第18話 悪人?善人?

 オベールさんに相談した結果、解決策が見つかるかもしれないと言われ、その為に時間をくれと言われた。

 俺はそれに縋る様に分かりましたと応え、一日時間を空けて再び組合を訪れる様にと言われた。

 後の事はオベールさんに任せ、俺は執務室を後にし、組合一階のロビーに降りてきた。


「しかし、急にやることが無くなったな。いや、最初っからやることがあった訳じゃないんだが」


 一日と言う時間が出来てしまった事で、俺は何をするべきか悩んでいた。

 他人任せになってしまったが、俺にも何か出来ることはないだろうか?

 そう考えてロビーに戻ってきたものの、やはり今からやれることなどそうそう思いつくわけもない。思いついていたらこんなに悩まずに金を用意出来たはずだし。


「よう、新人」


「え?」


 あれこれ考えていたら後ろから急に声を掛けられた。振り返ってみると、左目に眼帯をつけた偉丈夫がいつか見たニヤニヤとした笑みを浮かべて立っていた。


「えっと、ビジャル、さん?」


「おう、確か・・・・ソウジ、だったか?こんなところでどうした?依頼でも受けに来たのか?」


「え、いや、まあ、そんなところです」


 クロードの事を悪く言っていた姿を見ていた為か、どうもこの人に苦手意識がある。


(それでもこの人はベヤドルの師匠なんだよな)


 ファムが言っていた通りなら、ビジャルはベヤドルとファムにハンターの技術などを教えた師匠とも呼べる人なのだ。


(悪い人ではない、のかな?)


「何だ?俺の顔に何かついてんのか?言っておくが俺に男の趣味はないぜ?」


 まじまじと見ていたせいか、ビジャルは訝しむように言ってきた。生憎俺も男の趣味は無いよ。


「まあいい。ところでお前、ライラとペアを組んだんだってな?」


「ええ、まあ」


「あいつは気性は荒いが、ハンターとしては良い才能を持ってる、将来有望と言っていいハンターだ。足を引っ張って迷惑だけはかけるなよ?」


 意外だな。クロードの事を悪く言っていたから、てっきりその弟子のライラの事も嫌っているのかと思っていたけど、そうでもないのか?ライラの将来に期待しているみたいだし、やっぱりいい人なのか?


「数年もしたらいい女に成長するだろうからな。俺の女にするには実力も容姿も申し分ないぜ、ハハッ!」


 ・・・・・・前言撤回、やっぱ嫌な奴だ。


「ビジャル、さんは―――――」


「ビジャルでいい。後敬語もいらねぇ。背中が痒くなっちまう」


「・・・・・ビジャルは依頼か?」


 本人がいいと言うので遠慮なくため口で話す。


「おう、まあそんなとこだ」


「?」


 何処か含みのある言い方に疑問を覚えるが、他から声を掛けられてその思考は直ぐに消える。


「ソウジ、こんなところでどうした?」


「ベヤドル?それにファムも」


 声を掛けてきたのは、今しがた組合に入ってきたベヤドルとファムだった。二人は俺の下に歩いてくると、俺と話をしていたのがビジャルだと知ると、一瞬ベヤドルが驚いた顔をするが、直ぐに普段通りの笑みを浮かべる。


