第24話 嗤う者、怒る者

 突然乱入してきたビジャルのおかげで難を逃れた総司は地面に付した状態で顔を上げる。


「ビジャル、さん」


「さんは要らねぇって言ったろうが。それにしても、酷い有様だなぁ、こんな小僧相手に苦戦している様じゃまだまだだな。ま、新人にしては良くもった方か。ライラもソウジのお守で大変だな?」


「うる、せぇよ」


 総司とライラの二人掛かりで挑んで返り討ちにあった相手に対して、小僧呼ばわりをしたビジャルは改めてベヤドルに目を向ける。


「・・・・・・お前も、つまらねぇことに手を出しやがって。ファムが聞いたら泣くぞ?あんないい女を悲しませるとはロクでもない小僧だな」


「女遊びばかりしているお前に言われる筋合いはない」


「俺は女を大事にしてんだ、泣かせるなんて論外だな。それに、お前に言われたくないってのは俺のセリフだ」


「・・・・・何が言いたい?」


「お前、ミタリーを売ったな?」


「ミタリーを、売った?」


 総司の脳裏にベヤドルとファムの二人と一緒にいた女性が浮かび上がる。


「ここに来る前、テントの外でお前のクランの男連中がミタリーをひん剥いてやがるのを見つけてな、ぶっ飛ばした」


「チッ、使えない奴らが・・・・・・」


「自分に協力する代わりにミタリーを好きにしていいとでも言ったんだろ?仲間の女を売るとはなぁ・・・・・見損なったぜベヤドルよぉ?」


「それがどうした?」


 蔑んだ目を向けられても、ベヤドルに動揺はない。


「俺は目的のためにやっただけだ。それに、仲間だなんて思ってもないっ!!」


 力強く断言したベヤドルは、言った瞬間に床を蹴ってビジャルに突撃を掛ける。


「そうかい」


 放たれた刺突をビジャルは焦ることなく、剣を握った右手一本で弾いてみせる。


「そいつは、残念だっ!」


 弾いた反動を利用して今度はビジャルが切りかかる。それを引き戻した槍の腹で防ぐが、すぐさまビジャルは次の斬撃をベヤドルに見舞う。


「俺はな、女を泣かすような奴には容赦しねぇって決めてんだよ!」


 一撃、二撃と斬撃を放つたびに速度を増していくビジャルの攻撃にさしものベヤドルも対応が遅れ始め、その体に細かい傷が生まれる。


「例えそれが、弟子であったとしてもなっ!!」


「ぐっ!」


 怒涛の連撃に攻めることが出来ず、ベヤドルは防御の姿勢にならざるおえない。


「すげぇ・・・・・」


 未だに起き上がれない総司は、倒れたまま二人の戦いを見守っていた。


(ベヤドルに攻撃をさせない様に懐に潜り込んでる)


 槍はその特性上、リーチが長い分懐に入られた時隙が大きい。総司とライラもそれを理解した上でベヤドルに挑んだが、ベヤドルの技量はそれを十分カバーできるだけの技術を持っていた。

 だから、総司は理解している。ベヤドルの懐に入り込むことがいかに難しい事なのかを。


(それをこうもあっさりやってのけるなんて・・・・・)


 ベヤドルの技量もそうだが、それを難なく上回るビジャルの実力に舌を巻く。


「くっ!」


 防戦一方なベヤドルは自分が不利と見るや、わざと体当たりをするようにビジャルに接近、それを当然の様にビジャルは弾き、弾かれた反動を利用してベヤドルは後ろに大きく後退して距離を取る。


