第9話 ゴブリンシャーマン

「ギィギャギャギャ!!」


 月と星の光で照らされた夜の森。その中でポカリと開けた空間に、ゴブリンシャーマンの汚い笑い声が木霊した。


「ライラっ!!」


 総司の目の前でライラがゴブリンの群れに飲み込まれる光景を目撃した。


「くそっ!退けッ!!」


「ギャッ!」


 総司の足止めをするかのように進路を塞いでいたゴブリンを殴り飛ばす。しかし、足止めをしようと立ちふさがったているのは一体だけではない。


「邪魔をするなッ!」


「ゴッ!」


 また一体のゴブリンを蹴り飛ばして駆け出そうとするが、直ぐに別のゴブリンが道を蓋ぐ様に立ちはだかる。


「チッ!鬱陶しいんだよ!!」


 これではらちが明かない。焦った総司の脳裏にライラとの会話が過る。


『状況にもよるだろうがな。捕まった奴は食われるか、玩具にされて殺されるか、まあ、碌な目には合わないな。それに捕まったのが女だったら・・・・・』


『・・・・・・だったら?』


『徹底的に犯されて孕まされる』


 このまま何もできずにいれば、ライラは凌辱されるか、殺されるか、どちらにせよ、碌な未来ではない。


「そんなふざけたこと・・・・・・・・」


 低く構えた総司の両足に、蒼い闘気が集束されていく。闘気法『縮地』の前段階。


「させて、たまるかあぁぁぁぁぁ!!!!!」


 両足に集束された闘気が一気に爆発するように爆ぜる。


「ギギッ!!」


「ギャッ!!」


 それと同時に総司の身体がまるで弾丸の様に飛ぶ。道を塞ぐように立つゴブリン達を巻き添えにしながら。

 総司の身体が向かう先は、今もゴブリンの波に飲み込まれているライラの元。


(間に合えッ!!)


 一瞬で縮まる距離の中で、総司は固く拳を握りしめて闘気を込め、突き出す。


「オオォォォォォォォ!!!!」


 ドンッ!!


「ギャッ!」


「グギャッ!!」


 後先考えずに行った突撃は、群がるゴブリンの一部、六、七匹を纏めて吹き飛ばす。

 地面を滑る様に制止を掛けて、突撃の勢いを止めて振り返る。


「ライラッ!」


 大声でライラの名を呼ぶと、答えは直ぐに返ってきた。


「・・・・・・・うるせぇよ、クソがッ!!」


 バンッ!!


「ギギャ!!」


 その場で爆発が起きたような音と共に、ライラに群がっていたゴブリン達が空を舞う。


「うわぁ~・・・・・・・・」


 そして、その後から姿を見せたのは、鬼の様な形相でティソーナを握るライラだった。


「だ、大丈夫かライラ?」


 ライラの元に駈け寄った総司が尋ねると、ライラの怒りに染まった瞳が総司へと向けられる。


「この程度でアタシがどうにかなるわけねぇだろうが」


「あ、はい。そうですよね・・・・・・」


 全身から怒りの気配を滲ませるライラに、反射的に答える。

 とは言え、ライラの身を心配していた総司としては、本当に無事かどうかを確認すしたい思いだった。なので、ゴブリンに向き直るライラの身体をこっそり確認する。

 殴られたのか、その頬は赤くなり、額からも血が滲んでいる。体の方も大きな傷は窺えないが、小さな傷が所々に見受けられる。

 タンクトップの胸元も破られたのか、小さな胸が見えそうなほど裂かれ、ロングパーカーも痛んでいた。

 それでもこうして無事なのは、ひとえにライラの経験からくる咄嗟の判断からくるものだった。

 ゴブリンの群れに押しつぶされそうになった瞬間、ライラは咄嗟に身を守るために防御に闘気を回したのだ。全身を覆う様に展開した闘気のおかげで、この程度で済んだ。

 だが、ピンチだったことは変わらない。

 そこに総司が突撃してくれたおかげで、ライラはティソーナを振るう隙が出来た。もしも、総司が行動に移さなかったら、今頃ライラは惨たらしい事になっていた。


(くそっ・・・・・・・余計な借りが出来ちまった)


