第二章
プロローグ
前世で結婚しようと思っていた彼女を会社の同僚に寝取られ、心が砕かれ自殺。
気が付けば異世界転生してしまった俺、天野総司は、ハンターと呼ばれる、いわゆる冒険者になる為、ハンター組合がある街、デムローデに来ていた。
ハンター登録を済ませた俺は時間が空いたので、街を散策がてら、昼食を採るために何処か良い飲食店はないかとふらついていた。
そんな時、俺にハンターの事を教え、鍛えてくれた師とも呼べる恩人、クロードの義理の娘にして、先輩ハンターであるライラと偶然にも鉢合わせてしまう。
クロードを巡るあれこれでライラは俺の事を敵視しており、出合頭に罵倒してくる。
あれこれと話しているうちに、今から昼食にすると言うと、クロードの話を聞かせてくれるなら案内してやると言ってきた。
俺はそれに頷き、ライラの案内の元、飲食店目指して街を歩きだす。
ライラが近道だと言って入っていった薄汚れた路地を通った先に、そこそこ大きな広場に足を踏み入れた。
そこではいくつもの大きなテントが立てられ、まるで服複数のサーカス団がこの広場に集まった様な有様になっていた。
その中で、薄汚れてボロボロの服を着せられ、挙句手足を拘束された人達を目撃する。
ライラの言葉から、どうやら今日はこの広場で奴隷市なるものが開催されているらしい。
つまり拘束されたあの人達は、全員奴隷と言う事みたいだ。
そんな中で、俺はそこで信じられないものを見てしまった。
♢ ♢ ♢
「みさ・・・・と・・・・・」
地面に倒れて泣きじゃくる奴隷の顔を見て、俺は驚愕のあまり呆然と呟く。
その顔は忘れたくても忘れられない、俺が愛した女性の顔だった。
「美里、なのか?」
ありえない、だってここは異世界で、俺がいた世界とは似ても似つかない世界だ。
しかも、どうして奴隷なんかに?
「み、美里・・・・・」
訳が分からない。いったいこれは何の冗談だ?
ふらふらと、気が付けば足が動いて倒れた美里と思しき奴隷に向けて足を動かしていた。
「本当に・・・・・美里、なのか?」
近づく俺に気付いて奴隷の顔がこちらに向いた、瞬間。
「オラ!さっさと立てっ!!」
「あぐっ!」
奴隷を引き連れていた屈強な男が、拘束具に付けられた鎖を強引に引いて、無理やり奴隷を立ち上がらせる。
男は懐から水晶の様な物を取り出す。
「いつまでも喚くな!お前はもう奴隷なんだ。奴隷らしく黙って言われた通りにしてればいいんだよ!」
と、男が怒鳴った瞬間、男が手にした水晶が淡い光を放った。
「いぎぃっ!!」
どうしたことか、奴隷は突然苦しみだして、自身の首にかけられた首輪を取ろうと藻掻き始めた。
「がっ・・・・・・ぐぅ・・・・・・・!!」
しかし、首輪を外すことが出来ない。いや、よくよく見ると緩むどころかギリギリと締め付けている。
「ご、ごべん、な・・・・さ・・・・・ゆ・・・ゆる・・・じ・・・・・・!!」
「分かればいいんだよ」
苦しみながら許しを請うと、男はその反応に満足したのか、言葉と共に水晶の光が収まった。
「かはっ!」
光が収まると、首輪の締め付けが緩んだのか、奴隷はその場に膝を着いて大きく息を吸って酸素を取り込む。
「分かったか?分かったらさっさと立てっ!!」
「わ、わかり・・・・ました・・・・・・」
まだ呼吸が整っていない奴隷は、それでも男を恐れてか、よろよろと立ち上がる。
男に連れられて、一際大きなテントの入り口に辿り着く。
「入れ」
入り口を開いた男は、奴隷の鎖を引いて入る様に促す。
「は、はい・・・・」
奴隷はそれに従い、恐る恐るテントへと入っていく。
「さて、次は・・・・・・」
俺はその一連のやり取りを見て―――――
「っ!!」
バキッ!!
「ごふっ!」
男へ駆け出し、顔面を殴り飛ばしていた。
殴り飛ばした男は地面に転がり倒れる。
「おい、おまっ!?何やってんだ!!」
それを目の当たりにしたライラが声を上げるが、俺の耳には全く入ってこない。
「何してんだてめぇ!!」
俺が男を殴ったことで、周りにいた他の仲間と思しき男達が集まってくる。
俺は集まりつつある男達を迎え撃とうと構えた途端―――――
「がっ!」
後頭部に凄まじい衝撃を受けたと思った瞬間、俺の意識はプツリと切れた。
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