第12話 埃とマナ

 オベールさんに連れられて場所を執務室へ。

 ローテーブルを挟んでソファーに座り、オベールさんの入れてくれたお茶を飲みながら、オベールさんの話に耳を傾ける。


「では、講義を始めよう。と言ってもそこまで大した話じゃない。基礎的な事になるからそのつもりで」


「はい」


「まず最初にソウジ君に質問するが、連携に必要な事は何だと思う?」


 その質問に俺は頭の中で自分が思いつくことを整理してから答える。


「・・・・・・周りを見る目、とかですかね」


 周りをよく観察し手入れば、相手の動きに合わせてこちらも動くことが出来る。連携を取るならこれが第一だと考えた。


「うむ、確かにそれは大事だ。では、それをする為にはどうするべきだと思うかね?」


「え~と・・・・・・・・」


 周りをよく見て行動する、としか言えないのだが、オベールさんはそんな誰でも考えるようなことは求めていないはずだ。

 悩んでいるとオベールさんが先に口を開いた。


「少しヒントを出そう。ソウジ君、想像してみてくれ。自分が闘いながら、例えば今回のゴブリン退治の様な状況が起きたとして、君が言った事をやろうとした時を」


 言われて頭の中で想像する。もしもあの時、周りを見ながら戦うとして・・・・・・・


「・・・・・・無理、ですね」


「何故だね?」


「もしも、あの時と同じ状況でそれをやったとしても、たぶん、俺では対処できません」


 それ以前の話で、あの場では俺とライラの二人だけ、対して相手の数は二十匹以上。そんな中で戦っている上に、二人共離れて戦っていた。

 仮に近い距離で一緒に戦っていたとしても、答えは一緒。周りを見るなんて無理だ。


「一斉に襲い掛かられて、周りを見る余裕なんてありませんでした」


 例えばの話、友達と二人で歩いていた時に大勢の不良に絡まれて殴り合いの喧嘩になるとする。一人一人なら勝てるが、複数人で襲い掛かられて、果たして冷静に周りの状況を窺いながら立ち回れるか。答えは、ノーだ。

 アニメや漫画ではよく『冷静に状況を見て判断しろ』なんて台詞を聞くが、あれは無理だ。登場人物の能力にもよるだろうが、所詮は作られた設定だ。それが出来る能力があるから出来るのだ。

 しかし、現実にいる普通の人間には無理だ。

 だってそうだろ?普通に考えたら自分に降りかかる脅威をはねのけるのに必死で、周りを見ることなど出来ない。

 それが出来るのは、団体戦のスポーツ選手か自衛隊や軍に所属している兵隊などの、訓練を重ねた人達だけだ。

 もしも「そんなことも出来ないの?」と言って笑う奴は、人を見下すことを喜びとする嫌な奴か、本物の天才だけだ。

 残念ながら、俺は天才ではない。凡人だ。それはこの世界、いや、前世の時から分かっていることだ。


「うむ、君の言っていることは正しいよソウジ君」


 オベールさんもこの考えは正しいと認める。

 その上で―――――


「だが、方法が無い訳ではない」


 アッサリと答えを提示してみせる。


「それは、どういった方法で・・・・・・」


 俺が答えを求める様に聞くと、オベールさんはおもむろにソファーから立ち上がり、壁際にある戸棚に移動して中から小さな木箱を取り出した。

 それを持ってソファーに再び座ると、ローテーブルに木箱を置いて蓋を開ける。


「それは?」


「なに、ちょっとしたボードゲームというやつさ」


 そう言って取り出したのは、巻物。紐を解いてテーブルの上に広げられたそれには、森に平原、丘などが描かれている。更に碁盤の様な線が引かれていた。


(まるでシミュレーションゲームの戦略マップみたいだ)