 しかし、素直に総司に感謝するのは、ライラのプライドが許さない。今あるのは感謝ではなく、怒り。


「てぇめら・・・・・・・」


 その怒りをぶつける様に、目の前にいるゴブリン達を睨みつける。


「よくも生臭いモノを押し付けてくれたな、この万年発情猿共!てめぇらのその薄汚いモノ切り飛ばして口の中にねじ込んで頭かち割ってやるよッ!!!!」


 ライラの怒声が夜の森に響き渡る。


「ギ、ギギィ・・・・・」


 その声に雄としての本能なのか、ゴブリン達の腰が引ける。


「おぅ・・・・・・・・」


 背中合わせに構えていた総司もまた、ライラの啖呵に背筋を震わせながら、思わず内股になってしまうが、背中合わせでいるおかげで、ライラからは見えなかった。


「蹴散らすぞ!気合入れろ!」


「お、おう!」


 背中合わせに頷き、総司とライラは構える。


「ギギィッ!」


 それと同時にゴブリンシャーマンの声が飛ぶ。するとまだ無事なゴブリン達が総司とライラに向けて襲い掛かる。


「ハッ!」


 跳びかかってきた一匹を総司は拳で迎え撃ち、吹き飛ばす。


「オラッ!」


 二匹同時に襲い掛かってきたゴブリンに対して、ライラは横薙ぎにティソーナを振るって同時に切り飛ばす。

 そこに先程ライラに空に吹き飛ばされて倒れていたゴブリンが起き上がり、こぶし大の石を投げつけてくる。


「ライラっ!」


 それを察知した総司が、飛んでくる石を弾こうと動く。が、ライラもゴブリンの行動が分かっていたのか、ティソーナを振るっていた。

 総司はそのライラの行動に慌てて急ブレーキをかける。


「うわっ!」


 ブンッ!と目の前を刃が通り過ぎる。


「邪魔だっ!」


 ゴブリンの鼻っ面に石を弾き返し、そのまま鼻を押さえて悶絶するゴブリンに向けて駆け出す。


「フンッ!」


 駆け出した勢いを乗せて刃をゴブリンに放つ。


「ギャッ!」


 胴体を真っ二つに切断されたゴブリンは短い悲鳴と共に地面に倒れる。


「ッ!バカ、後ろだ!!」


「え?」


 次の獲物を探して周囲に目を向けたライラの視界に、総司の後ろ、仲間の死骸に身を潜めていたゴブリンが総司に向けてナイフを手に襲い掛かろうとしている光景が目に映る。


「チッ!」


 舌打ちと共にライラは縮地を発動、総司に今まさに総司に襲い掛かろうとするゴブリンと総司の間に割って入る。


「ギッ!」


 突然目の前に現れたライラの姿に驚くゴブリン。それに構わずライラはティソーナをゴブリンの胸に突きこむ。


「ギギィ・・・・」


 絶命したゴブリンの死体を蹴り飛ばして刃から引き抜く。


「わ、悪い。助かった」


「だから言ってんだろ、ボサッと―――――っ!」


「な、なに、おわっ!!」


 突然ライラが総司の胸倉を掴み上げると、総司を掴んだままライラは横に大きく飛ぶ。

 すると、人の頭ほどの大きさの火球が飛んできて、今まで二人が立っていた地点で爆発。それはまるで、手榴弾でも投げ込まれたような爆発が起きた。


「なっ!」


「本格的に動き出したか」


 火球が飛んできた方を見ると、そこには杖を構えたゴブリンシャーマンが口角を上げて立っていた。


「これって魔術?」


「言っただろ?ゴブリンシャーマンは魔術を使うってな」


「ギガガッ!!」


 ライラの言葉を証明するかのように、ゴブリンシャーマンは再び杖を二人に向けて魔術を起動する。

 向けられた杖の先から、先程と同程度の火球が生まれて放たれる。


「「っ!」」


