第21話 幸運の指輪
装飾などはない、シンプルなデザインの銀の指輪。
魔法か何かかな?
全体が淡く光っている。
「これは……?」
「『幸運の指輪』さ。いくつかのダンジョンで極稀に産出される物なんだけど、先日ちょうど入手することができてね。君さえよければ金貨の代わりにこれを受け取ってほしい」
レアドロップアイテムみたいな物か。
こっそり鑑定してみる。
【 幸運の指輪 】
装着時、幸運を呼び寄せる効果を持つ指輪。明確な効果については不明。装着すると他の人からは見えなくなる。
なるほど……。
一応効果はあるけど、どれくらいあるかはわからない。
そんなラッキーアイテムみたいな感じなのか。
「パパ、本当にいいの?」
僕が指輪を観察していると、リリーが気がかりそうにジャックさんの顔を見た。
「せっかく仕入れたのに」
「いいんだよ。それにお金を渡すより、トウヤ君の幸せを願うという意味でも良いじゃないか」
「……」
リリーは僕を一瞥すると、ジャックさんに向き直る。
それから小さく頷いた。
「……わかった。じゃあトウヤ、はい」
机の上の箱をちょんっと僕の方に押してくる。
希少な物らしいからな。
大金貨5枚よりは価値が低いだろうが、それでも凄い贈り物であることは間違いないだろう。
本当に受け取っても良いのか。
悩む。
でも、代替案としてせっかく持ってきてくれたんだし……。
うん。
ここはしっかりと感謝をして、有り難く貰っておくとしよう。
「ありがとうございます。大切にしますね」
箱から指輪を取り、左手の人差し指に嵌める。
初めは微妙にサイズが合わないかと思ったが、案外ピッタリだ。
というより……今、大きさが変わった?
自動でジャストサイズになったような。
これも魔法とかなのかな。
同時に指輪の光が少し強くなり、半透明になった。
他の人からはこれで見えなくなったのだろう。
特に運が良くなった実感はないけれど、ファンタジー感が満載のアイテムはやっぱり興奮する。
それが顔に出てしまっていたのか、ジャックさんに笑われてしまった。
「喜んでもらえたようで良かったよ」
それから一休憩を終え、商会内を見学させてもらってから僕たちはフスト観光を再開することになった。
もちろん1日でフスト全体を回ることはできない。
なので東部を中心にだ。
夕方頃まであちこちを案内してもらい、いくつかの名物料理をご馳走になった。
はぁ……楽しかったな。
それと同じくらい疲れもしたけど、充実した1日だった。
今日はこれでお開きとなり、ジャックさんたちは僕が道に迷わないようにと、冒険者ギルドの辺りまで同行してくれた。
「じゃあトウヤ君、またね。いつでも商会に来てくれたら、私がいるときは顔を出すから」
「はい。今日は本当にありがとうございました。リリーもまた」
「うん、バイバイ」
2人に挨拶をして、解散。
今日1日でリリーの独特な雰囲気にも慣れたし、ちょっとは気を許してくれたような気もするなあ。
それにこの幸運の指輪。
今後、いいお守りになるかもしれない。
のんびりと観光を楽しんだので、明日からはまたギルドで依頼をこなして短剣の練習だ。
街でレンティア様への貢物に良さげな物も見つけたので、お金を稼いで買えるようにならないと。
今晩はしっかり寝て、明日に備えよう。
次の日。
少し早めにギルドに行き掲示板で依頼を探していると、2日ぶりのカトラさんが近寄って来た。
「トウヤ君、おはよ」
「あっ、おはようございます」
「昨日はジャックさんとリリーちゃんと街を回ってたそうね」
「あれ。な、なんで知ってるんですか?」
「ふふっ、どうしてかしら? それよりも。はい、これ」
どこかで僕たちのことを見かけたのかな?
それとも誰かから聞いたのか。
疑問に思ったが、差し出された羊皮紙を見てそんなことはどうでも良くなった。
何故なら──
「し、指名依頼!? 僕にですかっ?」
僕を名指しで依頼が出されたらしい。
謎だ。
特に思い当たる節もないのに。
うーん。
…………もしかして。
これ、いきなり幸運の指輪による効果なのかな?
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