 続いてオベールさんが箱から取り出したのは人の形をした赤と青の小さな二体の人形。それを丁度真ん中に描かれている平原に、少し離した状態で二体置く。

 更にオベールさんはその人形の一体に黄色の人形を複数体、囲む様に配置する。同じようにもう一体の方も囲む様に設置する。

 まさか今からこれで遊ぶのか?と、困惑しているとオベールさんは意地の悪い笑みを浮かべる。


「別にこれで遊ぶわけではないよ?説明するのに駒を使うだけだ」


「そ、そうですか」


 いきなりボードゲーム何て言うものだから、本当に遊ぶのかと思った。

 まあ、ちょっと面白そうだから遊んでみたい気もするけど。

 等と考えたのが顔に出ていたのか、オベールさんの目が獲物を見つけたように鋭く光る。


「もし興味があるのなら、遊び方を教えるよ?実はこれが中々奥が深くてね?私が若い時からあるのだが、今でもシリーズが発売されていて、更に内容が奥深くなっていってね。ざっくりな説明になるが、互いの駒を取り合うゲームなんだが、駒にも強さや役職なんかがあってね?この駒なんか―――――」


「あ、あのっ!遊び方はま時間が空いた時に教えてもらえれば・・・・・・」


「そうかね?なら、また時間が空いた時にでも」


 若干残念そうな顔をするオベールさん。もしかしなくても、オベールさんこのゲームのファンなんだな。

 これ、俺が止めなかったら延々話続けてたやつだ。止めてよかった。


「オホン。では、改めて。この駒を使って説明しよう」


「お願いします」


 オベールさんの顔が真面目なものになる。俺は姿勢を正してオベールさんの話に耳を傾ける。


「この青いのがソウジ君。赤をライラとしよう。そして、周りの駒がゴブリンだ。ソウジ君の話では、ゴブリンシャーマンを倒した後、この様な状況だったんだね?」


「はい」


 俺の答えにオベールさんは頷きを一つ。


「二人はそれぞれ離れて戦っていた。しかも敵に囲まれた状況で。言ってしまえば孤立状態だったわけだ」


 あの時はライラが複数体を相手に戦って、俺は確実に一匹ずつ仕留めてたんだよな。まあ、結局囲まれたんだけど。


「ライラは複数相手に立ち回っていた。しかし、ソウジ君はそれが出来なかった。この違いはソウジ君も言っていた通り、周囲の状況把握が出来ているか、いないかだ」


 ゴブリンシャーマンを倒して統率が取れなくなったゴブリン達はがむしゃらに攻撃を仕掛けてきた。

 ライラはそれを軽やかに相手取り、俺は苦戦。

 挙句、合流できても足を引っ張る始末。


「ではなぜ、ライラに出来て、ソウジ君は出来なかったか、分かるかい?」


 オベールさんに言われて考えてみるが、思い浮かばない。それでも思考すると、出てきたのは経験の差?と出てきた。

 それをそのままオベールさんに応えると、苦笑いが返ってきた。


「正解、とは言えないな。半分正解、と言ったところか」


「半分、ですか?」


「うむ。確かに、君とライラとでは戦闘の経験値が違う。それはライラが君よりも色々な経験を積んでいる事でもあるわけだが、もっと根本的な違いがある」


「それは?」


「マナの感知だ」


 マナの?それは言ったいどお言うことだ?


