第104話 盲目
「暗い。」当たり前だろう。僕の目の前に広がる景色が、黒一色に染まっていることは自業自得なのだから。『運が悪かった。』で片づけることは出来ない。背の高い茂みに埋まりながらも僕は、こんなことを考えていた。意識がもうろうとする。頭の中の考えが、糸のように絡まって僕を閉じ込める。
まただ。なぜ僕は眠る前に、沈むのだろうか。落ちていくようでいて、美しい絵画を見ているようでもある。けれど、そこでただひとつ不自然なのは、僕が沈んでいくにつれて現れる水の泡だ。これは夢なのだろう?現実味の欠片もないこの空間で、なぜ現実たらしめる要素があるのか。
「ここは。」いつもと同じ夢を見ているようで、少し違う感覚。ひとさじの違和感。そんなものがここにはある。体は微動だにもせず、垂直に下に落ちていく。けれど苦しくはない。むしろ、心地よささえ感じる。上に見える光を除けば、暗黒の世界。どこかで見たような囚われの楽園。今までに一度、僕はこの場所を訪れていたのかもしれない。
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