「ビジャル、最近見ないと思ったらこんなところでどうしたんだ?まさかソウジに変な事してないよな?」


 ベヤドルの軽口にビジャルが顔をしかめる。


「久々に会ったと思ったらそれかよ。何もしてねぇよ。ちょっと世間話しをしてただけだ」


「そうかい。ならいいんだが」


「相変わらず師匠に対して生意気だなこの坊主は」


 わざとらしく溜息を吐いて肩を竦ませるビジャルに、今度はファムが頭を下げて挨拶する。


「お久しぶりです、ビジャルさん」


 すると一変、ビジャルは相好を崩して笑みを浮かべる。


「おお~ファム!お前は相変わらず可愛いやつだな~今度俺と街で遊ぶか?何か欲しいものがあるなら買ってやるぞ?」


「い、いえ、大丈夫ですから」


 まるで娘か孫にする様なビジャルの態度に思わず面食らう。と、それを面白く思わないのか、ベヤドルがビジャルとファムの間に割って入る。


「に、兄さん?」


「・・・・・ビジャル、いくらあんたでも俺のファムに手を出したらタダじゃおかないぞ」


 視線だけで人を殺せそうな目をしながらビジャルを睨みつける。その様子を見て、何が面白いのかビジャルは笑いながら身を引いた。


「お~怖い怖い。相変わらず妹離れできてないみたいだなお前は」


 一歩身を引いたにもかかわらずビジャルはベヤドルをからかうように言葉を紡ぐ。それに触発されてベヤドルの方も怒気が立ち込める。


「ま、まあまあ二人共、その辺にしとけよ。皆見てるぞ」


 流石にこのままでは不味いと思い、二人の間に割って入る。先程から周りの連中が何事かとこちらを窺っている。こんなところで殴り合いの喧嘩にでもなったら目も当てられない。


「・・・・・分かったよ」


「何だよ、これから面白くなるところなのに」


 ベヤドルは不承不承ながらも引き下がり、ビジャルはつまらないと言いたげな顔をしながら下がった。


(本当にこいつら師弟関係なのか?)