「諦めろ。お前に勝ち目はねえよ」


 見逃してやるつもりはないと宣言するビジャルに対し、ベヤドルは不敵な笑みを浮かべた。


「・・・・・・何を考えているかは知らんが、止めとけ。無駄な足掻きだ」


 ビジャルの忠告を無視するかの様にベヤドルは槍を構える。


「勝ち目がないのは、あんたの方だよ。ビジャル」


 ベヤドルが闘気を解放すると、ベヤドルの持つ槍が闘気に反応を示した。今まで普通の鋼の刃が黒く染まったのだ。


「ハァッ!!」


 槍が届くことのない距離から槍を突き出す。距離が開いている状態でそんな行為は何の意味もない、はずだったが―――――


『!!』


 しかし、総司とライラの予想を裏切る光景が展開された。

 槍が伸びた。

 正確には槍の穂先から闘気の刃が伸びたのだ。

 高速で迫る闘気の刃はしかし、ビジャルは身を捻る事であっさりと回避してみせる。


「その程度で俺が倒せるとでも?」


「フッ」


 必殺の一撃を回避されたにも関わらず、ベヤドルは笑う。まるで、罠にかかった獲物を嘲笑うかのように。

 ビジャルは構うことなくベヤドルに踏み込んでいく。それを見たベヤドルは槍を持つ手を軽く捻る。変化は直ぐに訪れた。


「っ!ビジャルッ!!」


 ビジャルの脇から鮮血が噴き出す。


「なっ!?」


 倒れそうになる身体を何とか踏みとどめる。左手で脇に触れるとその手にべったりと血が付着する。


「ベヤドル・・・・・何をした?」


「フッ」


 総司とライラは目撃していた。避けたはずのベヤドルの攻撃が反転して、ビジャルを襲ったのを。

 ビジャルは後ろから迫る攻撃をマナ感知で察知し、身体を捻って回避を試みたが、不意の一撃はビジャルに傷を負わせた。


「・・・・・・何時も使っているハルバートを持っていないから妙だとは思ったが、お前の持ってるその槍、アーティファクトか」


「正解だ」


 ベヤドルは見せつける様に槍を掲げてみせる。

 その槍は刃が漆黒の様に黒く染まり、その刃には幾何学な赤い紋章が浮かんでいた。


「こいつの名はペネトレイター。見ての通り、俺の意志で刃を変化させることが出来る。けど、それだけじゃないぜ?」


 再びペネトレイターを構える。


「こういうことも出来るっ!」


 ペネトレイターを連続で突き出す。すると、穂先から闘気の刃がまるでライラが使う裂空斬の様にビジャルに向けて飛んでいく。その数、六。


「チッ!」


 額に脂汗を浮かべながらビジャルは迫りくる斬撃を身を捻って避け、時に剣で叩き落として避けていく。


「オラオラ!まだまだいくぞ!!」


 ベヤドルは立て続けにペネトレイターを突き出し、同じように攻撃を仕掛ける。ビジャルはそれを何とか回避していくが、避けるたびに負傷した脇腹から血が流れる。


「クソがっ!」


 脂汗を流しながらギリギリを躱していくが、思ったよりも傷が深く、流れる血が徐々にビジャルの体力と気力を奪って行く。ビジャルの身体にも徐々に傷が増えていく。


「こいつはどうだっ?!」


 刺突を飛ばした瞬間に、今度は槍を横薙ぎに振るい穂先がそれに応える様に伸びる。

 飛んでくる刺突と伸びた穂先の両方がビジャルを襲う。


「こいつっ!」


 刺突を回避した直後を狙うように襲い掛かってきた横薙ぎの攻撃に対し、ビジャルは直撃の寸前剣を滑り込ませて防御するあたり流石と言える。が、桁違いの威力に対処できずビジャルは吹き飛ばされて壁を突き破る勢いで激突する。


「ぐわぁぁぁぁ!!」


 壁を突き崩すして激突したビジャルはそのままぐったりと倒れる。


「ビジャルっ!!」


 ライラが叫ぶも、ビジャルからの反応はない。


「ハハッ!どうだよ師匠!!アーティファクトを持たないアンタには出来ない芸当だろ?」


 ビジャルが起き上がらないことに勝ち誇ったようにベヤドルは笑う。


「くっ!」


 ライラはビジャルとベヤドルが交戦している間に戻した少ない体力を振り絞って立ち上がると剣を構える。しかし、ダメージは未だに身体を蝕み、もはや立っているのがやっとと言った状態だ。

