第3話 ステータス

 表紙を開くと、1枚の紙が挟まれていた。


『魔法に興奮してこっちから読まないように。せめてもう片方の本の第1章だけでも先に読むんだぞ』


 あ……。


 み、見抜かれてる。


 レンティア様の予想通り、真っ先に魔法書を読もうとしてしまった。


 うん、そうだ。


 ある程度はこの世界の概要を知っておかないと。


 魔法の練習がスムーズにいかないのは嫌だもんな。


 指示に従い、本を替える。


 ついでに湯気が立っている熱い紅茶を一口。


 クッキーも摘む。


 美味しい。


 どちらの本も紙が分厚いので、ページ数はそこまで多くない。


 まず初めに読んでおくべき第1章とやらは、さくっと読み終えることができた。


 まあ内容がいろんな作品で使われている所謂テンプレだったから、理解しやすかったという部分もあるけれど。


 こんなとこでネット小説の知識が役立つとは。


 毎日通勤中に読んでいて助かったな。


 書かれていたことは大まかに以下の2つだった。



・僕は自分のステータスが見れる。

・定番の鑑定とアイテムボックスのスキルを持っている。



 レンティア様の指示は、魔法の練習をする前にステータスを確認しておいた方がいい。そっちの方が色々とわかりやすいはずだ、と考えてのものだったようだ。


 異世界ものの定番。


 ステータスに鑑定、アイテムボックスかあ。


 本当に使えるようになっているんだろうか?


 疑問に思いつつ、高くなった少年らしい声で本に書かれている文言をつぶやく。


「ステータスオープン」



 【 名 前 】 トウヤ・マチミ

 【 年 齢 】 10

 【 種 族 】 ヒューマン

 【 レベル 】 1

 【 攻 撃 】 3000

 【 耐 久 】 3000

 【 俊 敏 】 3000

 【 知 性 】 50

 【 魔 力 】 5000

 【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス

 【 称 号 】 女神レンティアの使徒



 おお。


 目の前に半透明のウィンドウが現れた。


 わざわざ声に出さないといけないのは照れくさいけど、これは凄いぞ。


 ウィンドウに触れることはできないのか。


「……って、なんだこの数値っ!?」


 攻撃、耐久、俊敏が3000。

 魔力が5000。


 一方、知性が50。


 たしかに賢くなった実感はしないが……。


 アンバランスすぎる。


 スキル『鑑定』。


 これのおかげで僕はいつでもどこでもステータスを表示できるらしい。


 滅多に持っている人がいないスキルで、この世界では魔法の道具――魔道具を使ってステータスを確認するのが一般的だとか。


 鑑定の魔道具は巨大なため、個人で所有している人は少ないそうだ。


 試しに何か鑑定できないかな。


 ステータスウィンドウから視線を外そうとすると、称号の項目に反応があった。


『女神レンティアの使徒』の部分から新たに一回り小さいウィンドウが2つ表示される。



【 使徒の肉体 】

 女神レンティアによって授けられた特殊な肉体。使徒として人間離れしたステータス値を誇る(知性を除く)。


【 魔法の才能 】

 女神レンティアによって授けられた桁外れの魔法センス。努力次第でかなりの腕前に成長することができる。



 ……なるほど。


 レンティア様が言ってたもんな。


 高い身体能力と魔法の才能をあげるって。


 使徒の肉体=強いフィジカル。

 魔法の才能=センスと膨大な魔力量。


 そんなところでこうなったんだろう。


 でも、人間離れしたステータス値って……。


 もしも知性まで含まれていたら、僕が僕じゃなくなってたのかもしれない。


 だから、これで良かった?


 ……。


 うん。


 じゃあ、早速。


 冷め切った紅茶で喉を潤し、魔法書を開く。


 記されたとおりの手順で進めていくと、数分後。


「『炎よ』」


 人差し指の先からポッと小さな火が出た。


「できた……!」

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