第22話 暫定人類
ここから離れる為に僕と彼女は準備を始めた。しかし、準備と言っても大したものは用意出来なかった。何故なら度重なる連戦があったにも関わらず、一度も町によれてないかだ。
度重なる連戦と言っても、エミリーが個人として強すぎただけの話。他の戦闘に関してはあまり消耗はしてないのに何故あんなに魔力と道具を消費してしまったんだろうか。
もし、また彼女のスキルが暴走してしまったらどうしよう。責めている訳では無いんだけれど、いくらなんでもスキルが強力すぎて僕がまた死んでしまいかねない。
エミリーの為と言うなら、死んでもいいのだけれど、きっと彼女はそれを望まないだろう。いや、望まないよね?
そして解決策があるとするなら、彼女自身が魔力量を上げて、キチンとスキルをコントロールするぐらいしか思いつかない。これは後で一緒に考えるしかないな。
今あるものを使い回すなら、使い古されたロープや、遺志の村で買った杭やツルハシ釘や予備の服など、使える物と使えない物とでわけないといけない。
まあそれは一向に構わないのだが、彼女がそれで良いかは些か疑念が残るところではある。友達ですらいなかった僕が女性と行動した経験など無く、このんな時どうすれば良いかなど、本当に分からなかった。
しかし、使えるものは極力使う。これは旅の鉄則、仕方ないと割り切るしかない。まあ、本音を言ってしまうと、他に何もないだけのことなんですが。
「ふぅ、やっと片付いてきた。」
僕の方はもう終わりそうだ、彼女の方も終われば――何かが来る?
意識したのと同じ瞬間、突如としてこちらに向かってくる物体が見えた。魔力感知を巡らせると、確かにさっきまで無かった魔力がいつの間にかに接近してくるのが見えた。
「知性があるかもしれない。エミリー!此処を急いで離れてッ」
エミリーは小さく頷いた後、自分の荷物と僕の荷物を持って、走り出した。
「・・・・・・こんな時にまたか。」
半分諦めも入ったようなため息をつき、僕は敵を観察した。赤紫色の球体の表面は、血管を繋ぎ合わせたかのような見た目で、何故か血は一滴も出てきていなかった。
今できる事が、エミリーを先に行かせるぐらいの事しかしかないことが、とても歯がゆかった
「これがモンスターだとは、早速笑わせてくれるな。」
有り得ない魔力量に加えて、そのスピードは反則だとしか言えない。
「こっちに向かって来るッ」
赤紫色の球体は、僕の速度に追いつくどころか、追い越し僕を真正面から捉え、何かを唱えた
「――ノンタッチ・リボーン。」
その刹那、赤紫色のおぞましい球体は、やるべき事は全て終わらせたのかのように、一般的な少年へと姿をかえた。
「やっぱり球状化身は、魔力の消費が大き過ぎるかなぁ。あっ、こんにちは。」
「お前は一体、何をいってるんだ?」
目まぐるしく変わる環境に、ついて行けなくなりそうな今日この頃、この後の展開なんて想像つかないな。
「えっとねぇ・・・・・・つまりだよ、朕は人間って事だよ。だから攻撃しないで貰えるといいな。な~んちゃって。」
「人間?果たして超魔力を持ち変身できる生物を、人間と呼んでいいんでしょうか。」
いつの間にかに戻ってきたエミリーが、そう言い放ち、暫定人間に敵意を向けていた。流石暫定人類最強エミリーさんだ。言うことが違う
「私が人間で無いのなら、彼や貴方もまた人間という部類には分類されないと思いますよ。」
「確かにそうなるかもしれない。だけど・・・・・・私は彼と出会って間もないけど、彼の事をよく知っているつもりです。」
いや、男性である僕より遥かにかっこいいこのセリフに、惚れない人は居ないだろう。流石暫定人類最強エミリーさんは言うことが違う。
「ふぅ~ん、そ、そうなんだ。別に僕だって友達ぐらい、沢山、沢山い、いるし。」
「友達がいないんですか。きっと人間以外の種族の友人関係というのは難しいのでしょう。気にしないで大丈夫ですよ。」
「――そこまで。そこまでで終わりにして下さい。これ以上続けてもお互いに傷つくだけじゃないですか。だから、暫定人類って事にしませんか?」
よし、これなら行けるだろう「暫定」にする事で、保険もかれられてどちらもが納得する結果にできる。
「仕方ないな~彼がそこまで譲ってくれるので、仕方なくです、仕方なく『暫定人類』でも満足することにします。」
「貴方がそんな事を言える立場では無いと思うのですが、今はよしましょう。これからよろしくお願いします、『暫定人類』さん。」
「名前、自己紹介まだだったよね。自己紹介してもらおうかな、じゃあ早速、僕の名前はノール・アムガミスタ。気軽にノアって読んで下さい。」
場を和ませつつ、これからどうするかを真剣に考えた。しかし、人類暫定最強エミリーさんや暫定人類の事を考えるといまいち思考が捗らない。
「朕の名は、ギャザリング・ザ・ダークと申します。気軽にリンダとでも呼んでね~」
「私の名前はエミリー。ただのエミリーです。」
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