 総司も続くようになんとか立ち上がって構えるが、ライラよりも酷い有様だ。

 立ち上がり構える二人をフッとベヤドルは鼻で笑う。


「そんな状態で何が出来る?お前たちも見ていただろう?このペネトレイターの力を。ペネトレイター、いや、アーティファクトを持っているかいないかでこれだけの差が出るんだ。今の俺に対してお前達じゃ万に一つも勝ち目なんてないぜ?」


「黙れよ。そんなのやってみないと分からないだろうが」


 ライラは気力を振り絞る様にして剣を構える。


「ああ、そう言えばお前が持ってるのもアーティファクトだったな」


 ベヤドルがライラの持つティソーナを見て薄ら笑いを浮かべる。


「クロードが使っていた時はかなりの威力を出していたみたいだが、どうやら使いこなせていないみたいだな」


 その指摘にライラの表情が歪む。


「図星か。まあ、そうだよな。アーティファクトは扱いが難しく、誰でも気軽に使えるものじゃない。物によっては適合した奴しか使えない物もあるぐらいだしな。そう考えると、その剣もその類か」


 ベヤドルの指摘は当たっていた。

 アーティファクトは扱いが難しく、使い手を選ぶ。ベヤドルも言った通りそのアーティファクトの適性がないと使えない場合もある。

 ベヤドルが指摘した通り、クロードが扱っていたティソーナも適正者でないと本来の力を引き出すことが出来ない。

 ゴブリン討伐時において、ライラがティソーナの力を引き出そうとして不発に終わったのはそれが原因だ。


「ライラじゃその剣は扱えない。クロードの様に適性が無いんじゃ意味がない。ククッ、残念だったな、せっかく手に入れたアーティファクトが使い物にならなくて」


「うるせぇ!」


「しかし・・・・・・」


 クロードの事を思い出してベヤドルの顔が見下したように歪む。


「クロードも馬鹿だよな、デップ程度の奴に殺されるなんて」


「・・・・・どういう事だ?」


 まるでデップの事を知っているかのような発言に総司は疑問を口にする。


「まあ、どうせここで死ぬんだ。冥土の土産に教えてやるよ。デップ達赤蜘蛛に奴隷になりそうな連中を集めるよう指示を出していたのは、俺だ」


『!!』


「デップを一度俺が捕らえたことがあったのさ。その時にある契約をした。『俺の指示に従えば逃してやる』ってな。それ以降、奴隷を集めるのに連中を使ってやったのさ。ま、その内討伐隊が組まれることは予想していたがな」


「じゃあ、クロードが赤蜘蛛を追いかけていたことも・・・・・」


「ああ、俺が情報を渡した」


 ベヤドルから語られた真実に、総司とライラは呆然とする。


「まあ、その内デップは切ろうと思っていたから都合がよかったしな・・・・・クロードも目障りだったし、両方消えてくれて大助かりだ。くくっ」


「お、前・・・・・!」


 怒りに顔を染めたライラの手がティソーナを強く握りしめる。


「クロードと言えば、アイツは本当に馬鹿だよなぁ、神器なんて夢物語を信じてハンターやってるなんて、まるでガキじゃないか。たまたまアーティファクトを手に入れたもんだから調子に乗ってありもしないモノに夢を見たのか?本当に馬鹿だよなぁ」


「だま・・・れ・・・・・・」


「挙句の果てに肝心のアーティファクトを持たないでデップとやり合って死んじまうなんてっ!これが笑えずにいられるか?いや、無理だな!!ははっ!なあ、ソウジ。お前クロードの最後を見てたんだろ?クロードはどんな風に死んだ?泣いてたか?怖がってたか?なあ、教えてくれよ、バカな夢見て死んでいったあの間抜けの最後をさぁ!!」


