第30話 贖罪
さて、どうするか。リンダがこうしたことには何か意味があるはずだが、今はそれどころではなくなってしまった。
借金を返さなければならない。この村の人々には迷惑を掛けてばかりで、一生頭が上がりそうに無い。なのに村の人は「いえいえ、気にしないでくさい。」とまで言ってくる。
歩きながらこんな事を考えていたからか、いつの間にか良く分からない場所まで歩いてきていたらしい。リンダの姿は見えず、一通りも少ない場所に僕はいた。だが――
「おい、そこのお前だよ、何をしている?」見るからに柄の悪い格好の三人組にいきなり話しかけられた。
「私は旅の者で、今丁度一文無しの状態なのですが……」柄の悪い赤ポンチョ風の男はつまらなそうに、顎を捻った。すると、太り気味の青バンダナをした男は、ナイフを腰から抜き僕の方に向けた。
「有るか無いかは、俺達が決める。あんたが何をしようと、無駄だ。」今まで様子を見ていたらしい細身のメイス使いが戦いの啖呵を切った。
恐ろしい程のスピードで繰り出されるナイフ、動かない赤ポンチョ。そして、死角を狙うメイス。息のあった連携プレイは、正に称賛に値する。
「強いです……本気で行きますよ。」まず初めはデスポイントを消費し、弾幕スキルを取得。レベルは1のままで固定、そしてそれに加えて特殊技能の魔王級の手加減を取得。
「一人なら俺達に勝てる訳がね――」赤ポンチョが言い終える前に、僕はスキルを発動していた。「ダウト・バレットッ。」小さな声でそう呟くが、もはやその音は聞こえない。数え切れないほどの弾丸が地を削り取るような勢いで降り注ぎ、僕と三人組を分け隔てた。
「こ、こいつ頭がおかしいのか?お前ら一旦下がれ!」三人はそれぞれ弾幕から距離を取り、瞬時に思考を再開した。が、それも虚しく意味のないことになった。
弾幕はその後10秒ほど続き、少しずつ少なくなっていった。しかし、
「いない。あのガキ、どこに消えやがった。」甲高い声を響かせ、赤ポンチョは辺りを見回した。
声?何か得体の知れないものが、こちらにやってくる。そしてそれは、赤ポンチョの眼の前に、空から現れた。優雅に腰を下ろすその人は言い放った。「ここで名誉挽回と行こう。朕の活躍をとくと見るが良いぞノア、そしてエミリー。」
「お前は一体何者だ、あのガキはどこに消えた。」赤ポンチョはまたもや語彙を荒げて言った。「ガキ?貴様らと先程まで相対していたのは、そのような愚鈍な言葉で収まり切る人間などでは無いよ。」
「くっ……。」苦虫を噛み潰したような顔をして、赤ポンチョは後ろに後ずさる。「始めよう。ノアとエミリーが待っている。」リンダは指を鳴らし、本当の戦いが始まったことを、敵味方共々に伝えた。
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