第14話 誤解です

 翌朝、俺は街の門まで来ていた。理由はガヤルさんを見送るためだ。

 そう、今日ガヤルさんは街を離れ、ノザル村に帰ることになっていた。その話を聞かされたのは昨日、宿に戻ってしばらくするとガヤルさんが部屋を訪れ、自分は村に戻ると言ってきたのだ。

 近いうちに戻るとは聞いていたが、まさかそれが今日になるとは驚いた。

 ガヤルさん曰く「仕入れも済んだし、お前もハンターになるのも見届けた。この街でやることはもう無い」だそうだ。

 見送りは要らないと言われたが、ここまでお世話になった人だ。まさかそんな真似は出来ない。

 なのでこうして渋い顔をするガヤルさんに無理矢理ついて行くような形で見送りに来たのだ。


「見送りはいいと言っとるのに、頑固な奴め」


「そう言わないで下さいよ。ここまで世話になった人を見送らないなんて出来ませんし」


「フンッ」


 ガヤルさんは鼻息一つついて御者台に昇り手綱を握る。


「ワシは行く」


「はい。ガヤルさん、お元気で」


「・・・・・・・何かあったら、村に来るといい。子供らも喜ぶだろう・・・・・・達者でな」


 ぶっきら棒なガヤルさんの言葉の中に、確かな暖かさを感じた。


「はいっ!」


 それを噛み締める様に、俺は力ずよく答える。


「ではな」


 手綱を操り、ガヤルさんを乗せた荷馬車が門の外へと消えていく。

 俺は荷馬車が視えなくなるまで、その場にとどまって見送った。




        ♢       ♢        ♢    




 ガヤルさんを見送った俺は、組合に来ていた。時刻は既に昼を迎えようとしている。組合の中は人が疎らで、数人のハンターと職員がいるだけだ。

 他のハンターは朝早くに依頼を受けて組合を後にしたらしく、賑わいは見受けられない。残ったのは出遅れ組か、余裕があるハンター達だけみたいだ。

 なんにしても人が居ないのは有難い。時間を待たなくても受付に行けるからな。


「どうも、レミアさん」


「あら、ソウジさん。お疲れ様です。今日はどうしましたか?」


 挨拶をすると、レミアさんは笑みを浮かべて対応してくれる。


「何か依頼を、と思ったんですけど、ライラがまだ来ていないみたいなんで・・・・・・レミアさん、ライラ来てませんよね?」


「ああ、ライラちゃんなら朝来ましたよ」


「あれ?来てたんですか?」


「はい。ソウジさんはまだ来ていませんと伝えたら、『家にいるから来い』と、伝言を預かってます」


 入れ違いか、失敗したな。ガヤルさんが帰ることを知ったのは昨日宿に帰ってからだったから、伝える暇もなかったんだよな。


「分かりました、ありがとうございます」


 俺はレミアさんに礼を言って組合を後にした。向かう先はライラの自宅。前に行ったことがあるので組合からの道順は覚えている。

 暫く歩いて俺は迷うことなくライラの自宅まで辿り着いた。


「ライラ~総司だけど、居るか~?」


 扉をコンコンとノックして声を掛ける。呼び鈴みたいな物もあるらしいのだが、残念ながらライラの家には呼び鈴は無い。なのでこうしてノックをしてやるしかない。

 ノックをしてしばらく待つが反応が返ってこない。


「んん?ライラ~居ないのか~?」


 もう一度、今度は少し強めにノックをするが、やはり反応が返ってこない。


「おかしいな、自分で来いって言ったのに居ないのか?」


 試しにドアノブに手を掛けてみると、扉は何の抵抗もなく開いた。


「あれ?開いてる?もしかして寝てるのか?」


 試しに開いた扉から顔だけ中に入れてライラの名を呼ぶが返事が無い。


「・・・・・本当に寝ちゃってるのか?」


 俺は扉を開いて中に入る。