 そう疑問に思うぐらい仲が悪いように見えてしょうがない。


「と、ところでビジャルさんはどうしてここに?」


 険悪な雰囲気を振り払うようにファムが務めて明るい声を出す。


「俺は依頼の報告に来ただけだよ。そしたら新人がいたもんだから少し話でもしてやろうかと思っただけさ。ファムは何の用事だ?」


「私たちは次の依頼を探しに」


「そうかそうか、熱心な事だ。けど、あまり無茶な事はするなよ?」


「はい」


 何か、本当にファムには優しいなこのオッサン。


「それじゃ、俺はまだ用があるかよ。またな」


 そう言ってビジャルは手をヒラヒラと振りながら受付に行ってしまった。残された俺達三人は何とも言えない空気で取り残されてしまった。


「えっと、ソウジさん。昨日の事なんですが・・・・・」


 昨日、とはバヤール亭で話したことだろう。


「ファム、周りの目がある」


「あっ、そうだね」


 俺達の周りには人はいないが、先程の揉め事でこちらにチラチラと視線を向けている者が何人かいる。

 この街では知られているハイデルの事も絡む話だから、あまり人目がある場所で話すのもどうかと思う。


「話なら別の場所でしよう。ソウジ、時間はあるか?」


 それは俺も望むところなの素直にうなずく。


「なら、行こう」


 そう言ってベヤドルは踵を返すが、俺はそれを呼び止める。


「けど、いいのか?二人は依頼を探しに来たんだろ?何だったらそこで待ってるぞ?」


 そう言って待機スペースを指さす。が、ベヤドルは首を横に振った。


「心配いらねぇよ。依頼なら話が終わった後にでもまたここに来ればいいだけだからな」


「そうですよ。私達なら大丈夫ですから」


 二人にそう言われたら俺も無下には出来ない。二人の好意に申し訳ない気持ちを抱きつつ、俺達三人は組合を後にした。




         ♢       ♢       ♢   




 組合を後にした俺達三人は、この前俺が雑用の依頼で訪れた教会前の広場に来ていた。

 木陰に置かれているベンチに三人で腰を落ち着けながら昨日の話をする。


「それで、ソウジはあれから何か思いついたか?」


「いや、一晩考えたけど、何もいい案は思いつかなかった」


「そうか。こっちも考えてはみたんだがな・・・・・」


「すみません。私も考えてみたんですけど、いい案がでなくて・・・・・・」


 俺と同様、二人もあの後俺のために色々と考えてくれていたみたいだ。

 しかし、結果は二人の顔を見れば一目瞭然。ファムに至っては頭を下げて謝罪する。


「いいんだ、二人に甘えっぱなしな俺が悪いんだし。俺の事なのに、ゴメン。余計な気苦労をかけちゃって、その、ありがとう」


 そう言って俺は頭を下げる。


「いや、俺達の方こそ力になれなくてすまんな」


「何とか出来ればいいんですけど・・・・・」


 二人が力になれない事を歯がゆく思ってくれているのか、二人の顔が苦いものとなる。

 俺の事なのに、二人には迷惑を掛けてばかりだ。けれど、オベールさんのおかげで一つの希望が見えた。


「そのことなんだけど、実は――――――」


 先程二人に合う前にオベールさんと執務室で話したことを説明する。

 すると、ファムは先程とは違いその表情を輝かせた。


「良かったじゃないですか!もしかしたら本当に何とかなるかもしれないですよ?だってあのオベールさんなんですから!」


 よほどオベールさんを信頼しているのか、ファムは俺以上の希望を見出しているみたいだ。


「オベールさんってそんなに凄い人なんだ」


「はい!怪我でハンターを引退しましたが、現役時代は凄いハンターだったんですよ?引退後もハンターの待遇をよくするために色々な事にも積極的に動いてくれて、ペア制度や新人研修の制度もオベールさんが発案なんですよ」