 ベヤドルの言葉にライラは怒り震えた。


「黙――――――」


「黙れぇぇぇぇぇぇ!!!!」


『っ!!』


 総司の怒号が地下の空間に木霊した。


 その身に総司の蒼い闘気と、禍々しい漆黒の闘気を噴き出しながら。





  ♢        ♢         ♢




 ――――――――そうだ、いいぞ


 意識が混濁していく。まるで自分の意識とは別の何かに意識が侵食されていくかのようだ。


 ――――――――もっとだ、もっと怒れ


 頭の中で誰かの声が響く。


 ――――――――そして


 体の底から得体のしれない力が際限なく溢れ出してくる。


 ――――――――奴を殺してしまえ


 その声に背中を押されるように、俺は一歩足を踏み出す。


「・・・・・・馬鹿な夢、だと?」


 俺の声に反応してか、ベヤドルの顔がビクリと引きつる。


「お前に・・・・・お前の様なクズに、クロードの何が分かる?」


 ベヤドルのその顔を見ていると、先程ベヤドルが言った暴言が何度も頭に蘇る。


「クロードは本気だった・・・・・本気で夢を追いかけてたんだ・・・・・・それを、お前はっ!」


 俺は知ってる。どれだけクロードが本気だったかを。どんな気持ちで俺に夢を語ってくれたのかも。

 何処までも純粋に夢を語っていたクロードを知りもしないで、好き勝手言いやがってっ!


「お前・・・・・・」


 ライラの声が耳に届くが、今の俺にはそれに返事をしていられるほど余裕はない。

 この怒りを、コノ殺意を、目の前のコノ男ニブチマケタイ。


「本気で何かを成そうと必死になっている人間を、お前の様なクズが・・・・・・笑ってんじゃねえぇぇぇぇ!!!」


 床を踏み抜く勢いで足を前に出す。


「なっ!」


 床が爆発する様な音と共にベヤドルに向けて接近。一瞬の後には驚愕に顔を歪めるベヤドルが、目の前にあった。


「オオォォォォォォォォ!!!」


 驚愕するベヤドルにかまわず、俺は右拳にありったけの力を籠めて突き出す。

 ベヤドルはそれを見て強引にペネトレイターを拳と自身の間に割り込ませ防御の姿勢を取る。


(かまうものか、防御ごと貫くっ!!)


 俺は槍ごとベヤドルを貫くつもりでそのまま拳を放つ。

 ガンッ!と、凄まじい音と共に拳がペネトレイターにぶつかる。

 一瞬拳の勢いが止まるが、俺が更に拳に力を入れるとベヤドルの防御の姿勢が崩れる。


「アァァァァァァ!!」


 その隙を逃すことなく更に一歩踏むだし左の拳を握り、ベヤドルの胴体に向けて放つ。

 直撃。


「があぁぁぁぁぁ!!」


 腹に拳を受けたベヤドルはそのまま先程のビジャルの様に壁を突き抜ける勢いで壁に激突する。


「かはっ!」


 口から血を吐き出しながら、ベヤドルは無理やり身体を起こそうとするが、上手くいかないのか、悪戦苦闘している。


「ば、バカな・・・・・かはっ・・・・・・そ、ソウジ、お前、一体・・・・・・」


 一体何が起きたのか理解できないと言いたげな目を向けてくるが、生憎、俺も何が起きているのか理解していない。

 今俺が理解しているのは、このどうしようもない怒りをベヤドルにぶつけたい。いや・・・・・・


 ―――――――――殺せ


「っ!!」


 ハッと息を飲む。


(俺は今、何を考えた?)


 意識した瞬間、頭が急速に冷えていくのを自覚する。

 冷めた頭で今俺がしたことを思い出す。


(何、やってんだ、俺?)


 目の前に起き上がろうともがくベヤドル。呆然と俺を見るライラ。


(また、俺は・・・・・)


 あの日、ノザル村の教会で起きた光景が脳裏に蘇る。


(俺はまた、同じことをっ!)


 ――――――――何をやっている。とどめを刺せ


「ぐっ!」


 唐突に頭が割れるような痛みが走ったかと思ったら、身体が勝手に倒れたベヤドルに向けて歩き出そうと足が動く。


(か、身体がっ!)


