第57話 勇者は今も戦っているんだろうなぁ

 うす暗い部屋の一室、モコモコしたピンクのルームウェアに身を包んだ女性が、ソファの上で体育座りをしている。


 シャワーから上がったスウェット姿のマコトが、部屋の電気をつけて女性の隣に座った。

 メガネはテーブルに置いてある。


「ハルカ。どうしたの?」


「マコ〜ごめん〜。

 大事なお友達なのに、緊張してて、よくわかんないこと、いっぱい言っちゃった〜」


「アッちゃんなら、全然気にしてないよ。楽しかったって言ってたじゃん」


 ハルカを引き寄せて自分の膝に頭を乗せてやる。

 そのまま髪の毛に手をあてて、ゆっくりと撫でていく。


 あ、ハルカが着ている服の真ん中にコック帽をかぶったカービィがフルーツと一緒にいる。

 GUコラボのマシュマロフィールラウンジセットか。

 結構早くに完売したはずだが、この女、並んだのか。


「ハルカはよく頑張ったね。えらいね。明日からお休みだからゆっくり休もうね」


「大丈夫かなぁ。怖いって思われてないかなぁ。嫌われてないかなぁ」


「大丈夫だよー。ハルカのクールは戦闘コスプレだもんだなー」


「うん。強くてかっこいい女の子になるの」


「大丈夫だよー。ハルカは可愛いなー」


「好き?」


「うん。大好きー」


 ハルカは起き上がると、マコトの顔を見た。

 テーブルのメガネを手にするとマコトにかけさせる。


「これの方が好き」


 キスをして、にへにへ笑った。


 ******


 ベッドにハルカを寝かしつけたマコトは、電気を消したリビングでソファにかけて動画を見始めた。


(アッちゃんが誤魔化してくれて、助かった。

 多分、あの部屋に行って、アレの影響を直接受けると、思考の干渉を受けるんだ。

 ハルカは結構動画を見てしまったけど、問題なさそうだ。

 それに対して俺もアッちゃんも、色々なことに疑問を抱けなくなってきてる。

 ジンさんは手を尽くしてくれてるけど、厳しいのか)


 グラスに注いだ水を飲む。


(ダイちゃんは、いつまで戦えば良いんだろうか)


「ダイちゃんが帰ってくるまでは、ハルカをアッちゃんにあまり会わせたくないな・・・」


 ノートパソコンをとじ、ソファから立ち上がると、寝室へのドアを開けた。

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