「そうなのか」


 ファムの話によると、オベールさんは引退後は組合の制度など、今まで荒くれ者扱いされていたハンターの待遇改善に力を注いだいたらしい。

 ペア制度以外にも、色々と制度を追加したり改善したおかげで、民衆はハンターを見る眼がかわり、今ではおおむね良好な関係を築けているらしい。


「凄い人なんだなオベールさんって」


「そうなんです!そんなオベールさんが言っているのなら、希望はありますよ!」


 ファムの様子に、俺も何だかそんな気がしてきた。


「そうだな。オベールさんに任せっぱなしって言うのもアレだけど、期待できそうだな」


「はい、きっと大丈夫ですよ!」


 そう言って何処かドヤ顔で拳を握りしめるファムに思わず笑みがこぼれる。


「・・・・・・・」


 と、そんな中、ベヤドルだけ沈黙したまま何事かを考え込んでいる。


「どうかしたか?」


「っ!ああ、いや・・・・・・」


 その様子が気になって声を掛けると、ベヤドルは深く考え込んでいたのか、俺が声を掛けるとビクリと身体を震わせた。


「兄さん?」


 その様にファムを疑問を持ったのか、ベヤドルの顔を凝視する。


「いや、何でもない。オベールの旦那がこの状況をどうひっくり返すのか、俺なりにその方法を考えてただけだ」


 確かにオベールさんはどうするつもりなのか気になるところではあるが・・・・・・


「一日時間をくれって言ってたし、明日になれば分かるんじゃないか?」


 今頃、オベールさんが動いてくれている事だろうし、結果は明日になれば分かるはずだ。


「・・・・・そうだな、オベールの旦那なら何かやってくれるだろうさ」


 頭を切り替えたのか、ベヤドルは笑みを浮かべて立ち上がる。


「てことは、俺達の出来ることはもうないってことだな」


「まあ、そうだな・・・・・」


「何だよその顔は?嬉しくないのか?せっかく解決の糸口が見つかったって言うのに」


「そうだけど・・・・・・二人には世話になりっぱなしだし、何か―――――」


 恩返しをっという前にベヤドルが遮った。


「俺達が好きでやったことだ。お前が気にすることなんて何もねぇよ。それでも何かしたいって言うんなら・・・・」


「言うんなら?」


 ベヤドルは勿体つける様に間をおくと、ニヤッと意地悪い笑みを浮かべる。


「俺達が困った時、今度はお前が俺達を助けてくれ」


「それで、いいのか?」


「ああ。と言っても俺達はお前よりもハンター歴が長い先輩だからな、そうそう困ったことにはならないし、実力の方も・・・・・お前に追い越されるつもりもないし、な」


 キザったらしく片目をつぶって言ってのける。

 ・・・・・・・・これは一種の挑戦、いや、挑発。

 今の俺に助けられるほど弱くわないと、そう言っているのだ。それと同時に、本当に二人が窮地の時、二人を助けるだけの力があるのか?と、そう言っている。

 少なくとも、俺にはそう言う風に捉えた。だから―――


「言ってろ。直ぐに追い越してやるよ」


「楽しみにしてるぜ?」


 俺の答えに満足したのか、ベヤドルはニカっと気持ちのいい笑みを浮かべた。

 そんなやり取りをファムはくすくすと笑いながら見ていた。


「それじゃ、俺達はそろそろ行くぜ?ファム、行くぞ」


「うん。ソウジさん、もし何かあったら言ってくださいね?」


 それじゃあ、と言い残して二人は歩き出す。きっとこれから組合に顔を出しに行くのだろう。


「いつか二人に借りを返さないとな」


 かなり大きな借りを作ってしまったが、もしも本当に二人がピンチの時は必ず力になろう。

 去って行く二人の背中を見送りながら、そう心に誓った。




         ♢       ♢       ♢ 




 家で武具の点検などをしていたアタシは、昼に差し掛かるころに腹が減って一階の台所に行って飯をつころうとしたが・・・・・・


「しまったな、買いに行くの忘れてた」


 最近はあいつの訓練に付き合ってたし、訓練後は家じゃなく外で食べることが多かったからつい食料の買い出しを忘れていた。

 ため息を吐きながら身支度を整えて金を掴んで外え出る。勿論買い出しのためだ。

 食料を求めて街の市に向かう。昼間だからか、そこには大勢の人が溢れ、そこかしろから客寄せの威勢のいい声や、道端で談笑する主婦、道をはしゃぎながら駆けていく子供達の声で活気づいていた。

 アタシはそんな市を歩きながら馴染みの店に立ち寄ると、店の主人のオッサンがアタシに気付いて声も大きく話しかけてくる。


「よお、ライラちゃんじゃねぇか!最近見なかったが元気にしてるかい?」


「まあ、ぼちぼち。オッサン、これとこれ、二つくれ」


「あいよ!」


 威勢のいい声で答えながらオッサンが商品を持ってきた籠の中に入れていく。

 品が入った籠を受け取ると、アタシが注文した物以外の物が入っていた。


「サービスだ。持ってきな」


「いいのか?」


「おうよ!・・・・・聞いたぜ、クロードの事。アイツはこの店を贔屓にしてくれてたからな、何だ、その礼みたいなもんだ」


「そっか・・・・・ありがとな、オッサン」


「良いってことよ」


 金を払って、またなっと告げて店を後にする。他にも買わなければいけない物がある。時間も勿体ないし、効率よく店を回ろう。

 最初の店から数店、買う予定だった物は大体揃った。ただ、それ以外の物がいくつか足されている。

 全部サービスだとおまけしてくれた物だ。

 買いに行った店の主人たちはクロードの事を何処からか聞いたのか、世話になってるお礼だといって持たせてくれる。

 断るのも失礼だろうと思って受け取ったが、予定外の物が増えすぎて荷物が大変な事になってしまった。

 今のアタシは両腕に袋と籠を通して胸に箱を抱きかかえている状態だ。箱から飛び出している野菜で前が見えづらい。


「サービスしてくれるのは有難いんだが、これはやり過ぎじゃないか?」


 サービスしてくれた主人たちの顔を思い浮かべて苦笑が洩れる。幸い今は市にいた時よりも人通りが少ないところを歩いているから、人にぶつかるようなことは無い。が、歩きにくい。