「正確にはその場のマナの流れを読んだんだ。ソウジ君、クロードからマナとは何か教えてもらっているかい?」


「ええ、一応」


 クロードの教えでは、マナとは自然界に満ちる力の粒子みたいなもので、それを取り込むことで闘気や魔力に変換して力を行使する。

 マナは自然界だけではなく、実は俺達の体の中、魂の根源はマナである、とも言われている。これに関しては諸説あるらしく、はっきりとした事は未だに分かっていないらしい。

 一つ確かな事が言えるとするなら、俺達の中にもマナがある、と言う事実だけ。

 余談だが、闘気を発する時に出るオーラの様な物。あのオーラの色は人それぞれ違う色を持つ。俺なら青、ライラは赤と違いがある。

 クロード曰く、オーラの色は魂の色を現しているらしい。これも諸説あるらしいのだが、一般的にはこの説が一番認知されている、と話が逸れたな。

 俺はオベールさんにクロードから教わった事を思い出しながら答えた。


「うん、クロードはちゃんと教えているようだな。ではソウジ君、君はマナが視えるかい?」


「いえ、視ることは出来ません。意識を集中して、何となくそこにマナがあるって感じで」


「それが普通だね。まあ、たまに持って生まれた能力でマナを視覚的に視る事の出来る眼を持つ者もいるが、今はそれは置いておこう」


 そう言えばクロードが言っていたな。普通は見えないマナを視ることが出来る人がいるって。


「ここで問題なのが、そのマナの感知だ」


 そう言ってオベールさんは青い駒の周りに配置されている黄色い駒を二つ掴む。


「例えば―――――」


 青い駒の正面に黄色い駒を一つ置く。続いてもう一つの黄色い駒を一マス空けて青い駒の後ろに置く。


「ソウジ君が正面から来た敵の相手をしていたとする。その最中に後ろか別の敵が襲い掛かる。しかし、ソウジ君は目の前の敵に気を取られているために、後ろから来た敵を認識できないでいる。そうなると――――」


 後ろの黄色い駒を一マス進めて青い駒の真後ろに付ける。


「当然、攻撃を受けてやられる」


 前後を挟まれた青い駒を取り除く。


「本来ならこうなる。が、マナの感知が正確に出来る者は違う」


 再び駒をさっきと同じ位置に戻す。


「さっきソウジ君が言った通り、マナは何処にでもある。当然この部屋の中にもね。そうだな・・・・・例えば、この部屋の中に漂っているマナを埃としよう」


 その例えはどうなのよ。


「私がこうして腕を振った場合、埃はどう言った動き方をする?」


 そう言ってオベールさんは腕を横に軽く振るう。


「それは当然、腕の動きに合わせて埃が・・・・・あ」


 俺のその反応を見てオベールさんは微笑を浮かべる。


「そう、腕の動きに合わせて埃が舞うように、マナも動くのだよ。といってもこれは少々大げさな例えで、実際は微弱な揺らぎの様なものなのだがね」


「つまり、その揺らぎを感知することで・・・・・・」


「相手の行動を読むことが出来る」


 なるほどそう言うことか。

 オベールさんは再び駒を掴む。


「揺らぎを感知出来れば、こうして背後から近づかれても、それを察知して迎撃できる」


 青い駒の後ろに空いている一マスに青い駒を移動させて、後ろに置いていた黄色の駒を取り除く。


「そして、改めて前の敵を倒す」


 青い駒を元いたマスに戻し、今度は正面に置かれていた黄色の駒を取り除く。


「こうして数の差で負けていても、確実に仕留めていけるし、この隙に仲間と合流することも出来る」


 青い駒を赤い駒の隣りのマスに置く。


「そして、協力して戦う時は同じ要領で、今度は味方の動きも読み取る。そうすれば今味方はどの位置にいるのか分かる。つまり、ソウジ君がやらかしたように、ライラにぶつかったりしなくなるわけだ」


 つまり、あの時ライラはこの技術を使って立ち回っていた。

 そこに空気を読めずに合流した俺が、考えなしに動いたせいでライラは俺の動きを予測できず、結果あんな失態を犯してしまったと。痛い話だ。


「はぁ~・・・・・・ホントに足引っ張りまくりだな」


 理解すればするほど申し訳ない気持ちが込み上げてくる。


「まあ、そう落ち込むことはな。誰だって直ぐに出来る事じゃない。ライラも相当訓練をしていたからね」


 オベールさんが苦笑いと共にフォローを入れてくれる。


「覚えているかい?ライラと勝負した時、ソウジ君が縮地を使って突撃した時の事を」


「はい、覚えてます」


「あの時ライラが君の行動に対処できたのも、同じ原理だ。まあ、闘気を使えばマナを感知するよりも、そちらの方が分かりやすいのだがね」


 そう言えばあの時も俺が仕掛けようとして動いたらそれに合わせてライラは攻め方を変えてきた。経験の差があるからだと思っていたが、それ以外にもマナの感知の仕方が俺とは違っていたからなのだろうな。


