第14話 依頼達成
「あの……」
おかしいな。
アイテムボックス持ちは、この世界にもそこそこいるはずなんだけど。
僕が1人で不安になっていると、困惑気味のおばあさんがクスッと笑った。
「ごめんなさい、驚かせてしまったかしら。そのアイテムボックス。商人の方でも、今の量をその速さで収納できる人は滅多にいないのよ? それに貴方がまさかそこまでの魔法使いだとは思わなくて」
「あ、ああ……なるほど」
良かった。
特に問題はなかったらしい。
でも生活魔法を使っただけで、またこの反応だ。
ジャックさんの時と同じ。
僕の生活魔法は他の人が使うのとそこまで違うのか?
「そうだわ! 側溝掃除までしてもらったんだから、追加報酬を出さないとね」
おばあさんがパチンと手を合わせる。
「え? いやっ、そ、そんな……」
「いいのよいいのよ。ここまでしてもらったのだし」
「でも」
「ほら、お礼にうちでお茶と焼き菓子でも食べていって。そこで依頼書にサインを書くから」
うっ、そう言われるとなあ……。
結局、僕はお年寄り特有の優しさに負け、家にお邪魔することになった。
ついでに汚泥の処理方法も教えてもらう。
アイテムボックス内で物同士が触れ合うことはないが、当然ずっと収納しておくという訳にはいかない。
処理できる場所は街外れにあるそうで、僕は袋に詰めた焼き菓子をお土産に頂き、そこに寄ってからギルドに帰ることにした。
依頼書には追加報酬の旨。
そして達成確認のサイン。
こうして初仕事は思いの外あっさりと終わった。
レンティア様が与えてくださったもののお陰で、やり方によっては十分にこの世界でもやっていけるかもしれない。
安堵と達成感。
とりあえず、不安は1つ解消されたかな?
ギルドに戻ってきた。
受付窓口。
「あら、トウヤ君。何かわからないことでもあったかしら」
「ああいえ、依頼完了の確認をお願いしたくて」
「えっ……?」
カトラさんが声をかけてくれたので、依頼書を見せると彼女は呆気にとられた顔になった。
「さっき出て行ったばかりじゃない。ドブさらいの依頼だったわよね?」
「はい。ちょうど便利なスキルと魔法があったので、短時間で終わらせることができました」
「まぁ! 魔法だけじゃなくてスキル持ちだったの。たしかに達成確認のサインはバッチリ……って、追加報酬まであるじゃない!?」
「依頼主さんが優しい方だったので。側溝の掃除をついでにしたら頂けました」
「こんな短時間で……それに初めての仕事なのに、トウヤ君スゴイわね」
「あはは。ありがとうございます」
「じゃあ……えーっと、はい。追加分を含んだ大銅貨5枚よ」
硬貨を受け取る。
まだいまいち物価を把握できていないので、どれくらいか正確にはわからない。
が、高空亭2泊分以上の稼ぎだ。
宿泊費をグランさんが値引いてくれているとはいえ、悪くはないだろう。
かなりパパッと終わった仕事だったのにな。
「そうだ。トウヤ君、ちょっとこっちに来てくれるかしら」
「え? あっ……は、はい」
これで終わりかと思ったら、急に小声になったカトラさんに受付の左の方へと呼ばれた。
付いて行くと、酒場との間に奥まった通路があり、そこにいくつものブースがあった。
軽い打ち合わせをするような、机を挟んで椅子が置かれただけの小分けされたスペースだ。
「そこ、座ってもらえる?」
「……はぁ」
何が何だか。
僕が片側の席に座ると、カトラさんは周囲をキョロキョロと見渡してから向かいに座った。
そういえばカトラさんって結構背が高いんだな。
今まで座っているところしか見たことがなかったから気付かなかった。
なんて思っていると、カトラさんはまたしても小声で話し出した。
「トウヤ君が持ってる便利なスキルって、もしかして『アイテムボックス』? もしそうだったら、人によっては隠さないといけないわよ」
ん?
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