 勝手に入るのも申し訳ないと思うが、呼び出したのはライラ本人だ。文句を言われる筋合いはないはず、と自分に言い聞かせて家の中へ。

 一階リビングには誰もいない。それ以外の部屋も見たが、一階には誰もいないようだ。


「・・・・・居ないな。二階か?」


 俺は二階にある、以前俺がライラに運ばれたあの部屋に行ってみようと二階に繋がる階段を上る。

 二階に到着して廊下を歩く。前に入った部屋は階段を上って突き当りの部屋だったはず。少し廊下を進めば目的の部屋には直ぐに辿り着く。


「ん?」


 目的の部屋に辿り着く直前、俺は足を止めた。理由は微かな物音が聞こえたからだ。


「何だ、やっぱ居るじゃん」


 俺は止めた足を再び動かして廊下を進むと、部屋の中から聞こえる物音が徐々に耳にハッキリと聞こえる様になってきた。


「・・・・・ん・・・・・・く・・・・・・・あ・・・ん・・・・・」


 どうやら聞こえていたのは物音ではなく、人の声の様だ。


(誰か来て話でもしてるのか?)


 部屋の前に辿り着くと、扉が少しだけ空いていた。どうやら声はその隙間から洩れているようだ。


(ノックして入るか?けど、誰か来ていて話し込んでいるなら邪魔するのもアレか?んん~・・・・・)


 ノックしようか迷っていると、空いた扉の隙間から聞こえる僅かな声が耳に届く。


「・・・・・ンあ・・・・・ク、ロ・・・・・あ・・・・ンッ!」


 何処か苦しそうなライラの弱弱しい声が耳に届いた。

 もしかして、怪我か病気で苦しんでいるのか?


「っ!ライラ!」


 俺の頭に嫌な想像が過る。もしライラが苦しんでいるのなら?そう思ったら半ば無意識に扉に手を掛けて部屋に飛び込んだ。


「大丈夫か!?」


「!!」


 ライラは、居た。部屋のソファーの上に居た。


 突然部屋に入ってきた俺にビクリと身体を震わせていたが問題はない。ライラは無事に見える。怪我や病気をして苦しんでいる様子もない。

 ホッと一安心、出来たらよかったのだが、そうは言ってはいられない問題があった。

 着ている服は乱れ身体に汗を浮かべ、ライラの頬は朱に染まって、乱れた息遣いがその小さな唇から洩れている。

 ライラの手には男ものだろうか?ライラの体格には不釣り合いなシャツを左手で抱くように抱えている。そのおかげか、シャツで大事な所は隠れて見えない。

 しかし、あくまでそこだけ。肩から手、太腿からつま先まで覆い隠せているわけではない。だから必然、ほんのり桜色に染まった艶めかしい肌が目に付く。

 足首辺りにライラが普段着用しているショートパンツが片足に引っかかり、右手はシャツのせいで見えないが、下の方に伸びている。

 つまり、このことから導き出される答えは、ライラはお――――――


「きゃああああああ!!!」


 思考が答えに辿り着く寸前、ライラの口から女の子らしい悲鳴が放たれ、それと同時に神速の速さで近くに置いてあった何かの置物を掴むと、これまた神速の速さで投げつけた。

 ゴンッ!!


「ぐわっ!」


 鈍い音と共に額にぶち当たる。そのまま後ろにどさりと仰向けに倒れて意識を飛ばした。

 俺が最後に見た光景は、涙目に顔を真っ赤にしたライラの顔だった。




         ♢      ♢      ♢  




 意識を取り戻したのは恐らく時間にして数分。開いた扉から見える、廊下にある窓の外に映る太陽の位置から考えて、それほど長くは気絶していないだろう。

 しかし、問題はそこではない。

 問題なのは、倒れている俺にティソーナの切っ先が喉元にピタリと押し当てられている事だ。

 切っ先を向けているのは当然、ライラな訳で・・・・・・どうやら、俺が気絶している間に服を直したらしく、普段通りの装いだ。ただし、その顔は鬼のような形相で歪められていた。


