第64話 勇者の帰還ー5
「あのぅ、すいません・・・」
カーテンの間から、早朝だというのに既に強い夏の日差しが差し込んだ。
寝室とリビングの間のスライドドアが少し開き、ベッドを伺う不審者の顔が出てきた。
寝室内には衣類が散乱していた。
うんうん。よきかなよきかな。
「ごめんくださぁい」
少し、声が大きくなった。
流石に寝室に入る勇気はないようだ。
「誠に恐れ入りますが、お時間いただいてもよろしいでしょうかぁ」
お前はどっかの訪問販売か。
「誰!!」
綾子が起きた。
******
「にいさん、サイテー。
本当、もう、近寄らないで」
「いや、ごめん。ほんと、こんなことになるなんて思いもしなくて」
「ダイちゃん・・・。もう少し、うん、タイミングっていうものを・・・」
「なんで!せっかく帰ってきたのに!」
大介は、泣いた。
帰ってきた歓喜の涙だね。良かったね。
******
帰ってきた大介は、宝石を散りばめた王冠をかぶり、金糸・銀糸で織り成され宝石が埋め込まれた非常に豪奢な分厚いマントを身に纏っていた。
髭はない。王様だったらヒゲ生やせよ。
ヘアスタイルもミディアムくらいの長さのウルフマッシュに切り揃えられてるが、少し乱れている。
無造作に整えた感じではない。バタバタしていて気が回らなかったのだろうか。
なぜか、上半身裸だ。一応ズボンは履いている。
サンタクロースが持っているようなドデカい白いフクロが、リビングの真ん中に鎮座していた。
人間が2〜3人は余裕で入りそうなサイズの袋が、パンパンに膨らんでいる。
「とりあえず、着替え、借りていい?」
*******
部屋に来てから勝手にお湯張りボタンを押していたらしい。
アサヒのTシャツとハーフパンツ、まだ買ったまま開けていなかったボクサーパンツを受け取ると『お風呂が沸きました』という音声に、おっふろ!おっふろ!とスキップしながら去っていった。
残された二人は、顔を見合わせて、あ、なんか顔赤くしてる。
ちょっと照れて、それぞれ、宮神家とマコトとジンに電話した。
朝5時だ。迷惑を考えろ。
海の日で良かったな。
ジンは、どこか遠方に出ているようでなかなか連絡がつかなかった。
それでも、8時には全員がアサヒのマンションに集まった。
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