第21話 新たな旅
「大丈夫。」
――彼はそう言って、こちらを見た。
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「僕の名前はノール。呼び捨てで良いよ。」
そう言ったら、彼女も名前を言ってくれた。
「私の名前はエミリー。私も呼び捨てでいいです。」
何らかの影響を受けていたせいなのだろうか。この子が何かをしたとは思えない。
「本当にごめんなさい。」
表情は真剣そのもので、綺麗な金髪が風で靡いていた。こんな時、僕はなんて答えればいいか分からなくなってしまった。
――慰めれば良いのか。
――気にしてないと言えばいいのか。
「大丈夫。」
――その一言だけが、言葉になった。
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私は思わず笑ってしまった。
私はあんな事をしたのに、大丈夫だけで済ませるなんて、本当にどうかしている人なんだと。
許して欲しいとは思っていなかった。
慰めて欲しいとも思わなかった。
私はなんと、言って欲しかったのだろうか。
ただ、「大丈夫。」彼のその一言が、忘れられなかった。
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このダンジョンに入ってから、まともに人と喋って無かったから、単語しか出てこなかった。
精一杯やってみたけれど、今更後悔しても遅いのかもしれない。
会話の糸口が見つけられず、緊張して来た頃、彼女が微笑んだ。
笑ってくれた。そんな些細なことで僕は喜びを隠しきれなくなっていた。
今まで、様々な事があったけど、父さんや母さんの、笑った姿が好きだった。
そして今は、彼女が笑ってくれた。
エミリーは、綺麗だった。
僕がこのダンジョンで見たどんな景色よりも、王城で見たどんな女性よりも――
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――辛いことが積み重なったのだろうか。
余程の不幸が降りかかったのかも知れない。
傷だらけの服や、ボロボロの靴。
見ているだけで、心が傷んで来た。
僕とは比べ物にならない位の、過去があったのかも知れない。
でも、少しはその痛みが、流した流血の痛みなら、僕には分かる気がした。
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そしてこれが僕達の、新たな旅の始まりだった。
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どうも、作者の椋鳥です。
大変長らくお待たせしましたこと、本当に、お詫び申し上げます。
これからも、ご迷惑をかけるかも知れませんが、どうぞよろしくお願いします。
最後になりますが、誤字脱字等がありましたら、コメントで書いていただけるとありがたいです。
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