第28話 光
光を見た。大きくて雄大で、格好いい姿だった。だけどもう、一生見られないのだろう。
「はっ。」間抜けな声を上げて、僕は起き上がった。隣には爺が眠っているというのにだ。爺は、唸るような声を上げたかと思うと、僕を見た。
「どうやら、成功のようじゃな。儂としては嬉しい限りじゃ。お主はやる男だとは思っていたが、本当に成功させるとは。しばし寝ていたのは、申し訳ないと思っているのじゃが、まあ、結果オーライじゃな。」
「成功したみたいだ。」どうやら喜んでくれているらしい。髪が生えているかも分からない、独特の雰囲気のこの爺は、一通り僕を褒めたかと思うと、話を切り出した。「ところで、お主は一体どんな試験を受けたというのじゃ。その様子だと、大分凄まじい体験をしてきたんじゃろ。話したくなければ、それでも構わんが。」真っ白な髭を触りながら、爺は言った。
「家族に会えたよ。多分、救われたんだと思う。母さんと、父さんとあって話ができて、気持ちの整理がついた。これからは又、旅に出ようと思う。自分のために、誰かの役に立てるように、何ができるかを知りたいんだ。」思いの丈を、とぼとぼと伝えた。
「殊勝なことじゃな。だが悲しい事に、お主の様なやつは、中々にいないものじゃ。他が為に成す事を、己の為に行動できるのは、強く有れる心がある証拠じゃ。まあ、儂はそんな高等な物は、持ち合わせてはおらんのじゃがな。全く、羨ましい限りじゃ。」爺の眼の皺が寄り、遠くを見据えた。
「そろそろ、戻ろうと思う。エミリーやリンダが心配だ。いや、会いたくなったんだ。早速だけど、良いかな。」
外はきっと夕焼けが照らしているから。
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