 ―――――――――躊躇するな、殺せ


(オグマっ、お前か!!)


 勝手に動こうとする身体を必死に押しとどめようとするが、上手くいかず徐々にその足が倒れたベヤドルへと向かう。


 ―――――――――憎いのだろ?なら、殺してしまえばいい


 頭の中で声が響く。殺せと何度も囁いてくる。


「ふ・・・・・け・・・・・・・」


 手に、足に、頭に、あの時俺が人を殺した時の感触と記憶が蘇る。

 肉を抉る様な感触が、骨を砕く感触が、涙を流しながら命乞いをする姿が、全身から血を噴き出しながら倒れていく姿が。


「ふざ・・・・・・け・・・・・・・なっ!」


 また同じことをするのか?

 いや、ダメだ!!


(同じことを繰り返さないために強くなろうって決めたんだ!)


「アアァァァァァァァァァ!!!!!」


 抗うようにありったけの力を籠めて咆哮する。それと同時に全身から闘気が爆発するように噴き出す。

 やがて勢いが弱まると、身体から力が抜けて膝が崩れ落ちる。




         ♢       ♢        ♢  




 総司の咆哮が上がり、それと同時に噴き出していた闘気が勢いを無くし、やがて霧散する。それと同時に総司が膝から崩れ落ちる様にして倒れる。


「っ!」


「!待ちやがれ!」


 それをチャンスと思ったのか、ベヤドルは力を振り絞って立ち上がると、ペネトレイターを片手に一気に水路に繋がる扉の奥へと駆け出していく。

 ライラは慌ててそれを止めようとしたが、視界に倒れた総司が映るとその足を止める。


「・・・・・・チッ、クソが」


 悪態をつきながら倒れた総司の下に向かい身体を抱き起す。


「気を失ってるだけか」


 抱き起した総司は呼吸も穏やかで、ただ眠っているように見えた。


「・・・・・・アレは、何だったんだ?」


 先程総司が見せた事を思い出して思わずつぶやく。


「お前は一体、何なんだ?」


 ライラの問いに対し、総司は目を開けることはない。

 モヤモヤする気持ちを抱えながら、さてこれからどうするかと考えていると、後ろからガラリと物音が響いた。

 慌てて音のした方に振り向くと、ビジャルが崩れた壁から起き上がってくるところだった。


「何だよ、ビビらせるなよな」


「イテテ・・・・・・随分な挨拶だなオイ」


 ヨロヨロとした足取りでライラと総司の下に歩み寄ったビジャルは、そこで辺りを見渡し口を開く。


「ベヤドルは?」


「逃げたよ。追いかけたいところだけど、こいつをこのままにしておくわけにもいかないからな」


「そうか」


 ビジャルは二人の状態を目で見て確認する。


(ボロボロだな。これじゃ戦闘は無理そうだ)


 素早く判断したビジャルは腰に下げたポーチを漁ると、紫色の液体が入った瓶を二本取り出しライラに渡す。


「飲んどけ。少しはマシになる」


「スタミナポーションか、よく無事に残ってたな」


「それが最後だ。残りは全部割れちまったよ」


 ビジャルが渡したのは体力を回復させるためのスタミナポーション。ハンターの必須アイテムだ。

 その効果は魔術による治療よりも効果は劣るものの、即席の回復薬としてハンター達の間では重宝されている。

 ライラにスタミナポーションを渡すと、ビジャルも自分用に残しておいた最後の一本を飲みほし、その足を水路に繋がる扉へと向ける。


「どうするつもりだ?」


「決まってんだろ、アイツを追いかける」


「その体で勝てるのかよ?」


「勝てる勝てないじゃねぇ、勝つんだよ。それにアイツは間違っても俺の弟子だ。弟子の不始末は師匠である俺がケジメをつけるのがスジってもんだ」


 そう言い残してビジャルは扉の先に消えていく。

 残されたライラは追いかけることはせずその場にとどまった。

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