「わっと!何処見てんだよ!」


 四苦八苦しながら歩いていると、通りの脇から出てきた集団にぶつかりそうになって慌てて足を止める。


「すまな・・・・ん?ライラか?」


 すると、集団の先頭に立っていた相手は見知った相手だった。


「なんだ、ミタリーじゃねぇか」


 ぶつかりそうになった相手は手綱を引いたクラン『疾風』の副団長のミタリーだった。


「そんな大荷物を抱えてどうした?これからパーティーでもするのか?」


 大荷物を抱えるアタシをしげしげと見ながらミタリーが首を傾げる。


「やらねぇよ。買い出しに来たらこれ持ってけ、あれ持ってけでこの有様だ」


「フフッ、そうか」


 その光景が想像できたのだろう、ミタリーは笑う。


「お前こそこんなところで何してんだよ?」


「私か?私はこいつらを使って訓練をしていたんだ」


 そう言ってミタリーは手綱に繋がれたソレの首筋を撫でる。


「相変わらずデカいレヤックだな」


「クラン自慢のレヤックだからな」


 そう言いながら嬉しそうに微笑んで撫でると、レヤックはじゃれつくように体をミタリーに寄せる。

 レヤックは大型犬の様な外見をしているが、通常の大型犬と違いその体は成人男性の二倍はあるデカさだ。移動能力に優れ、その脚の速さは鍛えられた馬よりも速い。

 その代わり、馬とは違い気性が荒く、一度認めた者以外その背に乗せることはないというプライドの高い種としても知られている。何よりその希少性ゆえに、中々お目にかかれない。

 ベヤドル達『疾風』はそんなレヤックを多く従えている。馬よりも速いレヤックを駆り、その機動力を使った戦闘がクラン『疾風』の最大の特徴だ。


「前から思ってたけど、よくこれだけ集めたな」


 アタシはミタリーの後ろにもいるクランメンバー達に手綱を引かれているレヤック達を見た。


「かなり苦労したがな。けど、その甲斐あって今のクランがあるて言っても過言じゃない」


 何処か自慢するように微笑むミタリーにアタシはそうかよ、と肩をすくめてみせる。


「それで?訓練が終わって今帰りってか?」


「ああ。最近、こいつらは依頼が無い時はそこらをフラついてばかりで、ちっとも訓練をしようともしないからな。依頼も受けていないから、ちょうどいい機会だと思ってこうして朝から訓練をしていたんだ」


 そう言いながら後ろのメンバーに剣呑な目を向けると、メンバーの男達はバツが悪そうに顔を逸らしてその視線から逃れる。

 すると、メンバーの一人が言い訳するかのように口を開いた。


「い、いや、ミタリーさん、俺達は別に遊んでるわけじゃなくて―――――」


「おい」


「あ、ああ・・・・・」


 何を言おうとしたのか、別のメンバーが咎める様に言葉を遮る。


「俺達が悪いんだ。ミタリーさんに非は無いだろ」


「あ、ああ、そうだな」


 まだ何か言いたそうな顔をしながらも男は黙る。そのやり取りを見たミタリーはため息をつくと腰に手を当てながら凄んで見せる。


「いいか?私はお前たちが依頼で失敗したり怪我をしない様に、ましてや死んだりしない様に訓練をつけてやってるんだ。これはお前達自身のためでもあるんだぞ?」


「はい、分かってます。ミタリーさんには感謝してます」


 メンバーの男は笑いながら頭を下げる。


「まったく。さあ、行くぞ。レヤック達を戻したら飯にしよう」


 そう言って微笑むミタリーにメンバーは「やった!」といって騒ぎ出す。どうやら相当疲れて腹を空かせているようだ。


「そう言う訳で、私たちはいくよ」


「ああ」


 道をあけてやるとミタリーは「またな」と言って横を通っていく。

 ミタリ―に続いてメンバー達もレヤックを引いてぞろぞろとその後に続く。

 アタシも行くかっと足を動かそうとした時、すれ違ったメンバー達の会話が耳に届いた。


「ちくしょう・・・・・やってらんねぇよ」


「そう言うな。俺達は俺達のやることをやってればいいんだよ」


「分かってるけどよ・・・・・」


 ミタリ―には聞こえない程度の小声でぶつくさと文句を言いながら先程ミタリーに小言を言われたメンバーが不満を漏らしながら通り過ぎていく。


「・・・・・・ま、面倒をみる人数が多いとああ言う奴も出てくるよな」


 アタシは一人で充分だ。

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