「死ね」


「待て待てッ!」


 短い一言と共にティソーナを振り上げるライラに、俺は慌てて待ったをかける。


「・・・・・・何だ?」


「悪かった!いきなり部屋に入ったことは謝る!けど、それは仕方なかったんだ!部屋から何か苦しそうな声が聞こえてきたから、てっきりライラに何かあったんじゃないかって思わず部屋に飛び込んだんだ!!」


「・・・・・・遺言はそれでいいな?」


 両手で柄を握りしめる。


「だから待てって!!」


 それから必死にライラに弁明の言葉を並べて許しを請うた。

 その甲斐あって、何とか許しを得た俺は部屋のソファーにため息と共に座ることが出来た。


「はあ~・・・・・死ぬかと思った」


「今すぐに殺してやってもいいぞ?」


 対面のソファーに腰を落ち着けたライラから氷の視線が突き刺さる。


「勘弁してくれ」


「いいか?この事、誰かに言ってみろ。地獄の苦痛を味合わせて殺してやるからな」


「わ、分かったよ」


 目がマジだから止めてください。


(しかし、ライラでもあんな声出すんだな)


 普段のライラからは出ないような女の子らしい悲鳴とかちょっと意外、って失礼か。

 ライラだって十六歳の女の子。普段の言動や雰囲気がヤンキーみたいだが、中身はれっきとした女の子なのだろう。

 そんな事を考えたせいか、部屋に入った直後の光景を思い出して胸がドキドキする。


(子供に対してそんな趣味は無いと考えていたが、流石にあんな姿を見たら、こう・・・・・なあ?)


 こればかりは男の性としか言えないだろう。

 だっていくら子供なんだと言っても、あんな姿を見たら男だったら少なからず胸にくるものがある。(決して俺だけが特殊じゃないはず!)

 それに第三者から見たらライラだって可愛くないわけではない。

 普段が男勝りと言うかヤンキーぽいだけで、見た目は普通に可愛い部類に入る・・・・・・あくまで客観的だぞ?

 それがあんな姿を見てしまったら普段とのギャップで・・・・・なあ?


「・・・・・お前、かなり失礼な事考えてるだろ」


「そ、そんなわけないだろ?」


「・・・・・・やっぱ、殺しとくか」


 ライラが再び脇に置いてあるティソーナに手を伸ばそうとする。


「だ、だから悪かったって。勘弁してくれ!」


「チッ・・・・・・・それで、何の用だ」


 俺の必死な言葉にライラは伸ばされた手を止め、本来の要件を促してくる。


「呼び出したのはそっちだろ?組合に行ったらレミアさんから家に来いって聞いたぞ」


「ああ、そうだったな」


 忘れてたのかよ。


「それで?何で朝組合に居なかったんだよ?」


 俺はガヤルさんが昨日宿で街を発つことを聞いて、朝見送りに行っていたことを話した。


「そうか、ガヤル爺さん帰ったんだな・・・・・・声ぐらい掛ければいいのに」


 ライラは何処か残念そうな顔をするが、直ぐに普段の顔に戻る。


「まあ、その内また街に来るだろうし、その時に礼をすればいいか」


「礼?」


「気にすんな。お前には関係ない事だ」


「そうですか」


 なんだ?ガヤルさんと何かあったのだろうか?