 二人は同時に後ろに後退して回避。直後に火球が二人がいた地点で爆発。


「ギギッ、ギギャガギ!!」


 爆風で二人の髪がなびく中、ゴブリンシャーマンの声が響く。すると、まだ動けるゴブリン達が一斉に動き始める。


「チッ!このままじゃ埒が明かない、アタシが突っ込む、お前は残りのゴブリンを押さえろ!」


 そう言ってライラは勢いよく駆けだす。


「ちょっ!・・・・・・あぁ~もう、分かったよ!」


 頭を掻きむしった総司はやけくそ気味にこちらに向かってくるゴブリン達に向けて駆け出す。

 先行したライラの元にゴブリン三体が一斉に跳びかかるが、ライラは縮地を使ってそれを掻い潜り、そのままゴブリンシャーマン目掛けて足を止めることなく駆ける。


「オオォォォォ!!」


 標的を見失い戸惑うゴブリンに、今度は総司が跳びかかる。

 真ん中にいたゴブリンの頭上に踵をめり込ませ沈め、着地と同時に左にいたゴブリン顔面に拳を叩きこみ、襲い掛かろうとした残りのゴブリンに回し蹴りを側頭部に叩きこむ。


「よし!」


 一気に三体を始末して安堵するも、直ぐに横から別のゴブリンが槍を突き出してくる。

 総司は反射的に一歩、身を引き槍を躱す。そのままゴブリンとの距離を詰めて鳩尾に拳を叩きこむ。

 泡を吹いて倒れるゴブリンには目もくれず、総司はライラに向かって行こうとするゴブリンを視界にいれるや、直ぐにその場に向けて駆け出す。


「行かせるかっ!」




       ♢       ♢        ♢      




 アタシは馬鹿を置き去りにして一人、この群れのボス目掛けて駆け出す。

 襲ってくるゴブリンを躱し、殴り飛ばし、時には縮地を使って掻い潜り、そして離れた場所から大声で喚く親玉まであと少しと言うところで、奴はこっちに向けて杖を向けた。

 向けられた杖の先から火球が生まれる。

 紡がれた魔術はファイアバース。ファイアボールと似ているが違う。ファイアボールは火球を放ち、着弾して爆発するが、ファイアバースは火球を任意のタイミングで爆発させられる。

 下手にタイミングをミスったり、避ける方向を間違えると爆発に巻き込まれてしまう。


(それでも、この程度問題にもならねぇ!)


 アタシは走りながら闘気を高めてティソーナを振り抜く。


「裂空斬っ!!」


 ティソーナの刃から赤い斬撃が飛ぶ。


「ギギッ!」


 空を裂いて飛ぶ斬撃が、ファイアバースと衝突して爆発する。

 アタシはその爆発を横目に駆け抜け、ゴブリンシャーマンとの距離を詰める。が―――――


「ギギャアッ!」


「!」


 あろうことか、奴は火球を放ってきた。


(二発目だとっ!!)


 ファイアバースは初級の魔術に分類されるが、その中では上に分類される魔術だ。ゴブリンシャーマン程度が溜めもなく二発目を放つなんて話聞いたことが無い。


「くっ!」


 迫りくる火球に対して、アタシは咄嗟にティソーナを盾のように掲げ、爆発を逃れようと動く。


(間に合え!)


 正面にティソーナを持って行くと同時に、ティソーナに火球がぶつかり爆発。アタシは後ろにわざと飛んで衝撃を殺す。


「今の・・・・・・」


 今のがファイアバースだったのなら当たる直前に爆発させてやればいい。そうすれば、アタシは防御が間に合わず、爆発に巻き込まれていた。

 けれど、今のは直撃してから爆発した。つまり――――


「ファイアボールか!」


 それが正解だと言う様に、奴の口がニヤァっと歪む。


(こいつ、戦術を理解してる!?)


