第163話 特訓

「物は試し。」老紳士は有無を言わせずに、僕の額の前に手をかざした。僕には聞き取れないくらいの音量で、老紳士は詠唱した。何と言っているのだろうか?老紳士の詠唱する魔法は大抵聞き取ることができない。数秒ほどが経ち、詠唱が終わりそうだなと思った矢先、僕はひどいめまいに襲われた。


「地震……?」そう勘違いするほどの衝撃が、僕を襲った。自分という軸すらも揺らいでしまいそうにもなる程、頭の中でひどい揺れが途絶える事なく、三度続いた。一体老人は僕にどんな魔法をかけていたのだろうか。世界系の能力を獲得するための訓練なのならば、仕方が無いとは思うのだけれど中々気が重い。


「擬似的な波をみたび。」それが僕が教わることとなった最初の技であり、僕の苦い思い出となる魔法であった。この魔法の名前は『偽りの波柱』老紳士はまず、この魔法を僕に課題として出した。老紳士はできるようになったら読んでくれと言い、小屋の中で眠り始めた。一体、僕にどうしろと言うのか。

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