「で、今日はどうする?」


 気にはなるが、無理に聞くほどでもないかと思い、話を戻すことに。


「依頼は確認したか?」


「いや、ライラが居ない状況で依頼の確認をしても善し悪しが分からないからな。依頼は見ないでこっちに来た」


「そうか。アタシが組合に行ったときにアタシの方で確認したが、目ぼしい依頼は無かった。そうなると昨日みたいに適当な依頼を数件見繕って――――――」


「あ、ちょっと待ってくれ」


 昨日と同じ事をしようと考えているライラにストップをかける。


「ああ?何だよ」


「実は、ちょっと相談があるんだ」


「相談?」


「ああ、実は―――――」


 俺はここに来る前に考えていたことをライラに相談する。その内容は以前オベールさんに相談して教えてもらった事だ。

 即ち、マナ感知。


「なるほど。オッサンにマナ感知の事を聞いたのか」


「ああ、それでライラに相談なんだが、俺にそのマナ感知のやり方を教えてほしいんだ」


 オベールさんからライラなら色々なやり方を知っているだろうと教えてもらった。

 そのこともライラに話すと、「チッ、あのお喋りめ・・・・・」と舌打ちをする。


「教えてくれないか?マナ感知を」


「ハア・・・・・・まあ、今後の事を考えたら覚えておいて損はないか。前回みたいに足引っ張られても迷惑だしな」


「教えてくれるのか?」


「ああ、いいぜ」


 意外とあっさり了承を貰った。


「ただし、直ぐに覚えるなんて無理だぞ?それなりに長い期間訓練することになる。その間も依頼はキッチリこなしていく。いいな?」


「ああ、それで問題ない」


 俺が頷くと、ライラはソファーから立ち上がる。


「なら、行くぞ」


 ソファーから立ち上がって、傍に置いていたティソーナを手に取り部屋の扉に向かう。


「行く?行くってどこに?」


「決まってんだろ?」


 扉を開けたライラは肩越しに振り返り、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて一言。


「特訓」




        ♢      ♢      ♢  




 ライラに連れられて訪れたのは、街のすぐそばにある森の中。

 そこはちょっとした広場になっていて、周りには弓の練習に使うような的や、地面に木の杭を打ち付けてその上からボロボロの鎧を着せた的など、訓練場の様になっていた。


「ここは?」


「ここはアタシが訓練するのに使っていた場所だ。クロードが場所を用意してくれてな。だからここを知っている奴は殆どいないから、人も殆ど来ない。そのおかげで訓練に集中できるんだよ」


「ここでライラも訓練してたのか」


「まあな。と言ってもここ最近は使ってなかったが。クロードに連れられてよく訓練したものさ」


 ライラは何処か懐かしむような眼を広場に向ける。


(そっか。クロードと一緒に、か)


 きっとここはライラの努力の場であり、同時にクロードとの思い出の場所でもあるのだろう。


「さあ、始めるぞ」


 頭を切り替えたのか、先程見せた目は何処かに失せ、代わりに普段通りの凛とした眼になる。


「それはいいが、何をするんだ?」


 ここに来るまでの間、ライラに説明を求めたが答えてはくれなかった。


「まずはこいつだ」


 懐から取り出した物を俺に突きつけてくる。受け取ってみると、それは黒い布だった。


「これは?」


「そいつで目を隠せ」


「こいつで?目隠ししろって?」


「いいから早くしろ」


 言われた通りに布を巻きつけて目隠しをする。


「これでいいか?」


「見えてないな?隙間とかないな?」


「大丈夫だ」


 そんなに念を押さなくても何も見えない。何も見えないから、耳に入ってくる音と、時折吹く風ぐらいしか分からない。


「良し。なら始めるぞ」


「それで?ここからどうするんだ?」


 視界が効かないせいで、足を動かしたら転びそうで怖いんだが。


「今から攻撃する。お前はそれを避けろ」


「・・・・・・は?」


「聞こえなかったか?アタシが今からお前を攻撃するって言ってんだよ」


 攻撃?この視界を塞がれている状態で?


「いやいやいや、何言ってんだ?見えないんだぞ?どうやって避けろって言うんだよ!」


「あのな、お前は一体何を訓練するためにここに来たと思ってんだよ」


「そりゃあ、マナ感知を・・・・・まさか」


「気付いたか?」


 体を動かせば周囲に漂うマナは揺らぎの様な反応をする。オベールさんはそう説明してくれた。

 つまり、今からやろうとしている訓練は、『視界を塞いだ状態でマナの揺らぎを見極める』と言う、何とも無茶苦茶な訓練だ。

 それをそのままライラに言うと、ライラはため息と共に口を開いた。


「目では捉えられないものを捉えるんだ。そんな芸当そんじゃそこらの訓練で身に着くわけないだろ?それに、視界に入ってくる情報でマナの感知が鈍る。だから目ではなく、意識を集中してマナを知覚することが重要になる。これはその為の訓練だ」