「あそこまで感知できるまで色々な事をライラはやっていたよ。例えば木に縄をかけて、その先端に木片を括り付けて・・・・・・」


「あ、それ、俺もやりました。クロードに集団戦の練習だとか言われて」


「なんだ、ソウジ君もアレをやったのか?それでどれくらいの本数まで出来たんだい?」


「八本です。それ以上は鬼畜と言うかなんというか」


「八本っ!?確か、ソウジ君はクロードに師事してから三か月も経っていないと言っていたよね?」


「ええ、そうですけど」


「それで八本・・・・・・」


 なんだろ、なにをそんなに驚いているんだろう?


「そう言えば、ライラはどれだけできたんですか?」


「え、ああ、ライラか?ライラは十本全てこなしていたよ」


「マジか・・・・・・」


 あの鬼畜の領域の八本を通過して、更に全クリかよ。やっぱすげぇよライラ。


「だからあんな動き方が出来るんですね。あ、そうだ。因みにマナの流れを読むための訓練方法とかってありますか?」


「そうだな、クロードが教えた訓練法を続けるのが有効と言えるが・・・・・・・・いや、ここはライラに聞いてみると言い」


「え、ライラにですか?」


「ライラも同じ訓練をしていたが、それ以外の事もやっていたからね。経験者に聞いた方が効率も良いだろう。それに、そろそろライラも来る頃じゃないかな?」


 そう言えばここに来てからかれこれ一時間ほどになる。オベールさんの言う通り、そろそろ来るかもしれない。


「私もそろそろ仕事をしないと、他の皆に叱られてしまうからね」


「あ、すみません。長々と付き合って貰って」


「ははっ、構わないよ。この程度で良ければいつでも相談に乗るよ」


「ありがとうございます。本当に助かりました。それじゃ俺はこれで」


「ああ、頑張ってくれ」


 オベールさんにお礼を言って俺は部屋を出て一階へと足を向けた。




        ♢       ♢        ♢     




「たった三ヶ月も満たない期間で八本、か」


 執務室を出て行った総司の後ろ姿を思い出す。


「クロードから闘気法を学んで、あの訓練を始めたと考えれば、三か月ではなく、一ヶ月あるかないかといったところか」


 オベールは立ち上がって自分の為に用意された机に向かう。椅子に腰を落ち着け身体を深く預ける。


「ライラでも半年近くかかってようやく十本到達した。それをたった一ヶ月程度で八本もクリアしたとは」


 総司にライラは十本こなしたと言った時の事を思い出す。

 総司は話を聞いた時、随分と驚いた顔をしていたな、と思い出す。


「自覚が無いのか、他の者からしたら驚愕なんだがな・・・・・・・・」


 オベールは知っている。あの訓練がどれだけ難度が高いかを。

 なぜならオベールも例にもれず、あの訓練を体験しているのだから。

 他の誰でもない、知っている者だからこそ驚く。あれがそんな生易しいものではないと言う事を。


「マナを感知する才があるのか?だが、縮地を使っていた点から考えれば、その才があることも納得もいく」


 通常、縮地を使うのにはそれなりの訓練を重ねなければならない。一般的には平均一ヶ月は掛かると言われている。

 それも、ある程度の闘気の制御を習得していることが前提の話だ。

 総司はそれをクロードが使ったのを一度見ただけで使った。

 オグマが使い方を教えた、と言う事もあるのだが、オベールはそれを知る事はない。


「しかし、周囲のマナ感知はまだまだ甘い。と言う事は無自覚でマナの流れを読んでいる、か・・・・・・・・・・」


(もしも、ソウジ君がマナの流れを自覚したとしたら・・・・・・フフッ)


