第31話 マコトとジンと惣三郎とー2
「この刀はね、ジンくんの言うとおり、妖刀だよ。
宮神の当主は代々この刀を封印してきたんだ。
とは言っても、当主が変わるときに先代から古い巻物を見せられて、
『屋敷や蔵を、取り壊したり動かしたりしてはいけない。
庭の木や池や灯籠の配置を大きく変えて、景観を崩すような事があってはならない。
蔵にこんな刀がしまってある筈だけど、絶対に宮神家から出してはいけない』
と、言いつけられるだけなんだよ。
私も当主になったばかりの時、蔵を総浚いして探したんだが見つからなかった。
実際、私は君たちが見つけるまで、ただの伝承だと思っていたくらいだ」
「やっぱ大切な物だったんすよね?折っちゃったの、マジですいませんでした。弁償とかいくらかかるかわかんないっすけど、用意を・・・」
マコトが慌てて立ち上がり頭を下げる。
「いや!逆だよ!呪いの刀をぶっ壊してくれたんだ。感謝しかしてないよ!」
「やったのは、やはりアサヒさんでしょうね」
「マコトくん、ジンくん。
私はね、三男だ。
でも、宮神家の当主をやっている。
宮神家の家系は、代々、短命の傾向があってね・・・。
特に女の子は成人年齢まで生きられないって言われてきた。
実際、幼い頃の綾子は病弱で、何度も病院に通っていたよ。
だけど、ウチの綾子は幼稚園の頃から元気になって、もう24だ」
「・・・よろしければ一度お宅にお伺いして、霊視いたしますよ」
「そうだね。ぜひお願いしようか。
なので私はアサヒくんに非常に感謝しているし、悪戯を思いついたマコトくんにも非常に感謝しているんだよ。
で、私は何をしたらいい?」
マコトはソファに沈みこんだ。
ジンが引き継ぐ。
「あのマンションを今の所有者から買い上げてください。
変な気まぐれでも起こされたらどうにもなりません。
そして賃貸マンションのままにしてください。
住民の移動に制限を設ける必要はありません。
住民が引っ越したいなら普通に対応してあげてください。
ただ退去させたり、関係者を送り込んだりするのはやめてください。
外部からの圧力で環境を変えないことが必要です」
「わかった。任せておきなさい。すぐに動こう」
「おじさん、相場より少し高いくらいならいいけど、札束で殴ったらアウトっす。多分圧力って扱いになる。あと、アッちゃんには内緒っすよ」
「わ、わかっているよ。任せなさいってば」
******
1ヶ月後、アサヒの元に「マンション管理会社変更のお知らせ」というハガキが届いた。
不具合が起こった際の緊急連絡先の電話番号が変わっただけで、契約内容はそのままだった。
とりあえず冷蔵庫にマグネットで貼り付けて、いつしか忘れた。
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