 ライラの言っている事は分かるが、これは相当ヤバい訓練だぞ。

 何せ視界が効かない中で攻撃を避けるなんて普通は無理だ。いくらこの世界ではマナを感知できるとは言っても、感知するには集中力がいる。

 感知する為に集中している中で攻撃を仕掛けられたら、当然集中などしている暇なんてない。

 もしもマナを感知できなかったら攻撃をもろに食らう羽目になる。目が見えないからガードするのも難しい。

 こんな鬼畜な訓練をしないといけないのか?


「ライラもこの訓練をやったのか?」


「ああ、クロードに叩きこまれた。かなりきつかったが、おかげでマナ感知の技術を学ぶことは出来たからな」


 マジか。これをライラもやったのかよ。


「他の訓練法も無くわないが、これが一番手っ取り早くて身に着く・・・・・・お前には時間なんてないんだろ?」


 ・・・・・・そうだ。俺には時間がない。

 金を稼ぐために。本当の事を確かめるために。

 依頼をこなして金を稼ぐためには、今のままじゃ駄目だ。もっと強くならないと。

 その為にも、やる前から怖気づいてどうする?

 目的があるのなら、その為にするべき事を全力でするべきだ。

 怖気づくな。覚悟を決めろ。


「分かった。やるよ」


「・・・・・良い返事だ」


 眼は見えないが、ライラが笑ったような気がした。


「まあ、攻撃をすると言っても加減はする。そこは安心しな」


「分かった」


「じゃあ、始めるぞ」


「おう!」


 俺が答えるのに応じて、ライラは俺から距離を取る為か、足音が遠ざかっていく。

 一定の距離まで離れると、今度は俺の周りを回り始めたのか、足音が俺の周りをまわる様に聞こえてくる。


「いいか?普段闘気法を使う時みたいに意識を集中させてマナを感じろ」


「・・・・・・・・」


 言われるがままに意識を集中させていく。すると、初めて闘気法を使った時の様に、俺の周囲にマナが漂っている感覚を得る。

 あれから訓練したおかげでここまでは比較的簡単に出来るようになった。

 ハッキリと、とは言わないが最初のぼんやりとしていたマナの存在も少しは感じられるようになった。

 ただ、それを知覚出来る範囲はそんなに変わらない。精々二、三メートルと言ったところか。


「準備はいいな?じゃあ―――――」


「っ!」


 先程まで聞こえていたライラの足音が急に聞こえなくなった。

 そう思った瞬間・・・・・・・

 ゴンっ!


「がっ!?」


 脳天に衝撃が走った。その衝撃で目隠しをしている布がはらりと落ちる。


「お、おおぉぉぉぉぉ・・・・・・」


 頭を押さえて蹲る。めっちゃ痛い。


「悪い悪い。ちょっと加減を間違ったみたいだな」


 頭を上げると、そこには邪悪としか言いようがない笑みを浮かべたライラが俺を見下ろしていた。


「お前を見てたらついつい力が入り過ぎたみたいだ」


「お、お前、まさか、あの時のこと・・・・」


 ライラの家で見たアノ姿のことを根に持ってるんじゃないだろうな?


「あの時?何の事だ?アタシにはサッパリわからねぇな~」


「こ、こいつっ!」


「ほら、さっさと立って目隠ししろ。まだお仕、ゴホンっ!訓練は始まったばかりだぞ?」


「お前、今何言いかけた?お仕置きって言おうとしなかったか?」


「うるせぇ!さっさと立て!!」


 逆切れしたライラに攻め立てられるように立ち上がり、再び目隠しをさせられる。


「いいか?日が暮れるまでやるからな?・・・・・・覚悟しろよ、地獄を見せてやる」


 閉ざされた視界の中、ライラの背筋が凍る様な冷たい声が俺の鼓膜を震わす。

 あぁ・・・・・俺はもしかしたら、早まった選択をしてしまったかもしれない。

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