 ファイアバースを使う為には溜がいる。最初の一発は距離があったから出来たこと。距離を詰めれば二発目を放つ前に切れると考えたアタシの裏を読んで、溜を必要としないファイアボールを使ってきた。


(ファイアボールとファイアバースを併用して使ってくる、何てめんどくせぇゴブリンなんだ!)


 魔術戦を得意とする奴が、二つを織り交ぜて使うのが一番効果的だと、前に得意げに語っていたことがあった。

 実際、ファイアボールとファイアバースは見た目が一緒な分、判断するのが難しい。分かるのは爆発の威力がファイアバースの方が高いと言うことぐらいだ

 熟練者はマナの量や気配で分かる、なんて話も聞くが、残念ながらアタシには判断できない。


(裂空斬の届く距離まで縮地を使うか?いや駄目だ。縮地を使った後に裂空斬を使おうにも、闘気を練る間にファイアボールを打たれたら意味がない。なら、どうする?)


「ギギャ!」


「っ!」


 判断に迷っていると、またも火球を放ってきた。


(どっちだ!?)


 見た目は一緒。避けるか?裂空斬をぶつけるか?判断を下す前に身体が自然と動いていた。


「くっ!」


 アタシは大きく横に飛んだ。

 それが正解だったのか、火球はアタシの横を通り過ぎ、その先にあった岩に直撃すると炸裂した。どうやらファイアボールだったみたいだ。

 殆ど反射的に動いたが、運がよかった。が、アタシの運はここまでだった。

 ガッ!


「なっ!?」


「えっ!?」


 着地する直前、アタシの後ろで、まだゴブリン共を抑え込んでいるはずの馬鹿とぶつかったのだ。




        ♢        ♢        ♢     




 予期せぬアクシデントだった。総司はゴブリン達を確実に一体一体倒し、数を減らしていた。

 しかし、如何せん数が多い。総司が撃ち漏らしたゴブリンがライラの元に行こうとする。

 それを阻止しようと総司はゴブリンを追いかけ進行を止め、またその場で交戦、撃ち漏らし、追いかける。

 そんなことを繰り返していた為、徐々にライラがゴブリンシャーマンと交戦しているエリアに足を踏み入れてしまっていた。

 そして―――――


「おまっ、何で!」


「この馬鹿!どうしてここにっ!」


 総司が切りかかってきたゴブリンの攻撃を躱したのと、ライラがゴブリンシャーマンのファイアボールを躱したのは、偶然にも同時だったのだ。

 その結果、総司とライラは避けた先で互いの身体をぶつけることになった。


「お前、奴らの足止めをしろって言っただろうがっ!」


「んなこと言っても、一人で抑えるにも限度ってもの―――――ッ!」


 その時、総司の目に映ったのは、離れた場所から杖を構えたゴブリンシャーマンの姿。

 その杖の先には、今まさに放たれようとしている火球。


「ライラッ!」


「え?」


 ライラはゴブリンシャーマンに背を向けてしまっていた為、気付けていない。

 杖の先から火球が離れる。


「っ!」


 咄嗟に総司の足が動く。

 その足はライラの背後、突き出すは闘気を込めた拳。


「オオォォォォォォォォ!!!!」


 咆哮と共に放たれた拳が、迫りくる火球と激突する。

 ドンッ!!


「ぐあっ!」


 激突した瞬間、火球は爆ぜて総司の身体を後ろに吹き飛ばす。

 その体を咄嗟にライラが受け止めるも、二人揃って地面を転がる。


「痛って!どんな威力してんだよ!」


「無茶し過ぎだ!止められなかったらどうするつもりだったんだッ!」


「それは、って言ってる場合じゃないぞ!」


「チッ!」


 再び火球が飛んでくる。今度は二人共きっちり迫りくる火球を捉えている。


「跳べ!」


 ライラの合図で同時に飛ぶ。ライラは右に、総司も右に。つまり・・・・・


「バ――――」


 ドンッ!

