいい。
存外にゆったりしていて居心地の良い椅子に腰掛けた。
少しすると
「お多福来い来い、お多福来い来い、ステツク天天、ステツク天天」
と聞こえる太鼓の音が鳴り始めた。
二番太鼓だ。
そろそろ始まるらしい。
と、幕がゆっくり上がった。
めくり台に『檸檬亭』と書かれた紙札が掛かっているのが見える。
画数が多くて書いた人の苦労が偲ばれる。
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着物姿の男が一人、舞台袖から出てきて、舞台中央の座布団にちょこんと座った。
深々と一礼した後、ぐるっと会場を見渡す。
にっこり笑って話し出した。
お初にお目に掛かります。
檸檬亭寧度と申します。
いっぱいのお運び、誠にありがたく……と言いたいところですが、この人数では世辞を言っても怒られそうだ。
あの胡散臭い客引きに騙されて、押し込められたのでございましょう。
となると、今お集まりの皆様方は、よっぽどのお人好しか、勇者、というものでございますな。
ワタクシは昔からテレビゲームが大好きでして、ドラゴンクエストやらファイナルファンタジーやら色々手を出しました。
ポテトチップスを食べながらコーラ飲みつつゲームしてると、よく親に怒られたもんです。
昨今は、異世界モノというジャンルが大流行りで、誰も彼も簡単に勇者になれる時代となりましたが、人様のお宅に押し入って箪笥を開けたり壺を割ったり狼藉を働く者は、勇者ではなくて盗賊というのではないかと思うんですがねえ。
本日は、そんな勇者のお話でございます。
宜しければ、しばしお付き合いくださいませ。
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