第105話 既視
「知っている。」僕は知っているのだ。確かに見たことがあるはずなのに、もやがかかっていて思い出せない。記憶の深いところに沈んでいる、けれど思い出すことは無い。僕はこうしている間にも着々と、沈みつつあるというのに。
「何……。」見つけたい。考え続けることしか出来はしないけれど、それでもたどり着きたい。そんな場所のはずだったのに。渦を巻くような思考の中でも、僕は沈んでいく。どこでもかしこでも行き止まり。分かっていた。分かっていたつもりだったのに。
大切なことはすぐに忘れてしまう癖に、どうでもいいことばかりを、僕は覚えている。そのおかげか、思い通りにいかないことが当たり前だった。それでももがいて、苦しんで叫んで、進んできた。だから、こんな所で足踏みしている暇はない。
「死神。」今まで僕は、暗黒に飲み込まれていると勘違いしていた。仮にたとえてしまうのなら、今までの色は限りなく白に近い、灰色であった。僕が解き放ったしまったそれらは、もはや黒ではなく、青色であった。
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