 二人が飛んだあとの空間で火球が爆発。その爆風の勢いで総司とライラは再び中空で激突して地面を転がる。


「アホ!同じ方向に飛んでどうすんだっ!」


「わ、悪い。けど、避ける方向なんて―――――ライラ、マズい。囲まれるぞ!」


 見れば総司達を包囲しようと残りのゴブリン達が動き出そうとしていた。


「ああ、クソッ!面倒だ、一気にあのクソゴブリンをぶちのめすぞ!」


「わ、分かった!」


「走れっ!」


 ライラの合図で足り出す。


「先に進め。狙いを絞らせない様、出来るだけ蛇行しながらだ!」


「分かった!」


 ライラの指示に従い、総司は右に左に進路を変えながら前に進む。

 その斜め後ろをライラは総司とは違い、真っ直ぐに走る。


「ギ、ギギィ」


 この時、ゴブリンシャーマンは杖を右に左に、どちらに向けるかで迷うようなそぶりを見せた。


(そうだろよ。下手に片方に狙いを付ければその隙にもう片方がお前をぶちのめす。どっちに撃っても隙は出来る!)


 蛇行しながら迫る総司を撃てば、外れる可能性もある。仮に当たっても隙が出来てその後にライラが辿り着く。

 逆にライラを撃てば直進してきている分、当てやすい。しかし、やはり撃った後に先行して走ってきている総司が辿り着く。

 撃たなければ今は総司が前、ライラは後ろだが、蛇行しながら走る総司では直進して走るライラの速さに負ける。つまり、撃たなければ二人同時にゴブリンシャーマンの元に辿り着く。

 ゴブリンシャーマンにとっては一番最悪な展開。

 それの最悪を逃れるため、杖から火球が放たれる。ゴブリンシャーマンが狙ったのは・・・・・


「やっぱそう来るよな!」


 ライラだった。

 ライラの方が強い。したがって先に強い方を倒してしまえばいい。残るのはライラよりも弱く、消耗している総司だけ。ゴブリンシャーマンは実に分かりやすくシンプルな選択を取った。

 総司だけならゴブリンシャーマンの元に辿り着けても勝機は自分にあると。が、それは既にライラに読まれていた。

 だから―――――


「フッ!」


 両足に渾身の闘気を注いで縮地を発動させる。


「ギギィ!?」


 本来なら、ライラといつ限界を迎えてもおかしくない状態だった。

 ライラはあのティソーナの不可思議な現象で、マナを相当使ってしまっていた。

 それでもこの瞬間が勝機だと見極め、ライラは残り少ないマナをつぎ込んだ。

 普段使う縮地よりも闘気を込めて使ったことで、その姿はゴブリンシャーマン目からは、その場から幻のように消えたように映った。

 ライラの姿を見失ったおかげで爆発させるタイミングを失う。


「ギ、ギギィ」


 戸惑うゴブリンシャーマンの顔に衝撃が走ったのはその時だった。


「ギギャ!」


 身体は中空に投げ出され、地面に落ちて転がる。

 倒れたゴブリンシャーマンが目を向けると、そこには拳を突き出してゴブリンシャーマンの横面を殴り飛ばした総司がいた。

 動揺しているゴブリンシャーマンの隙を突いて、総司も縮地を使って距離を詰めたのだ。

 本当なら、総司もライラと同様、倒れてもおかしくない状態だった。総司は一人でゴブリンを押しとどめていたことで体力が底をつきかけていたからだ。

 それに加えてライラを庇ってファイアボールを防いだ。その影響で身体はすでにボロボロだった。

 それでも総司は、ライラの言葉を信じて走った。

 その結果―――――


「―――――――くたばれ」


 起きやがろうと上体を起こしたゴブリンシャーマンの首が、宙を舞った。

 赤い線を引きながら宙を舞うゴブリンシャーマンが最後に見たのは、血に濡れたティソーナを振り抜いたライラの姿だった。

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