 窓の外に視線を向ける。そこには雲一つない青空がオベールの瞳に映る。


「・・・・・・・・クロード、お前がソウジ君を推す理由、何となく分かってきたよ」




         ♢       ♢       ♢   




 一階に降りたら、既にライラが受付でレミアさんと話をしていた。


「ライラ、来てたのか」


「うん?おお、今来たとこだ」


 俺が受付まで行くと、ライラはぶっきら棒に挨拶を返してくる。


「オベールのオッサンに色々教わってたんだって?」


 レミアさんから話を聞いたのか。


「ああ、戦闘での立ち回りなんかをちょっとな」


「そうか。じゃあ次の依頼は足引っ張るんじゃねぇぞ」


「・・・・・・・わかってるよ」


 ムカッとくるが、前回の失敗があるから強く言い返せない。


「それで、何してたんだ?」


 気持ちを切り替えて訊ねると、レミアさんが笑顔で答えてくれる。


「今、ライラちゃんと一緒に次の依頼は何にするか相談していたところです」


 受付の上を見ると、そこには前回の様にいくつかの依頼表が並べられていた。


「今回はどんなものがあるんだ?」


 ライラの横から依頼表を覗き込む。ざっくりといくつかの依頼を見て見るが、内容は前回とさほど変わっていない。


「前とそんなに変わってないですね」


「当たり前だ。たった一日そこらで変わるかよ、バカ」


 一言余計だよ。


「で、なにかいい依頼はあったか?」


「いや、前回みたいに一日で出来るやつで目ぼしいものはない。護衛や輸送の依頼もあるが、時間もかかるし報酬も割に合わない」


「んん~・・・・・・どうしたものか」


「仕方ない。こういう時は・・・・・・・」


 そう言ってライラは依頼表の中から数枚の依頼を選ぶ。


「このどれかから選ぶのか?」


「違う、これ全部だ」


「・・・・・・は?」


 なんて?


「聞こえないのか?この依頼全部だ」


「いやいやいや、これ全部って」


 ライラから依頼表を受け取って内容を確認する。


「教会の清掃?こっちは屑鉄回収?は?猫探しぃ!!おまっ!これ雑用みたいな依頼ばっかりじゃねぇか!」


「そうだ。こういう依頼でも数をこなせばそれなりの額になるからな」


「いや、でもこれは・・・・・・」


「金、稼ぐんだろ?」


「ぐっ!」


 ニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべるライラに、俺は反論することが出来なかった。


「わ、分かったよ」


「よし。そう言うわけで、レイラ」


「分かりました。では、この依頼はソウジさん達にお任せしますね?」


 こんなにも数をこなさないといけないのか・・・・・・気が滅入る。と、思っていたが、ライラは更にとんでもない事を言い出した。


「ああ、この依頼はアタシは参加しない。全部こいつ一人でやる」


「え?」


 ちょっと待って。


「お、俺一人か?一緒にやってくれるんじゃないのか?」


「はあ?何でアタシが一緒なんだよ?」


「いや、だって俺とお前はペアで・・・・・・」


「アホ、そんな雑用みたいな依頼、アタシが居なくてもお前ひとりで充分だろ。一日で」


「一日!?」


「効率よくやれば出来るだろ」


「無茶振りだろっ!」


「金」


 こ、こいつ、ホント・・・・・・・


「わ、分かったよ!やるよ、やってやるよ!!」


 最早やけくそ気味に叫ぶ。


「ならとっと行ってこい。時間が無くなるぞ?」


 シシッと無慈悲に手を振るライラ。


「くそッ・・・・・・覚えてろよ!!」


 依頼表を手に走り出す俺。


「どこの三下だよ」


 呆れたライラの声を背中に、組合から街へと駆け出す。

 長いく苦しい一日が始まる。

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